2022年5月、品川区立の環境学習交流施設としてオープンしたエコルとごし。
自然豊かな戸越公園内に位置し、区民の憩いと交流の場として利用できる他、体感を重視した展示やエコが満載なイベントを通じて、楽しみながら環境について考えることができる、学習と交流のための施設です。
今回、カンキョーダイナリースタッフがエコルとごしにお邪魔して、実際に展示を体験しながら、環境について楽しく学べる工夫や、施設の取り組みについて伺いました。
つなぐ つづける つくりだす
「エコル」=「エコな活動をする」
施設ロゴ。施設名を取り囲むさまざまな形や色は、環境保全にむけた品川区の多様な取り組みと多様性を表現。
施設の愛称を公募し、220件の応募の中から採用された「エコル」という愛称に、地域名を加えた「エコルとごし」という名前には、品川区の中心に位置する戸越の地から、環境保全の活動や交流の輪が広がって欲しいという願いが込められています。
画用紙をハサミで切ったり、折ったり、子どもの遊び心をモチーフにした可愛らしいフロアマップ。
館内は3フロアで構成。1階は多機能ラウンジ、2階は地域の交流やボランティアのためのフロア、そして3階が各体験展示室と多目的スペースのあるフロアとなっています。
開放的なコミュニティラウンジ
木のぬくもりや開放感が感じられるコミュニティラウンジ。オープンは7時〜21時半まで。(展示エリア等は9時〜18時)※エコルとごし提供画像
1階は公園と一体感のある開放的な多機能ラウンジ。併設されている環境シェルフでは、環境を身近に感じられる本の紹介や、イベントで制作した造作物も展示され、自然光と木のぬくもりを感じながら、地域の交流と憩いの場として、訪れた人たちの学びと交流を深める場になっています。
環境課題を自分のこととして捉え、新たな気づきを得られるヒントになる本が並ぶ。環境シェルフの本はラウンジ内で自由に読むことができる。
交流自治体との絆をつなぐ拠点に
品川区と交流のある自治体の建材や家具などが施設に活用されている他、東京多摩地域の木材を積極的に使用することで、東京都内の地産地消を促し、林業の活性化や森林の健全な育成にもつながっています。木材を通じて様々な交流自治体について知ることができるのも、特徴のひとつです。
使用している建材と産地を見える化。施設各所に設置されているプレートをチェックしてみよう!
「みる・きく・さわる」
体感型展示で楽しく学ぶ
3階は体験型展示のフロア。環境課題の中でも、地球温暖化対策がメインテーマになっており、自分と環境との関わりをゲーム感覚で擬似体験できる。床・壁全面を使ったダイナミックな映像展示から、環境と時間とのつながりをキーワードに、暮らしの中の身近な視点から環境のことを考える常設展示まで、子どもたちがワクワクしそうな工夫が盛りだくさん。家族で訪れる子どもたちに混じって、展示を体験してきました。
いきものや自然と楽しく触れ合える!「いきものタッチ」
いきものによってリアクションはさまざま。アザラシの反応が可愛かったです。
未就学児の小さいお子さまからでも体験できる、自然に住むいきものや草花に触れ合う映像展示。空間全体に映し出される、トンボやアザラシなど自然界に住む可愛らしいいきものにタッチ。返ってくるいろいろなアクションを楽しみながら、陸の世界や水の中のたくさんのいきものと触れ合うことができます。
環境を守る3つのチカラを学ぼう!「バランスプラネット」
小学生以上推奨の体験展示ですが、大人でも楽しく体験できました。※エコルとごし提供画像
空間全体を使ったダイナミックな映像とアクションで、都市と自然のバランスについて考えるゲーム形式の映像展示。腕輪型のバランスバンドを装着し、水の使いすぎや食品ロス、資源循環や再生可能エネルギーなどをテーマにした3つのステージを通して、環境を守るために必要なチカラについて楽しく学ぶことができます。
時間をテーマに身近な視点で体験「トイカケのジカン」
「1秒」ゾーンでは、たった1秒の間に地球上で起きている大きな環境変化を体験。
1秒、1日、1年、10年といった時間をキーワードに、暮らしの中の身近な視点で、私たちの生活が環境へ与える影響について体験できる常設展示。1秒の間に地球で起こる環境の変化や、私たちがなにげなく過ごす1日の中でとるひとつひとつの行動が、環境にどう影響するのかなど、暮らしと環境の関わりを様々な仕掛けを通して学ぶことができます。展示の解説も充実しているので、子どもだけでなく、大人にとっても学びが多いのも特徴です。
「1日」ゾーンでは、生活を支える「もの」の視点で1日を振り返り、様々な生活シーンから環境への影響について考える。
「10年」ゾーンでは、 昭和から令和、時代を振り返り、暮らしと環境の関わり方の変化に触れ、未来への道のりを考える。
エネルギー削減へ率先した取り組み
環境学習と交流の場のエコルとごしですが、施設を運営する上でエネルギーの使用は当然避けられません。カーボンオフセットや省エネなど、様々な企業が脱炭素社会への実現に向けて試行錯誤する中、どのような環境への取り組みをされているのか、中藏館長のご案内で、普段は見ることができない屋上まで、館内をぐるっとご案内いただきました。
建物自体も環境にやさしい!
