ボランティア活動に興味はあっても何から始めていいかわからない!そんな方にぜひ読んでいただきたい「ボランティア活動の基礎知識」をまとめました。
そもそもボランティアとは何か、ボランティアの歴史や活動の種類、自然災害のボランティアと環境保全のボランティアの違いや参加する前に知っておきたいことなど、この記事を読んでボランティアデビューに備えましょう。
目次
ボランティア活動をする前に知っておきたいこと
ボランティア活動というと、地震や河川の氾濫などの「自然災害」でのボランティアを思い浮かべる方が多いと思います。一方で森林などの整備や海岸でのゴミ拾いなど、「環境保全」のボランティア活動も近年では気軽に参加できる社会貢献活動として注目されています。
この項目ではそもそもボランティア活動とは何なのか、ボランティアの4つの原則やボランティアの種類、日本における歴史を紹介します。
「ボランティア」って何?|ボランティア4原則
ボランティアとは「自発的に他者や社会のために無償で行う活動、またはその活動を行う人」のことを言います。元々は英語の「volunteer:志願兵」からきており、さらに語源をたどると「自分がしたいという意志を大切に、喜んでする」という意味があるそうです。
日本では「奉仕活動」と訳されたことから、ボランティア活動の多くは無償で献身的に行うものや善意で行われるものと受け取られてきました。しかし本来のボランティアの真意はそこではなく「自分の意志によって行う」ことにあります。誰かに強制的にやらされる活動はそもそもボランティアではなく、その活動定義は以下の4つの原則で成り立っています。
1.自分の意志で行う「自主性・主体性」
ボランティアで一番大切とされるのが「自らの意志で行っている」ということです。ボランティア活動は他人から強制されたり、義務で行うものではなく、参加する本人が「自主性や主体性を持ってする活動」といえます。
2.人と支え合い学ぶ「社会性・連帯性」
ボランティア活動は、社会における様々な問題や課題の解決に向けて「多くの人と助け合いながら行う活動」です。そのため社会性や連帯性が必要とされています。困っている人に寄り添い一緒に考えたり、共に活動をする仲間と協力して行動することが求められています。
3.報酬を目的としない「無償性・無給性」
ボランティア活動は、困っている地域や人を「助けたい」「貢献したい」という意志(気持ち)が優先されるため、活動に対する報酬や賃金を目的としないことが前提です。報酬がなくても活動を通して人と出会い、問題解決に向けて取り組むことを大切にしています。
4.自由な発想で取り組む「先駆性・創造性」
上記の3つに加わったのが「先駆性・創造性」です。目の前の課題について、何が必要で改善するためにはどう取り組めばいいか。従来のやり方にばかりとらわれずに自由な発想やアイデアを大切にしながら、新しいボランティアの形を創り出すことも大切とされています。
ボランティアにはどんな種類がある?
この項目ではボランティア活動の種類として「自然災害ボランティア」と「環境保全ボランティア」の2つに大別してそれぞれの特徴を紹介します。自然災害ボランティアは地震や水害などが発生した時に現地で活動を行うボランティアで、阪神大震災をきっかけに広まりました。
一方で近年は環境問題解決への意識の高まりから、森林保全や海の保全など、環境保全のボランティア活動が注目を浴びています。
自然災害ボランティア|専門家や経験者が中心
世界でも類を見ない災害多発国である日本は、これまで多くの地震や異常気象による豪雨災害、土砂災害や火山の噴火などに見舞われてきました。こうした自然災害が発生した際にいち早く現地に駆けつけ、医療活動や救援・捜索活動、また支援物資の調達や各地の避難所の運営などに携わるのが自然災害ボランティアの人々です。
災害ボランティアセンターやNGO・NPO、災害救助活動を支援する一般企業や団体などと連携しながら、被災した自治体や地域を支える活動を長期間に渡り行っています。
自然災害ボランティアの場合、災害発生直後は道路やライフラインなどの寸断や、現地の受け入れ体制が整わないなどの理由やより高い専門性が求められるため、自然災害の現場で活動経験のある経験者を募ることが多いようです。
そのため他のボランティア活動と比べ気軽に参加できるとは言い難く、ボランティア初心者には特にハードルが高い活動といえます。
環境保全ボランティア|誰でも参加可能な場合も
