ダイナリー図書館では、これからの地球のために、自分ごととして環境問題に取り組むキッカケとなれるよう、カンキョーダイナリー(環境>)おすすめの本や映画などをご紹介していきます。
地球温暖化の原因は
二酸化炭素だけじゃない
よく聞く地球温暖化って?
みなさんは年々地球が暖かくなっていることをご存知でしょうか?現在の一年を通しての平均気温は、1850年〜1900年の頃と比べて、1.09℃上昇しているそうです。たった1℃程度?と思うかもしれませんが、長い時間をかけて気温の変化を繰り返してきた地球にとって、現代の気温上昇の速度は異常な速さです。このように地球がどんどん暖かくなっていく現象を「地球温暖化」と言います。
地球温暖化の主な原因は「温室効果ガス」によるものです。悪者に聞こえがちな温室効果ガスですが、温室効果ガスの「温室効果」がなければ地球の気温はマイナス19℃ほどになってしまうそうです。地球の気温を人間が住めるような気温にしてくれているのも温室効果ガスなんです。では何が問題なのか。それは便利な生活を実現するために温室効果ガスを異常に排出している人間の活動にあります。本書では地球温暖化の影響と原因についても詳しく紹介されています。
ウシのげっぷは環境に悪い?
地球温暖化の原因である「温室効果ガス」の割合の多くを占めるのが「二酸化炭素」です。世界ではこの二酸化炭素の排出量を削減、あるいはゼロにするための施策が活発化していますが、その傍らで注目を集めているのが、温室効果ガスの中で2番目に多い「メタン」です。このメタンは、二酸化炭素と比較すると、同じ質量あたりの温室効果はなんと25〜28倍だそうです。
このメタンの主な発生源となっているのが本書で題材にされている「ウシ」です。ウシはその特殊な胃の構造と反芻(はんすう)と呼ばれる習性により、一度胃に入れた食べ物を再び口に吐き戻し、よく噛んでまた飲み込むということを繰り返しています。この過程で出る「げっぷ」にメタンが含まれています。これには胃の構造はもとより、その中に生息する「微生物」が関係していて、現代の科学でも全てを解きあかせていないそうです。実はウシのげっぷが地球温暖化につながるほどの影響力を持っているのも人間がミルクや肉を必要以上に得るために、家畜の数を増やし続けた結果なのです。
メタンを減らす方法を探せ!
上記のことから本書のタイトルでもある「げっぷを退治しろ」は「メタンを削減する方法を実行せよ」ということになります。本書の監修者でもある北海道大学大学院農学研究院教授の小林泰男さんが研究を始めてから20年以上かけておこなってきた実験の内容とその成果、またそれらから派生している現在のプロジェクトに関しても本書には詳しく記載されています。メタンの排出量を削減するのに有効なエサはなんだったのか!?未来で実現されるであろう畜産の姿とは!?ぜひ読んで確かめてみてください。
意外と知らない温室効果ガスの種類
さて、上記では地球温暖化の原因として温室効果ガスの割合の多くを占める「二酸化炭素」「メタン」についてご紹介しましたが、他にも温室効果ガスとして扱われる気体がいくつかあります。占める割合は二酸化炭素とメタンの割合に比べて少ないですが、中には二酸化炭素の数万倍の温室効果を持つものもあります。あまり知る機会がない気体ですので、これらの気体についても学んでみましょう!
一酸化二窒素(亜酸化窒素)
温室効果ガスの割合の中で3番目に多いのが「一酸化二窒素」です。自然界では海洋や土壌に生息する微生物から放出される気体ですが、産業革命以降には農業において窒素肥料が使われるようになったことで、人間の活動によっても大量に放出されるようになりました。割合は比較的少ない一酸化二窒素ですが同質量の二酸化炭素と比べると、温室効果はそのおよそ298倍と言われている、大きな温室効果を持つ気体です。
ハロカーボン類(フロン類)
一般的にフロンという名称で認知されているハロカーボン類は本来自然界には存在せず、人間が工業的に生産したものがほとんどと言われています。フロンは科学的に安定した性質を持ち、人体にも毒性が少ないことから、エアコンや冷蔵庫などの家電の冷媒として利用されてきましたが、のちにオゾン層を破壊する性質が明らかになり、これが地球温暖化にもつながることから全世界的に使用が規制されました。オゾン破壊能力が極めて高い「特定フロン」に関しては、日本では2020年をもって全廃となっています。
六フッ化硫黄
1960年代から電子機器の絶縁材として製造されるようになった、無毒・無臭・無色・不燃性の気体です。優れた絶縁性能を持つため、ガス遮断器やガス絶縁開閉装置をはじめとする電子機器に広く用いられています。六フッ化硫黄は二酸化炭素と比べると約23,900倍の温室効果を持ち、現在は大気への放出が制限されていることから、回収、管理が必要な気体です。
三フッ化窒素
三フッ化窒素は液晶ディスプレイや太陽電池フィルムの製造時に使われる、無色、有毒、無臭、不燃性、助燃性の気体です。三フッ化窒素は二酸化炭素と比べると約17,200倍の温室効果を持ちます。三フッ化窒素を除く上記の温室効果ガスは、1997年に採択された「京都議定書」にて削減率と目標値が定められましたが、三フッ化窒素に関しては排出量が少ないとして京都議定書で定められた温室効果ガスには含まれませんでした。
【目次】
・はじめに
・第一章 地球がどんどん暖かくなっている
・第二章 ウシのひみつ ウシの祖先
・第三章 メタン低減物質を探せ 「ウシは悪くない」
・第四章 ウシとヒトとの新時代
・おわりに
【著者紹介】
著者 大谷智通
1982年、兵庫県神戸市生まれ。サイエンスライター、編集者、出版エージェント。
東京大学農学部卒業後、同大学院農学生命科学研究科で水圏生物科学を専攻。大学では魚病学研究室に所属し魚介類の寄生虫病の研究を行う。出版社勤務を経て2014年よりフリーランス。活動の拠点として「スタジオ大四畳半」を設立し、書籍のライティング、編集、エージェンシーなどを手がける。
主な著書に『マンガはじめての生物学』(絵・佐藤大介、講談社)、『増補版 寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(絵・佐藤大介、監修・目黒寄生虫館、講談社)、『えげつないいきもの図鑑 恐ろしくもおもしろい寄生生物60』(絵・ひらのあすみ、ナツメ社)などがある。
監修 小林泰男
1956年京都府に生まれる。1981年北海道大学大学院農学研究科博士前期課程修了。現在、北海道大学大学院農学研究院教授。農学博士。
【商品詳細】
出版社:旬報社
発売日:2022/10/27
言語:日本語
単行本:170ページ
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参考)気象庁|その他の温室効果ガス