地球にやさしく暮らしたいけど、どうしたらいいかわからない。
そんな皆さんのお悩みにエシカル先生が分かりやすくお答えします。
#8は「オゾン層の破壊」についてです。
質問| オゾン層の破壊って何?地球環境問題にどんな問題が起こるの? |
❑ 解説
ご質問ありがとうございます。
「オゾン層」というワードは聞いたことあるけど、なんとなくしか理解できていないという人も多いのではないでしょうか。まずオゾンとは酸素原子3個からなる気体で、大気中のオゾンは地上から約10〜50km上空にある成層圏に約90%存在しており、このオゾンの多い層を一般的にオゾン層といいます。
成層圏オゾンは、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。 また成層圏オゾンは、紫外線を吸収するため成層圏の大気を暖める効果があり、地球の気候の形成に大きく関わっているんです。上空に存在するオゾンを地上に集めて0℃に換算すると約3ミリメートル程度の厚さにしかならず、このように少ない量のオゾンが有害な紫外線を防いでいます。
では、どうしてこのオゾン層が破壊されているのでしょうか。オゾン層では、オゾンが常に分解や生成を繰り返し、一定のバランスが保たれています。しかし、フロンなどの化学物質の影響でこのバランスが崩れ、オゾンが分解しオゾン層が減少していきます。
南極や北極の上空などでは、オゾンが非常に少ない「オゾンホール」が出現していると言われています。1980年代初めから観測されているオゾンホールは、南半球の冬季から春季にあたる8~9月ごろに発生し、急速に発達したのち、11~12月ごろに消滅するという季節変化をしています。
特に南極のオゾンホールの状況は深刻で、衛星観測によると、2023年(9月25日現在まで)の南極オゾンホールは、最大値で南極大陸の約1.9倍の面積(2,590万平方キロメートル)もあります。※ 最近10年間の最大値と同程度の面積で推移しているとはいえ、オゾンホールがこれから先どんどん大きくなると、地上に降ってくる紫外線の量が増え、地球の生物にとっては大変危険なんです。
※9月21日観測
フロンとは
オゾン層の破壊の原因となっているフロン。では一体、フロンはどんな化学物質で、どんなところで使用されているのでしょうか?
フロン(特定フロン)は、安価で扱い易く、人体へも害が小さいため、冷蔵庫やエアコンの冷媒や、スプレーの噴射剤などに使用されてきました。その後、オゾン層の破壊に影響を与えていることが発覚し、代替フロンが開発されました。代替フロンは、特定フロンと変わらない性質を持っていますが、それまでのフロンと違って、オゾン層を破壊する心配がありません。
ところが、代替フロンは地球温暖化現象のおもな原因といわれている二酸化炭素の、数百から数万倍の温室効果があることが分かりました。特に、代替フロンであるHFC(ハイドロフルオロカーボン)は、京都議定書の削減対象物質となっています。そこで、最近では代替フロンさえ使わないノンフロン冷蔵庫の開発や普及なども進んでいます。
オゾン層の破壊を食い止めるための世界や日本の取り組み
オゾン層の保護のためのウィーン条約(1985年)
概要|
ア オゾン層の変化により生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するために適当な措置をとること(第2条第1項)
イ 研究及び組織的観測等に協力すること(第3条)
ウ 法律,科学,技術等に関する情報を交換すること(第4条)等について規定している。
オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(1987年)
規制措置|
(ア)各オゾン層破壊物質(ODS:Ozone Depleting Substances)の全廃スケジュールの設定(第2条のA~I)
(イ)非締約国との貿易の規制(規制物質の輸出入の禁止又は制限等)(第4条)
(ウ)最新の科学,環境,技術及び経済に関する情報に基づく規制措置の評価及び再検討(第6条)
(エ)代替フロンとして使用されるハイドロフルオロカーボン(HFC)の段階的削減スケジュールの設定(第2条のJ)(2016年の議定書改正で追加)
国連環境計画(UNEP)では、1995年からモントリオール議定書が採択された9月16日を「国際オゾン層保護デー」(International Day for the Preservation of the Ozone Layer)と定めています。
