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「バイオマスプラスチック」プラなし博士に聞く。環境問題のホント。#2

「バイオマスプラスチック」プラなし博士に聞く。環境問題のホント。#2

現在、世界中でプラスチック製品が溢れ、海洋プラスチックごみや地球温暖化といった環境問題が、毎日メディアを賑わせています。これらの問題に対応する為、日本では2020年7月よりすべての小売店で、プラスチック製レジ袋の有料化が義務付けられます。

 

人類に多大な恩恵をもたらしてきたプラスチックという素材は、今まさに岐路に立たされています。
紙製品を取り扱う我々大昭和紙工産業は、「紙化プロジェクト」と題して、プラスチック製品の紙代替を推進しています。

 

今回は、海洋環境や海洋科学技術の調査・研究をおこなっている「国立研究開発法人海洋研究開発機構」の研究員・博士の中嶋亮太氏に、今叫ばれるプラスチック問題やその対策について詳しく伺い、大昭和紙工産業が進める紙化プロジェクトについて、ご意見を頂戴しました。
中嶋博士(以下:中嶋)と当社紙で環境対策室の田中による対談形式で、全5回に渡って環境問題のホントをお伝えしていきます。

目次
  • 第2回 「バイオマスプラスチック」

第2回 「バイオマスプラスチック」

2回目の今回は、近年環境問題対策製品として注目されている、バイオマスプラスチックについて伺いたいと思います。

バイオマスプラスチックとは?

田中:

近年、環境問題対策製品として、バイオマスプラスチックというものを良く耳にしますね。

 

中嶋:

バイオマスプラスチックは、植物などのバイオマス由来の原料から作られるプラスチックです。 植物由来原料から作られた製品を焼却した際に排出される二酸化炭素は、原料である植物が成長する過程で光合成により吸収した二酸化炭素ですから、元々空気中にあった二酸化炭素が放出されるだけなので、地球上の二酸化炭素濃度を実質的には増やしません。これがカーボンニュートラルという考え方です。

 

この考え方から、植物由来のデンプンや糖分から作られるバイオマスプラスチックは、焼却しても二酸化炭素排出に繋がりません。その為地球温暖化対策の手段の一つとして期待されています。

 

バイオマスプラスチックにおけるカーボンニュートラルの考え方

 

\コラムで学ぼう!/

バイオマスプラスチック『製品』のホント

田中:

2015年に採択されたパリ協定では、地球の平均気温がこれ以上上がらないようにすることが目標になりましたからね。

 

中嶋:

はい。世界各国がその目標に向けてそれぞれの二酸化炭素排出削減計画を立て、それをカーボンニュートラルを含めた対策により達成しようとしています。これから既存の石油由来プラスチックは、バイオマス由来のプラスチックや代替素材に置き換わっていく方向に向かっていくと考えています。

 

田中:

なるほど。中嶋さんは、バイオマスプラスチックが地球温暖化対策に真に貢献できると思いますか?

 

中嶋:

期待はしています。でも問題もまだまだ多いです。バイオマスプラスチック製品に関するルールがまだ明確ではなく、従来の石油由来プラスチックにバイオマスプラスチックを一部混合していれば、バイオマスプラスチック製品であると言えてしまうからです。

 

政府は、2030年までに国内の二酸化炭素排出量を2013年度比で26%削減することを目標にしています。各社がこの目標に合わせて、バイオマスプラスチックを25%配合することを進めているようです。 ですがこれでは残りの75%は従来の石油由来プラスチックのままである為、結局二酸化炭素を排出してしまい、完全な地球温暖化対策にはなりません。

 

 

\動画で学ぼう!/

バイオマスプラスチックへの大きな誤解

田中:

なるほど。現行のバイオマスプラスチック製品では必ずしも地球温暖化対策に大きな貢献ができるわけではないのですね。私は、バイオマスプラスチックが地球温暖化対策だけでなく、海洋プラスチックごみ問題に対しても有効であるともとらえられる記事や報道が多いのが気になっています。

 

中嶋:

それは大きな誤解ですね。 バイオマスプラスチックは原料の由来が植物などのバイオマスであるだけで、構成成分は従来の石油由来プラスチックとなんら変わらないものも含まれます。バイオマスペットやバイオマスポリエチレンがそうですね。それらは自然界では分解されず、海に流出した場合極めて長い期間分解されないまま蓄積し続けます。 その為、「バイオマスプラスチック」だからと言って、それが単純に海洋プラスチックごみ問題の解決につながるわけではありません。もちろん、微生物により分解されるバイオマスプラスチックもあります(生分解性バイオマスプラスチック)。

 

バイオマスプラスチックは、地球温暖化対策素材として有望なものではあります。しかし、環境対策プラスチック製品に関する取り決めが不十分なため、その良さを活かしきれていないのが現状です。 バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックを十分に活かせる法整備や、両者の役割を混同させない様な情報発信がされるといいと思います。

 

田中:

そうですね。我々も正しい情報を発信できるよう気を付けたいと思います。 今回はバイオマスプラスチックについてご意見を伺いました。 環境問題対策として期待されるバイオマスプラスチックも、まだまだ活用の面で不十分であることがよくわかりました。 次回は今回も少し触れた、生分解性プラスチックについてお話を伺います。次回も宜しくお願いいたします。

 

中嶋:

宜しくお願いします。

 

\生分解性プラスチックってなに?/

 

プラなし博士に聞く。環境問題のホント。シリーズ

中嶋 亮太

Profile

中嶋 亮太

国立研究機関法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 研究員・博士(工学)

2009年創価大学大学院を卒業後、同大学助教、JAMSTECポストドクトラル研究員、米国スクリップス海洋研究所研究員を歴任。2018年より、JAMSTECに新設された海洋プラスチック動態研究グループに在籍し、海洋プラスチック汚染について調査研究を進めている。プラスチックをなるべく使わない生活を提案する人気ウェブサイト「プラなし生活」https://lessplasticlife.com/の運営も務める。

著書『海洋プラスチック汚染 ―「プラなし博士、ごみを語る」』(株式会社岩波書店)の中で、近年深刻な汚染問題が浮き彫りになってきた海洋プラスチックごみについて、現状や研究状況を分かりやすく伝え、プラスチックごみの発生を最小限にする社会を提唱している。

「バイオマスプラスチック」プラなし博士に聞く。環境問題のホント。#2

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