絶滅危惧種とレッドリスト

絶滅危惧種とは
絶滅危惧種とは、個体数が著しく減少し、このままでは自然界での生存が困難になる恐れのある生物のことです。 絶滅危惧種になる要因はさまざまですが、特に環境の変化に適応しづらい種や繁殖速度の遅い種は絶滅リスクが高まります。 絶滅は単なる「その種がいなくなること」ではなく、食物連鎖の崩壊や生態系のバランスの乱れにつながる深刻な問題です。
絶滅の危険度を科学的に評価するため、国際自然保護連合(IUCN)は「レッドリスト」を作成し、 生物を「絶滅(EX)」「野生絶滅(EW)」「絶滅危惧(CR・EN・VU)」などのカテゴリに分類しています。
レッドリストとは
レッドリストとは、絶滅危惧種を分類・登録するための国際的なリストを指す言葉です。
レッドリストは主に国際自然保護連合(IUCN) によって作成・管理されており、絶滅の危機に瀕している動植物の名が記載されています。 海洋生物だけでなく、動物・昆虫・植物なども掲載されている他、主な生息地などもまとまっています。 そのため、絶滅のリスクを示すリストとして使用されるだけでなく、絶滅危惧種の一覧として参考にされることも多いです。
なお、国際的に活用されている国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストの他、各国の生物種について評価する「国内レッドリスト」も存在します。 日本では環境省を主導として地方公共団体やNGOなどが国内レッドリストを作成するケースがあり、国内の絶滅危惧種をまとめたリストとして参考にできます。
レッドリストと絶滅危惧種の違い
レッドリストと絶滅危惧種はどちらも似たような単語ですが、厳密には意味合いが少し異なります。 まず、レッドリストとは、種の保存状態を評価してリスクをカテゴリー分けしたリストのことです。
レッドリスト内で「絶滅危惧種」という用語は使われておらず、あくまでもどれほど絶滅の危機に瀕しているかを分類したリストとして活用できます。
一方、絶滅危惧種は「絶滅の危機に瀕する動植物全般」を指す言葉であり、ほんの僅かしか生き残っていない動植物のことも、将来的に絶滅の恐れがある動植物のことも、
全般を指して絶滅危惧種と呼ぶことが多いです。
なかには「深刻な危機」「野生絶滅」などより絶滅リスクの高い種を指して絶滅危惧種と呼ぶこともありますが、明確な基準は存在しません。
レッドリストの種類
国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストでは、各動植物について以下の通り分類しています。
- 絶滅(EX)
- 野生絶滅(EW)
- 深刻な危機(CR)
- 危機(EN)
- 危急(VU)
- 準絶滅危惧(NT)
- 低懸念(LC)
- データ不足(DD)
- 未評価(NE)
環境省でもほぼ同等である9つの分類を使って動植物の絶滅危機度合いを可視化しています。

- 絶滅(EX)
- 野生絶滅(EW)
- 絶滅危惧I類(CR+EN)
- 絶滅危惧IA類(CR)
- 絶滅危惧IB類(EN)
- 絶滅危惧II類(VU)
- 準絶滅危惧(NT)
- 情報不足(DD)
- 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)
環境省が公表しているレッドリストでは、既に絶滅してしまった動植物や、一定の保護環境下でのみ生息が確認されている動植物などをステータス別に閲覧できます。
海の生き物 レッドリスト一覧

絶滅危惧IB類に指定されているシロワニ
ここでは、環境省が公開している「日本の海洋生物のレッドリスト」を一覧で紹介します。
※「+」を押すと一覧が表示されます
- 絶滅危惧IA類(CR)
-
ゼブラアナゴ
オオイワシ
オオアオノメアラ
タマカイ
カスリハタ
サラサハタ
オオクチヌメリ
クシヒゲヌメリ - 絶滅危惧IB類(EN)
-
シロワニ
ホウセキハタモドキ
コイチ
カンムリブダイ
イトヒゲモジャハゼ
カラス - 絶滅危惧II類(VU)
-
コクハンアラ
オキナワキチヌ - 準絶滅危惧(NT)
-
クロヌタウナギ
ホシザメ
シロザメ
エイラクブカ
スミツキザメ
フトツノザメ
カスザメ
コモンサカタザメ
ウチワザメ
ドブカスベ
メガネカスベ
ガンギエイ
メダマカスベ
イサゴガンギエイ
モヨウカスベ
