現在、世界中でプラスチック製品が溢れ、海洋プラスチックごみや地球温暖化といった環境問題が、毎日メディアを賑わせています。そのなかでも、衝撃的なニュースで大きな影響を与えたのが、動物の被害です。ウミガメの鼻にストローが刺さってしまったり、クラゲと間違えてポリ袋を食べてしまったり。ほかにも多くの動物が、人間の捨てた海洋プラスチックごみの被害を受けています。
紙製品を取り扱う当社では「環境問題解決カンパニー」として、紙で環境問題を解決すべく様々な取り組みをしています。そのなかの一つが、特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオーの活動支援です。今回は、理事長である馬塚丈司氏に、ウミガメを阻む社会問題やその対策について詳しく伺いました。
馬塚理事長(以下:馬塚)と当社紙で環境対策室の泉による対談形式で、全4回に渡ってウミガメから学び伝えたいことをお伝えしていきます。
目次
第3回「まちを変える」
3回目の今回は、ウミガメに優しいまちづくりのためにその地域に住む人の理解と街の環境を整えていく大切さについてお話を伺います。
市民の理解を得る
泉:
法律を変えるなど、日本中を大きく巻き込み活動をされている馬塚さん。そんな馬塚さんがいままでの活動で苦労したことはなんですか?
馬塚:
静岡県民、浜松市民に広く事実を伝えていくことですね。活動当初は、だれもウミガメが来ていることを知らなかったんです。そのため、観察会を実施し、多くの市民に参加してもらい、ウミガメのことを知ってもらえたらと思いました。その様子はニュースでたくさん取り上げられ、さらに市民のなかで興味が出て来ました。市内に理解してくれる人が増え、なかには毎日来てくれるような人もいましたね。
ただ、前回もお伝えしたように子ガメや卵を盗む人が出て来てしまったんです。ウミガメのことを知って、一緒にウミガメを守って欲しいと思っているのに、こういうことが行われてしまうのは、本当に残念で悲しいことです。どのように市民に伝えていけば一緒に守れるのか、試行錯誤しました。
目指すはハワイ
泉:
なかなか思いを伝えていくことは難しいですよね。馬塚さんがそんなにも市民と一緒に守りたいと思っているのは、どうしてなんでしょうか?
馬塚:
以前、ハワイのシンポジウムに参加したことがあります。その際に、ハワイではウミガメを神様として崇めて、保護していました。ハワイに住む人のウミガメを大切に思う気持ちから、いろんなハワイグッズにウミガメのデザインがあしらわれています。
泉:
確かにハワイのお土産といえば、ウミガメのデザインと言ったイメージがありますね。ハワイでは、具体的にどのような形でウミガメを保護しているのでしょうか?
馬塚:
ハワイでは、ウミガメのために灯から見直しています。シンポジウムの後に、ガイドさんに山へ連れて行ってもらいました。そこでハワイの夜景を見たのですが、オレンジの光に包まれた夜景でした。ハワイでは、太陽の光にはない、人間が作ったオレンジ光のナトリウム灯を使用しています。しかも、5年前から街の灯全部がです。
そのため、ウミガメなどの動物たちが太陽の光と勘違いすることなく、安心して生きていけるのです。
灯から変えていく
泉:
街全体の灯を変えてしまうとは、かなりの労力が必要な凄いことですね。個人的には「LEDは優しいものだからLEDに変えた方が良い」と思っていたのですが…
馬塚:
LEDは全然優しくないですよ。紫外線に近い光ですからね。同じく、蛍光灯や水銀灯もです。波長が短いものは体に影響を及ぼすとされており、放射能、X線、その次に紫外線と続きます。放射線やX線が危ないものというのは理解されている方が多いですが、その次に紫外線がくることはあまり知られていないのではないでしょうか。
泉:
そうだったんですね。全く知りませんでした。ちなみに今の浜松の街では、ハワイのようなナトリウム灯を導入できていませんが、影響は出ているのですか?
馬塚:
はい、出ています。実は、私も以前は世間の常識通りに、夜に子ガメの放流会を行っていました。暗いので、子ガメが見えるようにライトを当てながら放流していたのですが、放流会が終わり、翌朝、海岸に行くと、海へ入ったはずの子ガメが浜に戻ってきているんです。
子ガメは、私が観察会の時に当てていたライトに引き寄せられて海に入ったのですが、その後、街中の光に引き寄せられて砂浜に戻ってきていました。そのため、それ以降は昼間に放流会を行うようにしました。人間の便利さと生き物の暮らしの共存は非常に重要だと。
泉:
そうだったんですね。馬塚さんが手探りの中でも、ウミガメを守るために約35年間奮闘されていることがよくわかるお話でした。 次回は、とうとう最終回。馬塚さんが見つめる未来について伺います。よろしくお願いします。
馬塚:
よろしくお願いします。
ウミガメから学び伝えたいことシリーズ