環境科学担当|Lisa Grimm(グリム リサ)先生
プロフィール
アメリカ・ポートランド出身。環境教育に力を入れた中学校に通ったことで、環境分野に興味を持ちピュージェットサウンド大学では環境政策と生物学を専攻。 卒業後は様々な分野で活躍していたが、若者ができる環境への取り組みに強い関心があり、環境教育を志す。
2023年11月からはリンデンホールスクールにて、理科教員/SDGコーディネーターとして、子どもたちに実践的な教育教育を提供している。
環境科学とはどのような学問なのですか?

環境科学は、環境や環境問題について、理科の視点から学ぶ学問です。英語では「Environmental Science(エンバイロンメンタル・サイエンス)」といいます。
例えば授業では、pHを測定し水質調査をしたり、飛来する生物や自生する植物の観察をしたりといった、実際に外に出て体験する学びを多く取り入れています。 学校のすぐ隣には「イングリッシュガーデン」という自然庭園があり、そこに行って動植物の多様性や水の循環などを観察しながら、体感的に環境について学ぶんです。
英語での授業なので、専門用語に最初は戸惑う生徒もいますが、実験や観察を通して学ぶことで、自然の仕組みや環境の大切さをしっかりと理解できるようになっています。
実験や観察の具体例を教えてください

最近では、中学2年生のクラスでプラスチックごみの問題を取り上げました。実際にプラスチックを手に取って観察する活動とともに、 プラスチックの製造過程や資源の使い方について学ぶ座学も行いました。
授業の最後には「この問題をどうやって解決するか」という視点で、解決策を自分たちで考え、ポスターやスライドにまとめて発表する活動も行っています。 ただ知識を得るだけではなく、自ら考えて表現する力を育てることも重視しているのが特徴です。
そのほかにも、水質や土壌の状態を調べる環境のインディケーター(指標)を自分たちで測定する、 ビーチクリーンでマイクロプラスチックのデータを収集するなど、身近なものを使って実験を行ったりしています。
ビーチクリーンの活動はどのように行われているのですか?また、データ収集について詳しく教えてください

ビーチクリーンは毎年11月頃に行う学校行事で、中学部の生徒約50人と先生が参加します。 バスで30〜40分ほどの海辺に出かけ、自然に触れながら、実際にプラスチックごみや海洋ごみを拾うことで、授業で学んでいる環境問題を体験として深められる貴重な機会です。

昨年は初めてデータ収集のプロジェクトに挑戦しました。 持参した1メートル四方の枠を使ってエリアを決め、その枠内の砂を料理用のざるでふるい、マイクロプラスチックやごみを調べる作業を5回繰り返します。 拾ったプラスチック・ごみは持ち帰り、サイズ別に分け、数を数えてデータにまとめるんです。

こうしてマイクロ、メソ、マクロ、メガなどサイズ別のごみの量が可視化できるようになります。 直近のデータでは、マイクロ(5mm以下)57.3%、メソ(5mm〜2cm)21.3%、マクロ(2cm〜10cm)19.5%、メガ(10cm以下)1.9% という結果でした。
さらに「せっかく集めたものだし、すぐ捨てないでちょっともう少し活かしてみよう」という思いから、拾ったプラスチックを使ってアート作品づくりにも挑戦しました。 廃棄されるはずのプラスチックを使って作品を作ることで「ごみ=資源」と捉える視点が育ち、アップサイクルのように価値を生み出す考え方を体験できました。

※生徒が実際に作ったアート作品
プラスチックの採取後、浜辺全体のごみも回収し、活動は2時間ほどかかりました。生徒たちは最後まで集中して積極的に取り組んでいました。
実際に自分たちでプラスチックごみや海洋ゴミを自分たちの手で拾うことで「環境問題の解決に向けて自分たちができることは何か」を考えるきっかけになっています。 このビーチクリーンは、生徒にとっても学校にとっても、そして地域の海にとっても、意義のある行事だと考えています。
「環境」の授業で特に大切にしていること、生徒に感じてほしいことがあれば教えてください

環境問題って、ニュースなどで聞くとすごく大きくて深刻な印象があって、未来に対して不安になったり、希望を持ちにくくなってしまうことがあると思うんです。
だからこそ授業では「問題を知ること」だけでなく「その解決に向けてどんな行動ができるか」を一緒に考えたり、実際に小さな取り組みをやってみたりするようにしています。 そうすることで、生徒たちにも「自分たちにもできることがある」と実感してもらえたらいいなと思っています。
生徒たちは未来の大人なので、学びの中で「自分も何か行動してみたい」「次はこうしてみよう」と前向きに考えられるようなきっかけを持ってほしい。それが、環境の授業で一番大切にしていることです。