ヤジリエイ
ナルトビエイ
カワリアナゴ
モバウツボ
クダヤガラ
チンヨウジウオ
ミナミオクヨウジ
サヨリトビウオ
ベニメヌケ
アラメヌケ
ヒレグロメヌケ
バラメヌケ
サンコウメヌケ
オオサガ
タケノコメバル
ニラミカサゴ
カスリフサカサゴ
ダンゴオコゼ
ワタゲダンゴオコゼ
ウバゴチ
アカメモドキ
ヒトミハタ
マンジュウイシモチ
コガネシマアジ
センネンダイ
イレズミフエダイ
イトヒキフエダイ
ヤンバルサギ
シャムイトヨリ
アマクチビ
アマミフエフキ
オオフエフキ
ヤエヤマフエフキ
ハクテンカタギ
ヒメフウライチョウチョウウオ
セジロクマノミ
シロクラベラ
クロベラ
メガネモチノウオ
シンジュカズナギ
アカウオ(wakae 型)
アカウオ(microcephalus 型)
コモチジャコ
アカハゼ
ヌエハゼ
ヒシヒレオオモンハゼ
キイロサンゴハゼ
セアカコバンハゼ
ベニサシコバンハゼ
シュオビコバンハゼ
アカテンコバンハゼ
イレズミコバンハゼ
コバンハゼ
アイコバンハゼ
イチモンジコバンハゼ
タスジコバンハゼ
フタイロサンゴハゼ
アワイロコバンハゼ
クマドリコバンハゼ
フタスジコバンハゼ
ムジコバンハゼ(ヒトスジコバンハゼ)
オオヒレコバンハゼ
ヒメクロコバンハゼ
シジミハゼ
イッテンクロコハゼ
パンダダルマハゼ
カサイダルマハゼ
ヨゴレダルマハゼ
クロダルマハゼ
アカネダルマハゼ
ダルマハゼ
ホシガレイ
コウライアカシタビラメ
マフグ
世界規模で見ると、ホホジロザメ・ジンベエザメ・アオウミガメ・ジュゴン・ケープペンギンなど、馴染みのある海洋生物の名前もレッドリストに含まれています。
上記の通り日本近海だけでも相当数の海洋生物がレッドリストに登録されており、世界に目を向けると更に数が増えるのです。
水族館や図鑑で馴染み深い動物も、近い将来見られなくなってしまうかもしれません。
海の絶滅危惧種が増えている理由

ここでは、海の絶滅危惧種が増えている理由を解説します。なぜここまで海の絶滅危惧種が多いのか、根本的な理由を探ってみましょう。
人口増による大量捕獲
世界的に人口が増加するに伴い、食料を確保するため大量捕獲が進むようになりました。
魚介類は貴重な食料源のひとつであるため、商業漁業はますます拡大するだろうと予想されています。
漁獲量が自然の再生能力を超えてしまった場合、海洋生物の個体数が急激に減少するでしょう。
とはいえ「魚を食べるのは禁止」とすることもできず、漁獲量と個体数のバランスを取るのが難しくなりつつあります。
また、底引き網漁などターゲットとなる種以外も捕獲されてしまう手法など、生物多様性の低下を招く漁業も問題視されてきました。 効率よく漁業をすることと、人口増加による大量捕獲のリスクと、どちらも考えていく必要があります。
商業目的による乱獲
近海洋生物の大量捕獲は、食料対策だけを理由とするものではありません。
例えば、ウミガメの甲羅を眼鏡のフレームやブローチにしたり、サメの歯をアクセサリーにしたりするケースは少なくありません。
現在絶滅危惧種に登録されているラッコは、毛皮目的の乱獲が個体数減少の原因の一つとされています。 今でこそ少しずつフェイク(合成)素材を使うなど工夫する事例が増えていますが、天然素材は希少だからこそ人気も高くなることがあります。 高く売れるからこそ乱獲が続き、持続可能性を破壊してしまうこともあるでしょう。
気候変動・地球温暖化
大規模な気候変動・地球温暖化が続くことで海の環境が変わり、それまで当たり前に生息していた海洋生物が暮らせなくなってしまうことも課題となっています。
特に、海水温が一定の範囲内でないと生息できないサンゴ礁の死滅や、氷床が減ることによるアザラシの居場所現象などが有名です。 アザラシがいなくなれば別の海洋生物にも影響するなど負のスパイラルが続き、どんどん絶滅が進むケースも珍しくありません。 海水温の上昇・海水の酸性化・海流の変化・異常気象・海面上昇など、さまざまな要因が海洋生物に影響を与えています。
環境汚染
環境汚染が原因で海の生態系や海洋生物の健康が損なわれてしまうこともあります。
例えば、海に捨てられたプラスチックを食べて喉を詰まらせてしまう生き物がいたり、農薬・産業排水による海洋汚染で生き物が住めなくなってしまったりする事例が挙げられます。