環境関連のボランティア活動は、森林保全や海・川・砂浜のゴミ拾いなどの清掃活動、サンゴやウミガメの保護活動など自然環境を保全するものから、ゴミの分別や地域のゴミ拾い、リユース、リサイクルなど3Rに関するものまで多岐に渡っています。
参加方法も1日で終わるイベント参加型が主流で、ある程度の人数が必要とされるため、友人や家族と一緒に参加できるなど、初めてのボランティア活動として取り組みやすいのも特徴です。
日本におけるボランティア活動の歴史
日本の「ボランティア元年」は阪神・淡路大震災
日本での自然災害ボランティア活動の歴史を紐解くと、本格的な活動が始まったのは、1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災が起点だといわれています。
もちろんそれ以前にも自然災害に対する救済活動や支援はありましたが、阪神・淡路大震災では、倒壊した阪神高速道路や地震後に起こった火災の映像をテレビで見た日本全国の有志が、老若男女を問わず「個人の意志」で立ち上がりました。これが自然災害支援ボランティアの始まりとされ「ボランティア元年」と呼ばれるようになりました。
ただ当時は活動を調整する仕組み(コーディネーション機能)がなかったため、人員の配置や支援物資の仕訳など、各地の避難所では大きな混乱が生じたそうです。その後はそれまでの教訓を踏まえ、福祉にまつわる活動を行う社会福祉協議会によって、ボランティアを受け入れる窓口となる「災害ボランティアセンター」が各地で設立されていきました。
2011年3月11日に起きた東日本大震災では、国内観測史上最大規模の大津波が発生するなど被害が甚大で、ボランティアの受け入れを災害ボランティアセンターで調整することに限界が生じたといわれています。その代わりにNGOやNPO、企業などが被災者のニーズを掘り起こし専門性を持って支援を行う「中間支援機能」の役割が確立されたといわれています。
環境保全ボランティアの始まりは森づくり活動
環境保全ボランティアの1つに挙げられるのが「森づくり活動」と呼ばれる、森林を整備する非営利の活動です。日本における一般市民が参加する森林づくりの原点は、戦後に行なわれた「国土緑化運動」とされていますが、市民が自発的に環境保全に立ち上がった事例では1974年に富山県で始まった「草刈り十字軍」の活動が挙げられます。
当時、富山県の造林地で下草刈り作業を軽減する目的で除草剤の空中散布が計画され、それに反対する市民が対案として全国の学生を中心としたボランティアによる草刈りを行いました。この活動は参加した学生たちの環境意識を高め、翌年には富山県が支援金を出すなど活動が継続化。1997年には『草刈り十字軍』というタイトルで映画化もされました。
「草刈り十字軍」の活動自体は、除草剤の改良や参加者の減少などで2016年に幕を閉じましたが、43年間に及ぶ活動期間に述べ2万人以上の参加者を数え、「森林ボランティアの先駆け」として、その後の自然保護活動に影響を与えたといわれています。
こうした市民による森づくりの活動は全国へと広がり、1997年には277だった活動団体が2012年には3000を超えるなど、森林ボランティアの輪は確実に広がっています。
一方、海の環境を守る活動では、海岸や砂浜の清掃が挙げられます。「ビーチクリーン」と呼ばれる活動が実施されたのは1985年、アメリカ・サンフランシスコに本部のある海洋自然保護センターが最初といわれています。
その後、日本では1991年に海洋自然保護センターの呼びかけで海の清掃・保全活動がスタート。以来30年以上に渡って、浜辺のゴミ拾いや清掃活動をはじめ、生態系の調査・保護など様々な海の環境保全活動が続けられています。
参加してみたい!環境がテーマのボランティア
ここまでボランティアの定義や歴史、自然災害ボランティアと環境保全ボランティアの違いについて紹介しました。何かしらのボランティア活動で社会貢献をしたいと考えているのなら、まずは気軽に参加できそうな環境がテーマのボランティア活動から始めてみるのもおすすめです。この項目ではさらに詳しく環境保全のボランティア活動を紹介します。
テーマ・目的別 環境保全ボランティア
地球温暖化防止がテーマのボランティア
地球温暖化防止を目的にしたボランティアの1つに「森林保全活動」が挙げられます。脱炭素(カーボンオフセット)の見地からも、地球温暖化の原因といわれるCO2などの温室効果ガスの排出量を削減するために森林保全活動は絶対に欠かせない取り組みです。
