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鴨志田農園|堆肥づくりが地域の悩みを宝に変える|kamoshida farm

鴨志田農園|堆肥づくりが地域の悩みを宝に変える|kamoshida farm

「食べるものにはこだわりたい」「子どもができてから食材の産地や原材料を気にするようになった」そんな消費者の思いに答えてくれる生産者がいたらいいなと思いませんか?

 

そんな人に知って欲しいのが、東京都三鷹市の鴨志田農園。6代目の鴨志田純さんは、生まれも育ちも三鷹市。三鷹の地に根ざした栽培を行う鴨志田農園では、堆肥づくりに徹底的にこだわり、畑と食卓の繋がりを感じることのできる野菜を生産しています。

 

産直ECサイトのリピーターや、堆肥のもととなる生ごみを提供する近隣住民、鴨志田さんが開講する農業講座の参加者。多くの人との関わりの中で、循環型農業の推進に力を入れる鴨志田農園の鴨志田純さんにインタビュー。

 

お話を聞いて分かった、家庭の生ごみと野菜作りの関係をご紹介。堆肥作りにこだわる農業が、環境問題の解決に繋がる理由もお伝えします。

「半農半教育」のコンセプトの誕生

読者の方に向けて、現在の活動内容など、簡単な自己紹介をお願いします。

2010年から中高一貫校で数学の教師をしていたのですが、勤めて4年で父親がくも膜下出血で亡くなってしまい、農園を継がざるを得なくなりました。右も左も分からない中で、小学校6年生くらいで止まっている記憶をもとに、手探りで始めたのがきっかけです。

 

幼少期の鴨志田さんとご両親

そこから40冊くらいあった農業書籍からピックアップした約10冊を中心に読み込んで、1年ほどかけて農業のことを勉強した上で、ようやく2015年から本格始動しました。当時特定の師匠がいたわけではないですが、その1年後に突然ネパールから連絡がきたことがきっかけで、生ごみの堆肥化や有機農業の推進という話になり、現在の師匠と出会い、そこから堆肥づくりにのめり込んで現在に至ります。

生前にお父様が農業をしていたことについては、当時どのように感じていましたか?

いずれは農園を継ぐことになると思っていましたが、ちゃんとは考えていなかったですし、あまり環境問題とは結びつけていませんでした。ただ、ここにビルや家が突然建ってしまうというのは、自分の代ではしたくないです。ここでできたものを食べて育ってきたし、学校にも行かせてもらったというのもあるので、農園をなくすことはできないですよね。

 

父親が亡くなった日に最初にやったのは苗の水やり。ばあちゃんが亡くなった時に、父親も同じことをしていて、「なんでこんな葬式の日に水やりなんかするんだろう」と思っていたのですが、やっぱり苗が枯れてしまうというのは忍びないなということで、気がついたらそうしていました。

半農半教育のコンセプトはどのような取り組みから始まり、現在はどのように実現されているのでしょうか?

父親が亡くなったので、必然的に農業と教育が半々になりました。それに対して、塩見直紀さんの『半農半X』という書籍に「農的暮らしをベースにして、自分のやりたいXを追求する」という考え方があったので、「自分にとっては半農半教育だね」って落とし込んでいったという感じです。最初から農業と教育の兼業だったのですが、事後的に思想的な部分がついてきました。

 

2018年に教員はやめてしまったのですが、今も農園でNPOの食育プログラムや学校教育の一分野として関わっています。6次産業を作っていく「みたかジュニアビレッジ」という近隣の中学校の活動では、自分たちで畑でさつまいもを作って収穫できたら、ロールケーキをプロに製造をお願いして作って販売し、その収益金を元に来年度の予算を組むところまでやる、ということをやっています。

 

ジュニアビレッジのロールケーキ

今は2年目なのですが、1年目はさつまいもが全くできませんでした。スキームを組んだら計画通りに進むということは往々にしてあると思いますが、突然台風が来るような自然相手の厳しさが見えました。逆に2年目は大豊作で、1年目の失敗をバネにして2年目にやっていくっていうのは、普段の机の上の教育では分からないと思うので、そういった経験を生徒たちにしてもらえたのは大きかったと思います。

あとは、自分で食べ物を作って生きていけるという意識って、どういう生き方をしていくかを決めるときの身の振り方に響いていくと思っています。「食べるものがあればどうにでもなる」って思えると思うんですよね。そんなところも伝わっていると良いなと思います。

学生の時にそのような「生きる」の根幹を学べるというのは魅力的ですよね

農家になりたいという子もいますが、学校のアンケートでは、農家や漁師が職業の選択肢にないと思うんです。それはおかしいと思っていて、やっぱり自分の体に入ってくるものだからこそ、どういったトレーサビリティになっているのかを教えていきたいです。どうしてもスーパーに並ぶと、価格だけになってしまって差別化できないので、そういった食育体験を通して、「この人が作っているものだから食べたい」っていう関係性を作っていけているのは良いなと思います。

 

ヨーロッパの方だと「自国のものを食べましょう」って普通に教育の中で教えていますが、日本ではそれがあまりないので、ジュニアビレッジのような活動が良い突破口になれば良いですね。単純にビジネスや経済がこうやって回っているっていうことだけじゃなくて、将来何を購入していくのかっていうところをお伝えできたのかな、と思っています。

鴨志田さんご自身が「教育」に魅力を感じているようですね

魅力と必要性の両方のベクトルがあります。3.11が起きて2週間後に石巻に行ったのですが、原発の問題って次の世代にもずっと続いていくものだと感じました。その当時は24歳でしたが、次の世代に対して自分たちがしてきたことを伝えるときに、原発については自分が教壇に立ってうまく伝えられないなと思っていました。

 

今自分に娘ができて、これをうまく説明できないことには親にはなれないと思っていて。自分がコンポストなどを通して、環境に対して、次世代に対して責任ある行動が取れてきているとは思っています。


 

【次ページ】鴨志田さんが堆肥を購入しない理由

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鴨志田 純(かもしだ じゅん)

Profile

鴨志田 純(かもしだ じゅん)

1986年東京都三鷹市生まれ。コンポストアドバイザー。ネパールや全国各地で、生ごみ堆肥化や有機農業の仕組みづくり等を実施中。農林水産省、消費者庁、環境省主催「サステナアワード2020」にて、アドバイザーとして関わった黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクトが「環境省環境経済課⾧賞」を受賞。2021年、肥料の自給性や防災機能性等を高める取り組みとして、自立分散型コンポストシステム構築に向けた小規模実証実験「サーキュラーエコノミー型CSA」を開始し、各方面から注目を集める。同年、循環経済をデザインするグローバル・アワード 「crQlr Awards(サーキュラー・アワード) 」にて、「Agriculture-as-Commons Prize(コモンズとしての農業)」と「Wholesome prize」の2部門を受賞。2022年、「地域」や「地球」の課題解決に向けて挑戦する生産者を表彰する「ポケマルチャレンジャーアワード2021 ~課題に立ち向かう生産者たち~」にて、約6600名の生産者の中から年度テーマ「一次産業の現場から、地球を持続可能に」で、最優秀賞を受賞。元数学教員。防災士。パタゴニアプロセールスプログラム。趣味は、旅(地球一周、自転車日本縦断、四国遍路等)と読書。

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