その他、突発的な油流出事故なども、数十年単位で海洋生物に影響を与えます。 プラスチックゴミや化学物質の排出については厳しく規制されるようになりつつありますが、まだまだ対策は不十分です。
外来種の持ち込み
外来種の持ち込みにより、特定地域の生態バランスが崩れてしまうこともあります。
外来種とは、人間の活動によって別の場所に持ち込まれた種のことを指します。海洋生物に限った話ではなく、陸の生物や植物の分野でも深刻な課題として捉えられるようになりました。
特に動植物は気候など地域特性に合わせて活動するため、「日本にしかいない種」「この国のこのエリアにしかいない種」が存在します。 外来種の持ち込みにより生体バランスが崩されると、生物多様性を確保することはできません。
無理な土地開発
無理な土地開発により海や河川の生態系が失われ、そこに生息している生物が危機に瀕することも少なくありません。
例えば、生態系を気にせずに行われる埋め立て・海岸線の変更・湾岸開発・リゾート開発などが挙げられます。
干潟の破壊によって小魚や貝類に影響することも多く、沿岸部の生物にとって重要な生息地を奪うことになるのです。 また、土地開発によって、排水や汚水が海に流れ込むことが増え、海水の水質汚染が進行するケースもあります。環境汚染とも密接に関係するため、慎重な開発計画が求められます。
海の絶滅危惧種レッドリストが増えるリスク

ここでは、海の絶滅危惧種が増えるリスクを解説します。なぜ海の絶滅危惧種が増えると危険なのか、課題となるポイントを確認しましょう。
生物多様性の損失
海洋生物が絶滅すれば、海の生物多様性が損なわれます。
「他の種がたくさんいるのならよいのでは?」と考えてしまいがちですが、実は多様性が損なわれることは人間社会にも大きくマイナスの影響を与えるので注意しましょう。
例えば貝類がサンゴなどがいなくなった場合、水質浄化が進まず、海洋が自浄作用を発揮できなくなります。 水質が悪化するだけでなく、貧酸素水域(デッドゾーン)や赤潮などの有害な現象が発生しやすくなるでしょう。
食物連鎖が不安定になってさらなる絶滅を招いたり、炭素を貯蔵する海藻やプランクトンが減って温暖化が加速したりすることもあります。 私たちが海の生物多様性を失うことは、未来の世代に対する責任を果たさないことにもなるのです。
漁業への影響
絶滅する海洋生物が増えれば、その分漁業対象となる魚や甲殻類の数も減少します。
漁業資源が枯渇すれば増え続ける世界人口を支え続けることはできないでしょう。
また、漁業関係者やそれに関連する地域経済が大きな打撃を受けることもあり、経済バランスにも影響します。
代表的な例では、クロマグロやウナギなどの絶滅リスクが挙げられます。 「マグロやウナギが食べられなくなる」となれば、食の楽しみも減ってしまうので、海洋保全が急務とされているのです。
観光業への影響
海の生物多様性は、エコツーリズムや野生動物観光の重要な要素となっています。
サンゴ礁・イルカ・クジラなど海洋生物を観光資源とする地域では、生物多様性の損失がダイレクトに観光資源の喪失につながります。
「サーフィンしても魚がいない」「クジラが見られないためホエールウォッチングは廃業する」という事例も起こるでしょう。 結果、その地域で失業者があふれたり、急速な過疎化が進んだりするかもしれません。 地域経済への影響が大きいからこそ、海の絶滅危惧種が増えることは大きなリスクになっているのです。
人類の健康への影響
海の絶滅危惧種が増えて食べられる魚が減れば、タンパク質の摂取に限界がくるかもしれません。
魚介類や海藻類にはオメガ3脂肪酸・ビタミン・ミネラルが含まれているからこそ、
海洋資源が減少すると栄養不足が深刻化し、貧血・免疫力低下・発育不良などの健康問題が発生する可能性が高くなります。
同様に、水銀やプラスチック等による海洋汚染が進めば、結果的に魚を口にする人類にも健康被害が起こり得ます。 「海は汚いから泳げない」「魚は有毒だから食べてはいけない」という世界になっては、心理的なストレスにもつながります。
海の絶滅危惧種を守るための施策【政府・企業・個人】

ここからは、海の絶滅危惧種を守るための施策例を紹介します。 政府・企業・個人の3つにわけ、それぞれが主体として動ける施策としてご参考ください。
政府の施策
海洋保護区の設定
海洋保護区とは、特定のエリアに生息する生物や生態系を守るために設けられる保護区域のことです。