オゾン層保護法(1988年)
世界に先駆けて策定した法律。モントリオール議定書で課されたオゾン層破壊物質の製造・輸出入等の規制、排出抑制、使用合理化指針作成等が定められている。
家電リサイクル法(1998年)
- 家庭用エアコン
- テレビ(ブラウン管式・液晶式(電源として一次電池又は蓄電池を使用しないものに限り、建築物に組み込むことができるように設計したものを除く。)・プラズマ式)
- 電気冷蔵庫・電気冷凍庫
- 電気洗濯機・衣類乾燥機
上記の家電4品目について、小売業者による引取り及び製造業者等(製造業者、輸入業者)による再商品化等(リサイクル)が義務付けられ、消費者(排出者)には、家電4品目を廃棄する際、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことなどをそれぞれの役割分担として定めています。
自動車リサイクル法(2005年)
ゴミを減らし、資源を無駄遣いしないリサイクル型社会を作るために、クルマのリサイクルについてクルマの所有者、関連事業者、自動車メーカー・輸入業者の役割を定めた法律。
- クルマの所有者(最終所有者)
リサイクル料金の支払い、自治体に登録された引取業者への廃車の引き渡し。
- 引取業者
最終所有者から廃車を引き取り、フロン類回収業者または解体業者に引き渡す。
- フロン類回収業者
フロン類を基準に従って適正に回収し、自動車メーカー・輸入業者に引き渡す。
- 解体業者
廃車を基準に従って適正に解体し、エアバッグ類を回収し、自動車メーカー・輸入業者に引き渡す。
- 破砕業者
解体自動車(廃車ガラ)の破砕(プレス・せん断処理、シュレッディング)を基準に従って適正に行い、シュレッダーダスト(クルマの解体・破砕後に残る老廃物)を自動車メーカー・輸入業者へ引き渡す。
- 自動車メーカー・輸入業者
自ら製造または輸入した車が廃車された場合、その自動車から発生するシュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類を引き取り、リサイクル等を行う。
フロン排出抑制法(2015年)
フロン類の製造から廃棄までライフサイクル全般に対して包括的な対策を実施するため、フロン回収・破壊法を改正した法律。2020年4月1日には、改正フロン抑制法が施行されました。
オゾン層保護対策推進月間(毎年9月)
日本では、毎年9月を「オゾン層保護対策推進月間」として、オゾン層保護やフロン等対策に関する様々な普及啓発活動を行っています。
私たちでもできる地球を守る取り組み
ノンフロン製品を選ぶ
日本では特定フロンの生産は行っていませんが、代替フロンについてはまだ生産・使用されています。特に、家庭用冷蔵庫や建材用断熱材の分野でノンフロン製品の普及が進んでいるので、地球環境の保全のためにもノンフロン製品を選ぶようにしましょう。
フロン回収に協力する
フロンを使用した製品がそのまま捨てられると、フロンが大気中に出てしまう可能性もあります。冷蔵庫やエアコンを買いかえるときなどは、小売店などに引き取ってもらいましょう。また、新しい車を買ったり、現在使っている車を車検に出すときは、自動車のリサイクル料金を払いましょう。リサイクル料金には、カーエアコンからフロンを回収して破壊する費用が含まれています。
使用時の漏えいに気をつける
業務用の空調機器・冷凍機器(ビル空調・食品のショーケース、冷凍・冷蔵庫等)を使用するビルオーナー、商店主等は、点検、修理依頼、記録等を通じて使用時の漏えい対策に取り組みましょう。
オゾン層の仕組みやフロンのことを知ろう
フロンは、とても蒸発しやすく、処分するのがとても難しい物質です。オゾン層の破壊や温暖化から地球環境を守るために、一人ひとりがフロンについて正しく理解して、フロンを大気に出さないようにすることが大切です。
(参考1)気象庁「オゾン層とは」
(参考2)環境省「オゾン層って、なんだろう?」
(参考3)Gakken キッズネット「オゾン層とは何」
(参考4)気象庁「南極オゾンホールの状況(2023年)」
(参考5)経済産業省「ケミカルワンダータウン」
(参考6)環境省「9月はオゾン層保護対策推進月間です!」
(参考7)外務省「オゾン層保護(ウィーン条約/モントリオール議定書)」
(参考8)環境省「オゾン層保護法の概要」
(参考9)環境省「家電リサイクル法の概要」
(参考10)経済産業省「自動車リサイクル法とは」
(参考11)経済産業省「フロン排出抑制法の概要」