建物の屋根の7割に設置された太陽光パネル。平均で、一般家庭1日分の電力の約11世帯分の電力を発電。
エコルとごしには、品川区有の施設として最大規模の太陽光パネルをはじめ、年間を通じて安定した温度を保つ地中熱を活用した空調設備、トイレの洗浄水に使用するための4万リットルもの雨水を貯水できる水槽など、他にも様々な箇所で環境に配慮した工夫がされています。
エコルとごしの環境への取り組みを解説したサイン。施設の各所に設置されているので、探してみよう!
ガマンするのではなく、快適な室内環境を実現しながらも、省エネによって使うエネルギーを減らし、エネルギーを作り出す「創エネ」を組み合わせることで、建物で使うエネルギー収支ゼロを目指すエコルとごし。その結果、建物の竣工時点で91%もの年間エネルギー消費量の削減が見込まれており、都内公共施設として初めて「Nearly ZEB」の認証を取得しました。
エコルとごしが認証を受けた「Nearly ZEB」は、4つのランクがある「ZEB」の内、上から2つ目のランク。
ZEBとは・・・
「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称。
快適な室内環境を保ちながら、省エネにより使うエネルギーを減らし、太陽光発電などでエネルギーを創り出すこと(創エネ)で、建物で使うエネルギーの収支をゼロにすることをめざした建築物のことです。
エコ見える化モニター
正面エントランスを入ると右手に見えるのが「エコ見える化モニター」。エコルとごしの現在の発電状況やエネルギーの使用状況がリアルタイムで把握でき、省エネと創エネの効果が一目で分かります。
エコ見える化モニター。現在の発電電力や施設の使用エネルギー量など、エコルとごしの取り組みの効果が一目でわかる。
環境にやさしい展示作り
廃棄された衣服や小型家電、プラスチックのスプーンなどをリサイクルした再生材や、木や石、もみがらなどの自然素材を組み合わせた展示パネルを活用し、建築以外に、訪れた方が楽しむ展示自体にも環境に配慮した工夫がなされています。
廃棄された製品をリサイクルした再生材を活用したパネル。
未来をつくる子どもたち
子どもを支える大人たち
地球温暖化による影響が年々顕著になる中、楽しみながら学ぶことで、環境課題への関心を高める施設づくりを進めるエコルとごし。開館前に区民の方へのアンケートやヒアリングを実施したところ、環境課題について認識してはいるものの、具体的に何をすれば良いのか分からないといった声を受け、私たちの身近な「暮らし」を展示のテーマとしたそうです。
実際に世界で巻き起こっている環境課題を、身近なところから自分ごととして捉えるきっかけとなり、子どもを支える大人たちにとっても、一緒に学び直せる機会が得られるのではないでしょうか。これからの未来を担う子どもたちが大人へと成長する頃には、いまの環境課題が少しでも解決へと進んでくれることを願っています。
100年先の未来を見据えた環境に対する想いを、 来館者同士で共有する参加型展示。メッセージカードには、間伐材などを配合した環境にやさしい紙を使用。
編集後記
体験型の展示をはじめ、建築物の構造や仕組みなど、エコルとごしには環境に関する課題を自分ごととして捉え、楽しく学べる工夫がたくさんありました。子どもたちが楽しんでいる様子をみて、親御さんも一緒に環境課題を捉え直すきっかけとなるのではないでしょうか。 エコを楽しく学べる講座やワークショップも随時開催されているので、ぜひ参加してみてください。
体験できる講座やワークショップはこちら(エコルとごし開催イベントページへ)