海洋保護区では商業的な漁業活動や開発活動が制限されるため、自然の状態を維持しやすくなります。
例えば、サンゴ礁・海草床・魚類の産卵地などが海洋保護区に指定されれば、これらの生物たちが繁殖しやすくなり、種の回復を促進できます。
気候変動に対するレジリエンス(回復力)を高める役割も期待でき、一石二鳥の取り組みとなるでしょう。 日本では、伊豆・小笠原海溝、中マリアナ海嶺・西マリアナ海嶺北部、西七島海嶺、マリアナ海溝北部などが海洋保護区として指定されています。
海洋環境の保全活動
政策的なアプローチや法的ルールを通して、海洋環境の保全活動をすることも可能です。
例えば、プラスチック廃棄物の処理方法や石油流出など有害物質の排出量について厳しく法律で定めることができれば、海洋汚染対策として役立ちます。
漁業方法の規制や漁獲量の制限なども、海洋環境保全のひとつと言えるでしょう。
とはいえ、経済活動とのバランスを考え、「どこまで制限するか」「どのようなルールにするか」は慎重に検討する必要があります。 地域経済や気候変動への対応にも直結するからこそ、今後のルール化が期待されています。
情報発信・教育活動
政府による情報発信・教育活動で、海の絶滅危惧種に対する意識を引き上げることも大切です。
例えば海洋環境の状態を監視するために衛星技術・ドローン・海洋調査船などを活用してデータを収集し、民間と共有すればより積極的な海洋保護が可能になるでしょう。
違法漁業の監視や海洋汚染の追跡に役立つ仕組みを作ったり、必要な情報を正しく発信・啓蒙することで、マナーや倫理感の向上も期待できます。
また、学校教育において海洋環境や生物多様性の保護を学ぶカリキュラムを導入するなど、将来世代の教育に力を入れるのも有効です。 「世界海洋デー(World Ocean Day・毎年6月8日)」を期に市民参加型のイベントを企画するなど、手軽に海について考える機会を提供してもよいでしょう。
企業の施策
MSC認証の取得
MSC認証(Marine Stewardship Council認証)とは、持続可能な漁業を推進する国際的な認証制度です。
認証制度と水産エコラベルを通して適切な漁業をしていると内外にアピールできる制度であり、環境保護や資源管理に関する厳格な基準を満たしていることが示されます。
例えば、厳しい漁獲量に従って捕獲され、かつ他の種にも配慮した漁獲法を使って生産されたツナ缶には、「MSC認証マーク」がついています。 その他の商品や海洋資源を使う外食チェーンなども、MSC認証を取得していることがあるため、スーパーや外出先でチェックしてみましょう。
プラスチックごみの削減・リサイクル
企業によるプラスチックごみの削減・リサイクルは、企業の社会的責任(CSR)やサステナビリティ戦略として導入されることがあります。
環境への配慮を示す重要な手段となり、企業のブランドイメージや競争力にも良い影響を与えることから、積極的に取り組むケースも増えました。
例えば、プラスチックを使ったパッケージの軽量化・サイズ縮小や代替素材の採用などが挙げられます。 シャンプーや洗剤で使うリフィル(詰め替え)商品の訴求、自社独自のリサイクルシステム構築なども事例として挙げられます。
官民連携プロジェクトへの参画
海の絶滅危惧種を守るための施策として、官民連携プロジェクトへの参画は非常に重要です。
実際に海へ出ることが多い漁業の担い手や、海中トンネルの建築業者、海に関するデータ計測機器のメーカーなど、海に関係する企業は多数あります。
政府による強力なルールづくりと、民間による多大なノウハウが組み合わされば、海洋生物の研究や監視も進みやすくなるでしょう。 国の枠組みを超えて国際的な協力となるケースも多く、コラボレーションによる効果も期待できます。
個人の取り組み
海の清掃ボランティア・ポイ捨てパトロール
海の清掃ボランティアやポイ捨てパトロールに参加し、できることからコツコツと海の自然を守るのも非常に効果的です。
海洋に捨てられたプラスチックゴミを海の生き物が誤って食べてしまい、窒息やケガの原因となるケースは少なくありません。
汚染された環境が改善されることで、自然の生態系が本来の姿に戻り、絶滅危惧種やその他の海洋生物が生息しやすい環境が作られます。