こうした活動がボランティアによって始まったのは、1970年〜1990年代にかけてのこと。この間、安価な輸入木材が流通したことで国内の林業が低迷し、計画的な間伐(手入れ)をせずに人工林が放置された結果、あちこちの山や森で木の生育が遅れたり、土壌が流出するなど森の保水機能の低下が問題となっていきました。
森林の保全活動は1990年代頃には「森林ボランティア活動」と称され、全国的なネットワークへと発展します。2000年代には関係省庁や自治体などがこうした活動を支援したことから、森づくりに取り組む団体が増え、2021年の時点で4000を超える団体が全国各地で森林保全活動に取り組んでいます。
3Rなどゴミ削減がテーマのボランティア
海や山などに遠出をしなくても、自分の住む地域や公園など、身近な場所で活動できるのが清掃活動や3R(リサイクル・リユース・リデュース)をテーマにしたイベント型のボランティアです。地域の自治会や町内会で川や用水路、公園などを清掃したり、市や区、NPOなどが開催するゴミ拾いイベントや美化活動、不用品を交換・販売するフリーマーケットの運営を手伝うなど、家族や友人で参加することで、ゴミ削減の啓蒙活動に貢献できます。
生物多様性の保護がテーマのボランティア
環境破壊によって生き物の数は年々減少しています。こうした生き物を救うために、個体数を調査したり、産卵や生育を見守ったり、生き物の生息域となる海辺や川、雑木林や沼地、水田などの環境を保全する生物多様性がテーマのボランティアが注目されています。
個体調査や見守りは専門的な知見や経験が問われることもあるので、初心者はゴミ拾いや草地の整備などから始めるのもおすすめです。主催する団体などと良好な関係を作りながら徐々に経験を積むなど、長期的な展望で参加するとよいでしょう。
環境農業系ボランティア
日本はほとんどの食糧を輸入に頼っているため、地球温暖化防止(カーボンオフセット)や世界的な水不足の問題など、環境問題解決の視点からも、国産農業を応援することは大切なアクションといえます。最近では農業生産者の高齢化から、将来的な担い手不足も気になるところです。
農業系のボランティアは「援農(えんのう)」と呼ばれ、近隣の生産者の農作業を手伝う簡単なものから、将来的に農業をはじめてみたい人に向けた体験型のイベントなど多種多様です。こうしたボランティアに参加したい場合は、農林水産省の関連団体やJA(農業共同組合)、各都道府県のウェブサイトなどで、手助けを必要としている生産者や農業団体にアクセスできます。
公益財団法人 東京都農林水産振興財団|とうきょう援農ボランティア
環境教育ボランティア
環境保全のボランティアは、海や山でアクティブに活動するイメージがありますが、その中には自然観察会や里山保全、ゴミの分別や減量指導など「環境学習」を行うボランティア活動があります。講義やセミナー、ワークショップが中心なので、ゴミ拾いや森林保全など海辺や山を歩き回る活動が体力的に難しい人も参加できるのが特徴です。
学習内容は各団体で異なりますが、環境問題をテーマにした紙芝居の上演や海や山で採集した素材を使ったワークショップの運営など、専門的な資格や知識がなくても応募できる内容から、〇〇インストラクターや〇〇士などの資格が必要なものまで幅広く存在しています。
募集要項に関しては、気になる活動や団体のボランティア募集のサイトをチェックしてみてください。都道府県、市町村などでは環境学習の講師を募集していることがあるので、将来的に何らかの資格を取得して、本格的にはじめたい人はこの記事の後半の「ボランティア活動|登録制度や資格って?」をあわせて読んでチャレンジしてみてください。
どんな人が参加しているの? 参加資格・条件など
環境保全のボランティアに参加している人は、老若男女様々です。子どもと一緒に家族で参加できるものから、一人参加や中学生・高校生・大学生が対象のものなど、募集しているボランティアごとに「誰でも参加OK」とか「大学生対象」など、対象者や年齢などが明記されているので、それを目安に応募しましょう。
現地までの交通費は自己負担なので、家から比較的近い開催場所を選ぶのが鉄則です。環境問題の視点から移動する際には自家用車の使用を避け、電車やバスなどの公共交通機関を利用するように促す団体もあります。
また食事や飲み物も自分で用意しなければなりません。その他、ケガや体調不良で途中で帰る場合など不測の事態にも備え、募集要項をよく読んで「よくある質問」を確認したり、事務局へ事前にメールで問い合わせておきましょう。
ボランティアに求められる能力とは
