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鴨志田農園|堆肥づくりが地域の悩みを宝に変える|kamoshida farm

堆肥づくりにこだわる理由

鴨志田農園さんの特徴を教えて下さい。

「経済合理性を取りながら、循環も作っていく」というところが鴨志田農園の特徴かなと思います。

 

面積は28アール(2,800平米)の農地で年間40品目くらいの農作物を作っています。農産物の売上は約700万円です。農作物は単価が安いため売上が取れず、日本の農家全体の約8割が売上が500万円未満。小規模な面積で売上をとって経済的に成り立たせている農家さんは少ないので、一つのモデルになるかなと思います。なぜそれができるかというと、月毎に6〜8種類くらいの農作物が作れるよう、1畝(うね)ごとに作付計画を変え、お任せ野菜セットで販売しているからです。

 

夏野菜

 

また、その農作物を作る時に、肥料を外部から購入すると原価率が上がってしまいます。地域で出る産業廃棄物を技術によって価値に置換していくことができるのであれば、それは地域にとっての悩みの種が宝になっていくと考え、肥料の原料にしています。例えば、NPOの方が清掃活動をした時に出てくる落ち葉や、近隣の学校の馬術部から処理に困っている馬糞をもらってきたり、という形です。あとは、この辺りは関東ローム層なので、住宅を作るときに掘ると赤土が出てくるのですが、それも1,000リットルあたり2万5千円程の処分費がかかるところを、無料で持ってきてもらえます。

 

そうやって集めてきたもので生ごみを処理するための基材を作ったら、近隣の皆様に「会員として農産物を買いませんか?」という募集をして、その代わりにコンポストを設置してもらい、コンポストがいっぱいになったらうちの農園に持ってきてもらってという、CSAの取り組みを行っています。

 

※CSA(Community Supported Agriculture|地域支援型農業):生産者と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組み(農研機構ホームページより)

堆肥づくりから取り組む農家さんは少ないのでしょうか?

みなさんが味噌を自分で作らずお店で買うように、どこまでやるかということになりますね。いい味噌屋さんがあればそこで買うように、良い堆肥が近隣にあるのであれば、それを買ってきて使えば良いと思います。

 

現状、有機農業に適合している肥料というのはほとんど流通していません。今、農林水産省では「みどりの食料システム戦略」を打ち出して、農地面積の25%を有機農業にしていこうとしていますが、食料自給の前に肥料の自給ができていない。そこで、社会的な問題として出てきている産業廃棄物とペアリングすることによって、有機農業や、慣行栽培でも減農薬の方向に徐々に移行を促す、ゆるやかな変化を生み出すための堆肥づくりだと思っています。

堆肥づくりに出会ったきっかけは?

野菜作りのためというよりは、社会的必要性があるけれど、自分にその技術がないから身につけようという流れです。

 

2015年にネパールから突然メッセージがきて野菜作りのアドバイスをしていたら、お礼にコーヒー豆を送ってくれたんです。現地で直接会ってみたいと思い、2016年の3月に会いに行った時に、2週間の滞在で生ごみ問題や所得が低い・そもそも働く場所がない、という色々な社会問題を見てきました。

 

生ごみの堆肥化によって、スモーキーマウンテン(ごみ山)の問題の解決や、現状の約1万5000円から3万円くらいまでの賃金のベースアップで、子どもたちや各家庭が満足いく教育を受けさせられるような体制にしていこう、となった時に堆肥づくりを学ぶ必要性がありました。


ネパールでの鴨志田純さん

帰ってきて農業書籍を読みましたが、全く良いやり方がなくて、インドール式という1900年代初頭に開発された稲藁と牛糞を積み重ねるようなやり方がいまだに載っていたり。技術革新がないのかなと思った時に、千葉県で農家をやっている友人に、農林水産省から農業技術の匠になった人がいるよ、という話を教えてもらって、連絡をしてみました。そうしたら「三重県まで通えば?」と言われたので、平日は教員をしていたので金曜の夜に軽トラに乗って三重県まで行って、土日は三重県で過ごして、日曜日の夜に帰ってきて、月曜日に出勤するというのを8ヶ月間続けました。それで技術を一つ一つ教えてもらいました。

 

一般的に何か問題が起きた時、対症療法的に解決すると思うのですが、西洋医学ではなく東洋医学的に、全体の流れを良くすることによって諸問題を解決することが大切だと思うんです。コンポストは社会問題を解決していくときの接続詞として機能していくと思っています。


 

【次ページ】「コンポスト=環境に良い」の証明

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