鴨志田農園が解決する環境問題
鴨志田さんの取り組みは、具体的にどのような環境問題解決に貢献すると考えていますか?
まずは生ごみの処理にかかる助燃剤の使用を抑えることができます。うちの農園で初年度やっただけでも、年間約4,000リットルの削減になりました。
もう一つは、フードマイレージという形で食料の輸送距離が出るのですが、個人的には「コンポスト・マイレージ」が大切だと思っています。農家として肥料を購入していないので、農作物を作る前段階の物流に対しても貢献はしていけると思うんです。そういった肥料の運搬にかかる物流への負荷軽減に関しても貢献できていると思います。
消費者として農作物を作る前段階にまで目を向けるのは、なかなか難しそう...
やっぱり全員がそこまで考えるのは難しいと思っています。ただ、うちだったら「農産物が美味しい」ということで定期的に購入していただいているので、調べたら結果的に環境への負荷が抑えられていたっていうことで充分だと思っています。
例えば孤児院の子どもが作った人形を日本でチャリティとして売るとなった時、それは慈善事業としては良くても、持続的な商品として売れるかというとまた別だと思うんですよね。そこにおしゃれなデザインがあるということが大事だと思っていて、それが農業だと「野菜が美味しい」というところになります。
鴨志田農園の野菜の美味しさの理由はどこにあるのでしょうか?
やはり堆肥づくりです。例えば、植物性主体の堆肥を使って農作物を作ると、ふっと出てふっと消える甘さになるのでサラダで提供するのに最適な野菜になります。それを煮込み料理に合うような野菜作りをしたいってなった時には、コクが出るように動物性の堆肥を入れます。
調理の前段階で野菜に味をつけることができるので、調理の段階では添加じゃなくて純化でよくなってくる、足し算じゃなくて引き算の調理法ができます。逆に素材をきちんと作っていかないと味が薄まるので、そこは奥さんによく言われます。「今日は味薄くない?」って(笑)
鴨志田農園のInstagramでは奥様の料理を紹介されていますね。
見てもらっている人に意識して欲しいというよりは、普段の日常の食卓の中でいかにシンプルに美味しく食べているかを発信しています。よく見ると、茹でる・焼く・蒸す・オーブンに入れるだけだったりします。
良い調味料を使うということは大切だと思っていて、その辺で売っているものではなく、羽釜で炊いた塩を使うだけでも全く違います。今の時期だと菊芋にオリーブオイルを纏わせて、そのままオーブンに入れてグリルする。それに塩をつけるだけで充分美味しいです。料理下手な人ほど、調味料にこだわることが大事だと日々の食卓で感じます。自分が料理できないので(笑)
鴨志田農園で採れる野菜をご紹介頂けますか?
年間40種類くらい農作物を作っていて、フキやミョウガ、柿のような果樹を入れると70種類くらいになります。それぞれ季節ごとに6〜8種類の野菜を用意していて、主力としては、春は春菊・夏は甘長唐辛子・秋は里芋・冬は人参をおすすめとして提案しています。
今の時期だとのらぼう菜という江戸東京野菜。もともと野良でぼうぼうに生えていたという名前の由来があって、歴史的には江戸幕府の時代の飢饉の時に栽培が奨励された作物の一つです。菜花なのですがえぐみが全くなく、湯がくだけで甘いです。もう少し認知されても良いかなと思いますが、まだ小松菜などと比べるとマイナーですね。
鴨志田農園で採れた野菜はどこで購入することができますか?
うちのCSAに参加して頂くこともできますが、SNSで問い合わせ頂ければ店頭で直接お渡しすることができます。配送を希望される方は産直通販サイトで販売をしているので、是非そちらから購入して頂ければと思います。
編集後記
論理的な思考と分かりやすい説明で「さすが元数学教師!」と感じさせる鴨志田さん。緻密な計算を元に目の前の畑と向き合いながら、同時に堆肥づくりを通した地域の循環を俯瞰する視点を持ち、さらに地球環境や次世代への愛と責任感で行動する姿が印象に残りました。春から新たに大学院で研究を始めるという鴨志田さんの今後の活動に注目です。
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