一般的にボランティアに向いている人の特徴を検索すると「コミュニケーション能力がある」「チームワークを大切にする」などが上位として出てきます。もちろん両方とも大切な能力といえますが、コミュニケーションの方法などは人それぞれ。皆同じものさしで測るのではなく、その人本来の持ち味も加味されるべきでしょう。
チームワークを大切にするということは、他人の意見を尊重し共感する、和を乱さずに協力することが重要です。国際的なNGO団体のボランティア向けガイドブックには、多様性の時代を鑑み、ボランティアに参加する個々人が、年齢や性別、国籍、人種、肌の色や民族的・宗教的背景、配偶者や子どもの有無などで差別されたり、差別してはならないと明記しています。
ボランティアに参加する際は、こうした差別意識や偏見を持たないという考え方も必要な能力の1つといえるでしょう。
また先に紹介した通り「ボランティアとは自発的に他者や社会のために無償で行う活動、またはその活動を行う人」ということで、自己犠牲になりすぎたり、参加している意義を見出せない活動は見直すことも必要です。ボランティア活動を通じて適度に自分自身のスキルアップや健康管理にも気を配るのも必要とされる能力(資質)といえます。
ボランティア活動のメリット・デメリット
ここではボランティアに参加するメリット・デメリットを紹介します。メリットとしては、次の5つが挙げられますが、前向きでいいことばかりをインプットするのではなく、あえてデメリットについても事前に把握して、後悔のないボランティア活動を始めましょう。
ボランティア活動・メリット
1.社会貢献を実感できる
環境問題に関心の高い方なら、すでに家庭ゴミの削減や節電など、何らかのアクションを起こしていると思いますが、ボランティア活動に参加することでより一層、活動と目的が明確になり「私でも環境問題解決の一歩に貢献できている」という実感が持てるでしょう。
2.幅広い人たちとつながる
ボランティア活動には老若男女、実に様々な人たちが関わっています。年齢や立場が違っても、環境問題の解決に向けて少しでも貢献したいという思いは皆同じです。こうした幅広い人たちとのつながりができることで視野が広がり、コミュニケーション能力が高まるでしょう。
3.知識や経験が深まる
ボランティア活動に参加すると、それまでネットやテレビのニュースでしか触れてこなかった環境問題が、より身近に感じられるはずです。問題解決のために専門家の意見を聞いたり、仲間と一緒に問題解決に取り組むことで、自分自身の知識もアップデートできます。
4.自らの経験や成長につながる
日常生活では得られない体験をすることで、参加者自身の成長につながることもあるでしょう。NPOやNGOなど大きな組織の活動の進め方やマネージメントを実際に体験することで、学生だけでなく社会人でも何らかの気づきや学びが得られると思います。
5.就活や入試のアピールポイントに
環境問題解決の取り組みは、企業や団体、学校などでももはや避けて通れない共通の課題です。ボランティア活動で得られた経験や知識を、将来的に就職活動や入学試験の場でアピールすることがごく当たり前になれば、環境問題解決へさらに進むことができるでしょう。
ボランティア活動・デメリット
1.交通費など自己負担がある
イベント型のボランティアは、山林や海辺など都市部から離れた場所で行われることがほとんどです。こうした活動に参加する場合は交通費や宿泊費は自分自身で持つことになるので、あらかじめどのくらいの費用がかかるかなど、十分に調べてから参加しましょう。
2.時間を要する
ボランティア活動は多くの時間を無償で提供する活動です。睡眠時間を削ったり、目的地まで所要時間がかかりすぎるなど無理は禁物です。自分の日常生活に必要な時間を確保してから、初心者は1日2時間など時間を決めて、できるだけ近い場所から参加してみましょう。
3.ケガや危険が伴う
野外での活動は思わぬケガや危険が伴います。主催者側がきちんと対策をしているか事前に確認したり、参加者自身がイベント=非日常と肝に銘じ、自分や子どものケガや発熱などを想定して応急処置や保険証を携帯するなど「不測の事態」に備えておきましょう。この記事の後半に、ボランティア保険についても紹介しているので併せてチェックしてください。
国際ボランティアとは
ここまで主に国内での活動を想定したボランティアについてご紹介しましたが、ボランティアには海外での活動を想定した「国際ボランティア」があります。主に発展途上国の支援に現地へ赴く、国連(UN)やJICA(国際協力機構)などが募集するボランティア活動です。
