現在、世界中でプラスチック製品が溢れ、海洋プラスチックごみや地球温暖化といった環境問題が、毎日メディアを賑わせています。そのなかでも、衝撃的なニュースで大きな影響を与えたのが、動物の被害です。ウミガメの鼻にストローが刺さってしまったり、クラゲと間違えてポリ袋を食べてしまったり。ほかにも多くの動物が、人間の捨てた海洋プラスチックごみの被害を受けています。
紙製品を取り扱う当社では「環境問題解決カンパニー」として、紙で環境問題を解決すべく様々な取り組みをしています。そのなかの一つが、特定非営利活動法人サンクチュアリエヌピーオーの活動支援です。今回は、理事長である馬塚丈司氏に、ウミガメを阻む社会問題やその対策について詳しく伺いました。
馬塚理事長(以下:馬塚)と当社紙で環境対策室の泉による対談形式で、全4回に渡ってウミガメから学び伝えたいことをお伝えしていきます。
目次
第2回「法律を変える」
2回目の今回は、活動初期の海の状態から、現在の海岸にするまでの地道な活動と法改正に邁進するお話を伺います。
車が走る危険な海岸
泉:
前回の記事で、活動当初の海岸は、とてもひどい状況だったとおっしゃっていましたよね。当時の様子を教えていただけますか?
馬塚:
当時は、まだ海岸をオフロード車が走っていました。日本には、海岸法という法律がありますが、そこにはオフロード車の走行を禁止する内容は定められていません。というのも、海岸法は60年間も手が加えられず、そのまま運用されていたのです。
60年前には、オフロード車が走ることはなかったですし、定められていないのはあたりまえなのですが、60年間も放置されていたことが衝撃です。ただ、このままではウミガメや野鳥の卵が車にひかれてしまいます。せっかく親ウミガメが産んだ卵も、ふ化することもなく、陸で死んでしまうのです。
泉:
過去の海岸の様子を知らない私には、とても想像のつかない状況です。どうやって今の状況までこぎつけたのですか?
馬塚:
まずは、海岸に入ってくる車にチラシを配って呼びかけました。「ウミガメが卵を産む海岸です。車で走ると卵が潰れてしまうので、走行しないでください。」と。もちろん、それで引き返してくれる人もいるのですが、中には相手にもしてくれずに轢き殺されそうになったり、脅迫状や嫌がらせもありました。ウミガメの命を守るために、私も命をかけて頑張っていました。
法改正への取り組み
泉:
そんな苦労があったんですね。海岸法の改正にも着手されていたと伺いましたが、詳しく教えていただけますか?
馬塚:
はい。呼びかけだけで変えることはなかなか難しく、海岸法の改正に着手しました。約15年間必死に交渉し、ようやく2000年にオフロード車の走行禁止を盛り込んだ新海岸法が交付されました。
そのほかにも、ウミガメを採ってはいけないことやハマボウフウをとってはいけないことなど海岸の動植物の保護についてやゴミの埋め立てやゴミの焼却の禁止を盛り込みました。
泉:
法律を改正するのには、そんなにも時間がかかり大変なんですね。それにしても、ウミガメや植物を採る人やゴミの埋め立てや焼却をする人がいることにもとても驚いてしまいますね。
馬塚:
そうなんです。法律を変えるのは、かなりの労力でしたが、それ以上に人間のひどい行動に驚いてしまいます。 私は、市民にウミガメのことを知って、一緒にウミガメを守って欲しいと思い、多くの市民に観察会へと来てもらいました。ただ一部の人は、子ガメや卵を盗んで売ってしまうんです。なので、卵の保護を始めました。あと、当時は夜のパトロールもしていましたね
簡単には変わらない
泉:
そんなひどい方もいるとは悲しいですね。今はもう馬塚さんが海岸を守ってくれているので、親ウミガメも安心ですね。
馬塚:
前回もお伝えしたように、浜松市ではウミガメが天然記念物として定められていますし、新海岸法も交付されました。当たり前のことですが、ウミガメは盗んではいけませんし、ハマボウフウをとってもいけません。ただ、こんなにも守られている海岸は、この中之島海岸だけなんです。
泉:
法律が変わっているのに、他の海岸ではまだ古い海岸法が使われているということですか?
馬塚:
そうなんです。国が県に委譲しているため、海岸管理は旧海岸法のままなのです。倫理社会の教科書にも載っているのにも関わらずです。私はこの事実を広めるためにも、講演会などでこの事実をお話をするようにしています。
泉:
そうだったんですね。多くの方に現状を知ってもらい、今の状況を変えられるよう一人ひとりが改めて考え直さなければいけませんね。
次回は、馬塚さんの目指すウミガメに優しいまちづくりについて伺います。よろしくお願いします。
馬塚:
よろしくお願いします。
ウミガメから学び伝えたいことシリーズ