最近よく聞く、ライフサイクルアセスメントとは?
こんな疑問を解決!
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ライフサイクルアセスメント(LCA)って何?
商品パッケージにCO2排出量が書かれたものを最近よく見かけるわ。環境負荷が目に見えると、お買い物の目安になっていいわね。
そうだね。「環境負荷」を基準に消費者が商品を選べる、というのはとても大事なことだよね。
ところでママは「ライフサイクルアセスメント(LCA)」って知ってる?
「ライフサイクルアセスメント」は、製品やサービスの原料調達から、生産、流通、廃棄、リサイクルまで含めた一連の流れ(ライフサイクル:Life Cycle)で生じる環境負荷を、定量的に算定して評価(アセスメント:Assessment)するための手法だよ。
きちんと算定して、どれくらい環境負荷がかかっているのか知ることって大切よね。特に消費者は商品がどうやって作られて、どんな手段で運ばれて棚に並んでいるかってわからないものね。
ライフサイクルアセスメントって、最近よく聞くような気がするんだけど、いつ頃から取り入れられているのかしら?
なぜ注目されているの?
①LCAの歴史
二酸化炭素排出削減の取り組みは近年ますます盛んになっているよね。2001年に施行された「循環型社会形成推進基本法」では、拡大生産者責任の考え方が取り入れられているんだ。
「拡大生産者責任(EPR)」については、この前教えてもらったわね。製造段階だけじゃなくて、使用済みの段階まで生産者が責任を持つ、という考え方だったわよね。
覚えていてくれて嬉しい!ライフサイクルアセスメントでは、この廃棄・リサイクルまで含めた製品の環境負荷を、定量的に評価するんだよ。
1969年にコカコーラ社が始めた研究が最初なんだ。1997年にIISO(国際標準化機構)によって、ISO規格が作成され、標準化されているんだよ。日本では1998年にLCAのプロジェクトが始まって、今では様々な会社が取り入れているんだ。
ずいぶん前から取り入れられている手法なのに、どうして最近になって注目されているのかしら?
\生産者の責任を「拡大」するって?/
②LCAが注目される理由
気候変動について、パリ協定の2℃目標はママもよく知っているね。温室効果ガス削減や脱炭素化の流れは、当然企業活動にも影響があるんだ。環境意識が高まる中、企業が環境負荷の削減目標を立てても、その評価をする基準がないと実現って難しいよね。
LCAは、原料調達-製造・生産-流通-消費-廃棄・リサイクルと、細かなプロセスごとに評価して見える化したものだから、どの段階で環境負荷低減を行うのかが分かりやすいし、効果的な取り組みを実施することができるよ。
従来の商品よりも環境にやさしい素材で作られた商品があったとしても、その商品を製造する段階で従来品より多く環境負荷をかけることになるかもしれないものね。従来品と環境にやさしい素材で、総合的に見たら環境負荷はあまり変わらない…ということもあるのかもしれないわね。
ちなみに「カーボンフットプリント(CFP)」も環境負荷を評価する手法だけど、カーボンフットプリントは温室効果ガスの排出量をCO2換算したものなんだ。
LCAは温室効果ガス排出量だけではなく、資源枯渇や酸性化なども対象に含まれているんだよ。
LCAの手法を使って、CFPを算出する、といったイメージかしら?似たような言葉がたくさんあって混乱するけど、LCAはより総合的に環境負荷を評価できる手法ってことなのね。
引用:環境省| 『再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン』
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LCA活用のメリットや課題は?
①LCA活用のメリット
LCAを活用することで、生産過程や活動全体の見直しができることは大きなメリットだよ。
資源採集の段階から廃棄まで、製品のライフサイクルを細かく評価していくから、製品やサービス全体を俯瞰することに繋がるんだ。資材の無駄遣いや職場環境の属人化も防げると言われているよ。業種は問わないから、農作物を栽培する際の環境負荷を計るために取り入れられている事例もあるよ。
環境負荷だけではなくて、事業全体を見直すきっかけにもなるのね。環境問題へ取り組みながら、事業の課題も見つけられるってすごいわ!
環境負荷をデータとして可視化して公表できるから、企業としての信頼度や環境価値を高められるよ。ESG投資は日本でも広まりを見せているし、投資家視点で見ても良い影響があるよね。「グリーンウォッシュ」(※)の問題も最近よく話題になるから、正しく環境への影響を評価する手段としてもLCAは注目されているよ。
(※)グリーンウォッシュ:企業が環境への取り組む姿勢を装うこと。社会に与えるイメージと、実際の取り組み内容がともなっていないこと。
②LCAの課題
全企業がLCAに取り組んでいるわけではないわよね。活用するためにはどんな課題があるのかしら?
まずはコストの問題があるよ。原料調達から、廃棄・リサイクルまでにそれぞれ調査・分析が必要だから、それなりにコストがかかるんだ。環境負荷が大きいものがその企業の主力製品だった場合、企業活動に大きな影響が出るよね。いつまでに、どこまで解決すべきか判断が難しいという事も課題だよ。
あと、LCAはあくまでも製品やサービスを評価する手法なんだ。だから、工場などの設備の環境負荷は、測定の対象外なんだよ。
えぇっ!設備は対象外なの? じゃあ、「工場から排出されるCO2に対して、分析にLCAを使いたい」というのはできないってこと?
その通りだよ。あと、ISO規格は難易度が高くて、高度な専門知識が求められるから、人的なコストの問題も含めて、認定が取得できているのは一部企業に限られてしまっているんだ。とはいえ、国際的にビジネスを行っていく上では、やっぱりLCAへの取り組みは重要だよね。
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キーワードのまとめ
- 「ライフサイクルアセスメント(LCA)」は、個々の製品・サービスが「どれくらい環境に影響があるのか?」を見える化するための手法。
- CO2排出量、資源枯渇や酸性化など、製品のライフサイクルにおける総合的な環境負荷を算出する。
- LCAを通じた環境への取り組みを開示することで企業の価値を高められる一方、コスト面や企業活動との両立、専門的な知識が必要など、課題もある。
(参考)
環境省| 「循環型社会形成推進基本法」(2000年6月)
経済産業省| OECD「拡大生産者責任ガイダンス・マニュアル」について」(2001年7月)
環境省| 「再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」
一般社団法人 日本化学工業協会| ライフサイクルアセスメント(LCA)
環境省| サプライチェーン排出量算定の考え方
一般社団法人 プラスチック循環利用協会(PWMI)| 「LCAを考える「ライフサイクルアセスメント」考え方と分析事例」(2022年3月)
デジタル庁 (作成:川端由美氏)| 「LCAに向けた自動車産業の取り組みと今後の課題〜ミシュラン北イタリア工場訪問の事例〜」(2023年6月)
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