ある程度の語学力と専門性の高い職務経験が必要とされ、渡航費用や現地での生活費が支給されることから、有償のボランティア活動に分類されます。
国際ボランティアの参加資格|国連とJICAの場合
国連ボランティア(UNV)の場合は登録制となり、応募資格(年齢)は27歳以上。特に上限は設定していないとのことですが、開発途上地域の厳しい自然条件や異文化環境に適応できる、心身ともに健康であることが不可欠とされています。一方のJICAは「JICA海外協力隊」という名称で、日本国籍を持つ20歳から69歳までが対象者になります。
国際ボランティアに応募するには、語学力はもちろんのこと、専門的な職務経験が必須です。対象となる職種はウェブサイトで公開されています。国連では「気候変動」や「水衛生」に関連する職種もあります。
派遣期間は1〜2年(JICAは原則2年間)、双方ともに必要な渡航経費や準備金、現地での生活費などは負担してもらえます。ここでは参考として国連ボランティアとJICAの社会人を対象とした国際ボランティアの参加資格をリンクします。
国連ボランティア計画(UNV)|国連ボランティアの応募資格と応募方法
JICA海外協力隊|応募サポートページ
ボランティアに参加するまでの4ステップ
ここまで様々なボランティアについて取り上げましたが、いかがでしたか?ボランティア活動の種類も形も様々ですが、この項目ではボランティアに参加するために必要な4つのステップを紹介します。
これらはどんなボランティアにも共通して当てはまることですが、今回はボランティア活動が初めてという方に向けて、比較的参加しやすい「環境保全のボランティア」を想定してみました。
Step1.自分にできること 得意分野に応募する
ボランティアは基本的に無償の活動になるので、楽しく参加するために、まずは自分の好きなことやできること、得意な分野の活動に応募しましょう。例えば海が好きだったり、砂浜などでよく下を向いて貝殻などを拾うことが好きという方は、手始めに海岸でのゴミ拾いなど、海の環境保全活動へ参加するのもいいでしょう。
逆に虫が苦手だったり、花粉症などのアレルギー症状がある場合は、里山や森林などでのボランティア活動は難しいかもしれません。この他、子どもが好きだったり、体を動かすのが得意だったり、文章が書ける、コツコツとした事務作業が得意など、自分の特性を見ながら探してみてください。
Step2.活動前に学習したりイベントに参加する
長期的なスタンスでボランティア活動をしたい場合、その分野に関する事前学習をおすすめします。関連する団体のウェブサイトを読み込んで、必要な用語や活動の流れを把握するのはもちろんのこと、体験者の話を読んだり、その活動に参加することの意義なども整理しておくとスムーズです。
また単発のイベントに複数回参加するなどして、本当に自分に合っているか、参加団体のやっていることに賛同できるかなど確認しておきましょう。
Step3.募集要項をよく読んでから応募する
参加を考えている団体などの募集要項をよく読んでから応募しましょう。活動の内容が自分とマッチしているか、所要時間はもちろんのこと、何か起こった場合の対応など事前に募集のウェブサイトを確認したり、明記されていない場合は主催者にメールや電話で問い合わせるなども一考です。
近年は善意を悪用した詐欺なども横行しています。登録料がいる、必要以上の個人情報を記入させられるなど、怪しい点があれば応募はやめましょう。初心者は市区町村のホームページや広報紙のボランティア募集をチェックしたり、経験者と一緒に応募するなど、より慎重に後悔のないボランティアデビューを目指してください。
Step4.ルールに沿って行動し、無理はしない
環境保全のボランティア活動は野外活動がほとんどなので、当日の天候によって服装を調節したり、レインコートや長靴、軍手などどこまで自分自身が準備しなくてはならないか募集要項を確認して、主催者側にない備えや個人的に必要な物は自分で準備しましょう。会場についたら、スタッフの指示をよく聞いて、決められたルールにそって行動します。イベント型のボランティアでは、参加人数によっては軽作業などから人員が埋まってしまい、必ずしも希望の作業につけないことも想定されます。
もしその上のレベルの作業をやってほしいと言われた場合でも、経験値や体力的に難しいと感じたら、無理をせず主催者側へ伝えましょう。また作業中に何か起こった場合は、リーダーへ確認や報告は必須です。
