答え
答えは...
C:持ち帰る です!
登山やトレッキングをしていると、特に気温の低くなる標高の高い場所では、暖かいものが食べたくなりますよね。
しかし、食べきれなかった時、残飯・残り汁・調理時の茹で汁をそのまま自然に捨てる行為は、多くの環境問題を引き起こしてしまいます。
なぜ捨ててはいけないのか
塩分や油分が含まれている
残り汁や茹で汁にも、食べ物の成分が溶け出しています。
この成分は塩分(調味料)や油分などを多く含んでおり、土壌や水質に悪影響を与えることがあります。
塩分は、土壌の化学的性質を変化させます。
土壌中の塩分濃度が高くなると、浸透圧が変化し、植物の根から水分が吸収されにくくなります。これにより植物が水分不足になり、草木が枯れる原因となるのです。
また、油分も土壌中での分解が難しい成分です。油分は水に溶けにくいため、土壌中に留まりやすくなります。これにより、土壌の通気性や排水性が悪化し、植物の根が呼吸しにくくなってしまいます。
特に油分は、長期間にわたり土壌を汚染するリスクがあるのです。
また、実は山のゴミは土壌だけでなく、山の川から海へ流れ、海洋ゴミの原因の一つともなっています。
野生動物が人間の食べ物に依存する
食べ残しや残り汁・茹で汁の匂いや味に引き寄せられた野生動物が、人間の食べ物に依存するようになると、その行動や生態が大きく変わります。
人間の食べ物に慣れた動物は、自然の中での適応能力が低下し、自らエサを探す能力を失うことがあります。また、人間との接触が増えることで、場合によっては動物が人間に対して攻撃的になることもあります。
山のトイレは整備されていないことが多い
山岳地帯のトイレは一般的に簡易的なものであり、下水道のような排水システムが整っていないことが多いです。油分や調味料が含まれた固形物・液体を流すと詰まりやすくなり、トイレが使用不能になるリスクがあります。
山のゴミ問題:増加する観光客と環境保護のバランス
実際に、現在山のゴミ問題が深刻化しています。
観光客の増加により大量のゴミが放置され、環境への影響が懸念されているのです。
特に富士山では、オーバーツーリズム(過剰観光)とそれに伴うゴミの放置やトイレの汚染が大きな課題となっています。
日本人の自然観や日本文化に大きな影響を与えてきた富士山は、「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」として2013年に世界文化遺産に登録されました。
しかし現在、登山マナーを守らない登山客の増加により、タバコの吸い殻、ペットボトル、空き缶、ビニール袋などのゴミが大量に捨てられています。
こうした実状を経て2023年9月、山梨県知事 長崎幸太郎知事は「今の状態では、富士山の世界文化遺産登録が抹消される懸念がある」と、強い危機感を示しています。
ゴミ問題は土壌の汚染だけでなく、日本の文化遺産の抹消の危機までをももたらしているのです。
綺麗な山を保つためには、私たち一人ひとりが意識し、マナーを守ることが大切です。
山にはマナーがある
「山に持ち込んだものはすべて持ち帰ろう。残していいのは足あとだけ」
公益社団法人 日本山岳会発行|山のマナーノートより抜粋
山に登る時はマナーを守り、ゴミを捨てないようにすることが大切です。
食べ残したものは必ず紙やチャック付き袋などにくるみ、持ち帰りましょう。
持ち帰りづらい残り汁などの液体も、工夫して持ち帰ることができます。
残り汁の持ち帰り方3選
スクリューキャップ付きボトルに入れる
液体をスクリューキャップ付きボトルに入れて持ち帰りましょう。もし使用済みの新聞紙や紙ゴミがあれば、吸わせておくとなお安心です。
ビニール袋やチャック付き袋などよりも閉じ口が強いため、漏れや臭いの問題を防げますし、帰宅後のゴミの管理もしやすくなります。行きは水筒などで使用し、帰りは食べ残しや残り汁を入れれば一石二鳥ですね。
凝固剤を使う
近年では環境配慮の目的で、下水に残り汁を流さないよう、液体をゼリー上に固めて捨てられる凝固剤が売られています。粉末を液体に投入するだけで簡単に固められるので、キャンプや登山など荷物をできるだけコンパクトにしたいときにもおすすめです。
液体ではなくなるので漏れることもなく、吸水後は燃えるゴミとして処理できます。
片栗粉で固める
少し手間ですが、残り汁を鍋などで再沸騰させ、別容器にうつし、片栗粉と一緒に入れてまぜて冷やせば固まります。固まった後は、ゴミ袋に入れてそのまま可燃ゴミに捨てられます。
山のマナーを守ろう!私たちにできること
上記は持ち帰り方をご紹介しましたが、できるだけ食べ切ること・食べ切れる量のみ持っていくことが1番です。 山のマナーを守り、美しい自然を守りながら、未来の世代にもその魅力を伝えていくために、私たちが意識して行動していきましょう。
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(参考1)産経新聞|山梨知事、富士山の世界遺産登録抹消を懸念
(参考2)公益社団法人日本山岳会|山のマナーノート/Mountain Hiking Etiquette