なお、ボランティア団体への参加の他、海で実施される単発のエコイベントや観光業者主催のエコツーリズムに参加しながらできることを初めてみるのも大切です。 無理のない範囲で続けつつ、環境保護の意識を広げていきましょう。
地産地消やフードロス削減への協力
地産地消やフードロス削減を意識した商品購入をすることも、持続可能な漁業の支援につながります。
例えば、地元漁業が長期的に維持可能な方法で魚を獲るようになれば、過剰な漁獲や乱獲を減らせます。
地産地消は地元漁業の支援にも繋がり、レッドリストに載る絶滅危惧種の海洋生物を守るための一助となるでしょう。
また、地元産の食品を消費することは輸送距離の短縮にも貢献し、CO₂排出量を削減することにもつながります。 フードバンクやフードロスに向けた割引商品の購入なども検討し、生活に取り入れてみましょう。
ルールの順守・学習
「海にポイ捨てしない」「海の生き物を勝手に持ち帰らない」など、基本的なルールの順守・学習をすることもポイントです。
法律で定められているルールを守ることはもちろん、倫理的なルールやマナーを守るのも、立派な海洋保全活動の一部です。
また、海洋保護に関する教育プログラムやワークショップに参加したり、サステナブルな生産方法を採用している企業を探してみたりするのも効果的です。 学習により知識が増えれば、海への視点も増えていくかもしれません。
企業事例|海の環境を守る持続可能な施策3選
最後に、海の環境を守る持続可能な施策に取り組んでいる企業事例を紹介します。以下を参考に、自社または自分でできることを模索してみましょう。
商船三井|バラスト水処理装置の開発
商船三井は、海洋環境保全の一環としてバラスト水処理装置の開発と導入に積極的に取り組んでいます。
バラスト水は船舶の安定性を保つために積み込まれる海水のことであり、異なる海域間での移動により、水生生物が越境する危険性をはらんでいます。
生態系への影響が懸念されることから、商船三井ではバラスト水処理装置の開発に着手し、グループ全保有船への搭載を目指すこととなりました。
その他、船内廃棄物の分別回収やプラスチック類はそのまま陸揚げする等の取り組みも開始し、ゴミの適切処理に貢献しています。 大手海運会社ならではの取り組みであり、日本近海だけでなく世界の海洋保全にも役立つ取り組みとして注目されました。
パナソニック|サステナブル・シーフードの利用
パナソニックでは、社員食堂のメニューにサステナブル・シーフードを導入しています。
サステナブル・シーフードとは、将来も安定して海の恵みを享受できるよう、環境・社会・経済に配慮して生産された水産物のことです。
持続可能な漁業や養殖を支援するMSC認証・ASC認証を受けた水産物を積極的に取り入れ、海の豊かさを守る活動に貢献するようになりました。
直接海で活動しない企業でも、海洋保全を目的とした施策を導入することは可能です。社員の意識改革と行動変容にもつながるため、積極的に検討してみましょう。
味の素|海洋プラスチックの削減に向けたリサイクル活動
味の素グループは、プラスチックの使用量削減、リサイクル可能な素材への転換、回収・分別・リサイクルの仕組みづくりなどを通じて、環境問題に取り組んでいます。 例えば、和風だしのパッケージを簡易化したことで、プラスチック廃棄量を年間12トン削減することができています。
他にも、マヨネーズのボトルリサイクルに取り組むことで、年間1,300トンのプラスチックをリサイクル可能素材へ変換するようになりました。 消費者への意識づけを直接できる取り組みでもあり、今後の活動の広がりに期待が集まっています。
まとめ
海洋生物の多くは、過剰な漁業活動や気候変動、環境汚染などによって危険にさらされています。 絶滅危惧種は動植物の絶滅危惧状況を評価し、保護の必要性を示す重要な指標として活用されているので、一度覗いてみてはいかがでしょうか。 政府・企業だけでなく個人としてもできる海洋保全活動に取り組み、持続可能な未来への第一歩を踏み出す必要がありそうです。
【参考】
IUCN日本委員会|IUCNレッドリスト
商船三井|海洋環境保全・生物多様性保護
パナソニック ホールディングス|『海を守る選択!』サステナブル・シーフードを社員食堂から拡げる
Channel Panasonic-Official|海洋資源の保護を社員食堂から始めよう!~サステナブル・シーフードの取り組み~
味の素株式会社|味の素グループのプラスチック廃棄物削減の取り組み