海辺や山中など、勝手な行動は時に命取りになるので、絶対に控えましょう。もしそうしたことをする人がいた場合は、作業中はもちろんイベント終了後であっても匿名で報告するなど、活動を円滑に続けるための協力も大切です。また当日は必要以上の金品はなるべく持たず、盗難騒ぎなどに巻き込まれないように注意しましょう。
ボランティア相談・募集窓口
ここでは実際に環境保全のボランティアの相談や募集の窓口について紹介します。特に初めて参加する場合は、できるだけ最寄りの市区町村のウェブサイトや広報紙などから探したり、著名な団体や地域の社会福祉協議会など、信頼のおけるボランティア専門のポータルサイトなどをチェックすることをおすすめします。
先に紹介した「テーマ・目的別環境保全ボランティア」の項目で、主な公共機関などのサイトも併せてチェックしてみてください。
東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)
東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)は、東京都の社会福祉協議会が運営するボランティア・市民活動の情報サイトです。ゴミ拾いなどの環境保全活動の他、特別支援学校の行事応援や保護ねこ活動など福祉関係や国際基金などの寄付などの情報もあるので、自分に合ったボランティア活動や支援の形を見つけることができます。
ボランティア・市民活動の総合情報サイト「ボラ市民ウェブ」|情報を探す(ボランティア募集)
ボランティア情報専門サイト
全国で展開しているボランティア活動やその内容など、ボランティア募集の専門サイトから情報を得たり、直接応募することができます。閲覧する際はその情報源が確かなものかどうかも重要です。
またサイトを始めてからの期間や募集した活動の実行性、募集をしているNGOや企業・団体などとの関係性も大切なチェックポイントです。ここでは参考として「アクティボ(activo)」と「ぼ活!日本財団ボラセン」を紹介します。
・アクティボ(activo)
2013年1月にサービスを開始したボランティア募集サイトで、当初は現・代表取締役の小澤氏を始めとする学生チームにより学生が対象のボランティア募集サイトとして始まりました。NPOや社会的企業、団体を地道に訪ねながらサイトを改良するなどして利用者を増やし、2017年ボランティア情報を全世代向けに拡大。
2018年には月間100万PV(ページビュー)を達成し、コロナ禍ではオンラインで活動できるボランティア支援プログラムを実施するなど、ボランティア情報のプラットフォームとして多くの情報を扱っています。エリアやテーマから探し、サイトから直接応募できるのも便利です。
・ぼ活!日本財団ボラセン
公益財団法人日本財団ボランティアセンター(日本財団ボラセン)の運営するボランティアのプラットフォームで、気軽に参加できるゴミ拾いから、マラソン大会の運営、万博などの大きなイベントのボランティアまで幅広く募集情報を掲載しています。
日本財団は地方自治体が主催するボートレースの売上金を元に、国内外の社会問題解決に取り組むNPO事業への資金助成をする民間の団体です。日本財団ボラセンではサイトからボランティア活動に直接申し込める他、セミナーやイベントも多数紹介しています。
ボランティア保険について
ボランティア保険とは、ボランティア活動中のリスクに備えるための保険で、社会福祉協議会が窓口となる「ボランティア活動保険」が代表的です。個人またはボランティアグループが加入対象となり、ボランティア参加者本人を被保険者として、全国社会福祉協議会が一括して、損害保険会社と契約をします。ボランティア参加者自身が国内での活動中にケガをした場合の「傷害保険」と、第三者の身体や財物に損害を与えたことによる法律上の「賠償責任保険」がセットになっていています。
保険期間は4月1日から翌年3月31日までの1年間。保証内容によって数百円から1000円台までのプランがあり、比較的低額で加入できます。「ボランティア活動保険」の場合、補償対象となるボランティア活動は、所属するボランティア団体の会則に則って企画立案された活動か、社会福祉協議会に届け出のあった活動、または委託を受けた活動など細かい規定があります。
学校の授業の一環で行われるボランティア活動や野焼き、チェーンソーなどを使用する森林ボランティアなどは非対象となることがあるので、参加する際に保険でカバーされている活動かどうかも確認が必要です。
ボランティア参加|登録制度や資格って?
ボランティア活動を様々な視点からお伝えしてきましたが、最後にこれらの環境ボランティアに参加する際、登録しておくと役立つかもしれない制度や資格について紹介します。無事にボランティアデビューを果たし、もっと深く活動に貢献したいと思った時に、こうしたより専門的な登録制度や資格の存在を知っておくとよいでしょう。
環境カウンセラー
環境省が実施している「環境カウンセラー登録制度」で、市民活動や事業活動を通して環境保全に関して豊富な経験や専門知識を持つなど、一定の要件を備えている人を対象に、申請に基づき書面審査や面接審査を経て、事業部門と市民部門のそれぞれで教育活動や啓蒙活動、地域の環境保全活動などへの助言など行える資格をいいます。長年の活動で培った知識や技術などを広く知らせたり、またそうした技能を持つ環境カウンセラーを地域のコミュニティ活動に招へいすることもできます。
自然観察指導員
自然観察指導員とは、地域で自然観察会を開き、自然のしくみの面白さを伝えたり、自然を守るための仲間をつくるためのボランティアリーダーのことをいいます。特殊な技能の証明や地位、立場を保証するものではなく「自然のために行動したい」という自発的な意志を持って登録する制度になります。
指導員登録自体は1年ごとの更新制で、有料の指導員講習会に参加し、修了・登録すれば誰でもなることができます。就職活動の直接の助けにはならないかもしれませんが、各地のビジターセンターや国立公園でのパークレンジャー、動植物園や水族館の職員、公園管理者、観光ガイドや企業のCSR担当者などの受講・登録も増えているそうです。
森林インストラクター
森林インストラクターとは、一般社団法人全国森林インストラクター協会が行う資格制度で、森林を利用する一般の人に対して森林や林業に関する知識を伝えるとともに、森林内での野外活動の指導を行う人をいいます。一次試験と二次試験があり、合格率は約30%、難易度はやや高めといわれています。20歳以上なら誰でも受験でき、資格取得後は森のプロフェッショナルとして、森林ガイドに携わったり、小中学生を対象にした林間学校や自然教室の指導員などとして活躍しています。
ビオトープ管理士
ビオトープ管理士とは、生き物や法制度に関する知識や技術などをはじめ、倫理観、評価力や応用力といった幅広い視点で、環境保全に関する知識を有する技術者とその資格をいいます。自然と伝統が共存する持続可能な町作りに貢献するべく、環境教育事業などを担います。1級と2級があり、2級は誰でも受験が可能です。
現在、全国で1万5千人の資格登録があり、ビオトープ管理士だけが扱えるビオトープ事業の増加に伴い、都市や地域の計画、土木造園、農業、環境調査などのあらゆる業種やサービスで、生物多様性やSDGsといった環境問題に関する分野で活躍の幅を広げています。
まとめ
いかがでしたか?この記事ではそもそもボランティアとは何かから始まり、ボランティア活動について参加する前に知っておきたいことや、その種類や活動の歴史、そしてこれからボランティアデビューする人向けに、主に環境保全のボランティアについて紹介しました。
ボランティアといっても本当に形も参加方法も様々ですが、誰かに言われたからではなく、自ら進んで参加したいという「意志」が一番大切だということがわかったと思います。皆さんはどんなボランティア活動から始めますか? 気になった活動について、ぜひ家族や友人とシェアして、2025年をあなたにとっての「ボランティア元年」としてください。
(参考1)ぼ活!日本財団ボラセン|ボランティアの基礎知識
(参考2)政府広報オンライン|被災地を応援したい方へ 災害ボランティアの始め方
(参考3)森ナビ・ネット|市民による森づくり活動の歴史
(参考4)林野庁|森林ボランティアの現状
(参考5)国際環境NGO グリーンピース・ジャパン|ボランティア ルール&ボリシーガイドブック(PDF)
(参考6)環境省|環境カウンセラーとは
(参考7)日本自然保護協会|自然観察指導員とは
(参考8)一般社団法人 全国森林レクリエーション協会|資格試験の概要
(参考9)環境省|ビオトープ管理士資格試験