環境問題の解決に向けて、私たちが日常で取り組めることとは?一歩進んだアクション・実際に取り組んでいる人の例もご紹介!
地球レベルの大きな問題の原因の一つは私たち一人ひとりの暮らし。視点を変えれば、私たちが環境を守る行動を選ぶことで、環境問題への対策になることも。
地球上で今起こっている環境問題とは?
酸性雨やオゾン層の破壊、生物多様性の減少、砂漠化、大気汚染、水質汚染、ごみ問題、化学物質による健康被害…など、地球上では様々な環境問題が起こったり懸念されたりしています。中でも私たちの生活との関わりが深い、地球温暖化と海洋汚染について解説します。
地球温暖化
環境問題の中心になっているとも言える地球温暖化。私たちの住む地上は、太陽からのエネルギーで温められています。温室効果ガスの濃度が上がると地上から放出された熱が地上付近に留まるようになり、地上の温度が上がるという仕組みです。
気温を上昇させる温室効果ガスにはメタン(CH₄)、一酸化二窒素(亜酸化窒素、N₂O)、フロン類がありますが、最も知られているのが二酸化炭素(CO2)ではないでしょうか?18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命を経て、私たちは石油や石炭からエネルギーを得るようになりました。これらの化石燃料を燃やした結果、大気中の二酸化炭素濃度は産業革命前と比較して40%も増加したとされています。
気温が上昇することによって真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数が増えており、日中の最高気温が熱中症などの危険のある高さになるなど、私たちの身近に起こる変化を実感しているはずです。地球全体に目を向けてみると、海面水位の上昇によって沿岸地域などに住む人々の暮らしが脅かされたり、海洋の酸性化によって海洋生態系への影響が懸念されたりしています。
海洋汚染
海を汚しているものには、河川に流れ込む工場や家庭からの汚染物、船舶の運行で排出される油、地上や海上で投棄されるごみなどが考えられます。海洋に流れ込むごみの中で最も注目されているものが、海洋プラスチックごみです。
海洋プラスチックごみの主な被害者は海で暮らす生き物たち。ビニール袋などのプラスチックごみそのものや、プラスチックごみが小さな破片となったマイクロプラスチックを、エサと間違えて食べてしまい、死んでしまった事例は世界中で報告されています。
プラスチックが私たちの生活を支える便利なものであることや、人間に直接的な影響が現時点ではあまりないことから、海洋汚染を深刻に受け止めていない人もいるかもしれません。しかし、食物連鎖を通して有害物質を吸着したマイクロプラスチックが、人間の体内で健康被害を引き起こす可能性も指摘されています。また、地球で生きていくうえで「人間だけが便利な生活を送れれば良い」という考えが正しいのかどうか、しっかりと考える必要があります。
環境問題を考える前に…
東京農工大学の小瀬亮太准教授の考えでは、環境負荷を考える時には「リスク論」と「予防の原則」という大きく2つの立ち位置があるそう。リスク論が「これだけ流出したら人体にこれだけの被害が出る可能性がある」というエビデンスベースの議論なのに対し、予防の原則は「取り返しのつかないことになる前に、できる限りリスクをゼロにしていこう」というスタンス。科学的な根拠の取りようがない、地球規模で時間軸が長い問題を扱うときは、予防の原則に立つべきかもしれません。
環境問題対策として今日から個人でできること
地球温暖化や海洋汚染の問題は、人間がこれまで通りの生活を送っているとますます悪くなっていく一方ですが、私たちが生活の中でできることはたくさんあります。簡単に取り組めるだけではなく、お金の節約になったり、日々のストレスを軽減したりと、環境だけではなく自分にも嬉しいアクションも!
早寝早起きを心がける
朝型の生活を目指して夜は早く寝ることで、照明やエアコン、テレビなどの家電製品を利用する時間が減り、夜間のエネルギー使用量を抑えることができます。特に真夏は夜中よりも朝の方が過ごしやすい気温になることも多く、明るくなる時間も早いので、朝に活動するのがおすすめ。バタバタする朝に余裕ができることで、気持ちよく1日のスタートが切れるはずです。
水を無駄にしない
洗濯に前日のお風呂の残り湯を使う、歯磨きやシャワー、食器洗いの時に水を出しっぱなしにしない、など節水を心がけることで、限りある水資源を大切にし、水の運搬にかかるエネルギーも節約することができます。また、水道代の節約にもなります。
環境に配慮されたスキンケアやコスメを使う
化粧水や乳液、メイク用品のパッケージだけでなく、最近では洗顔料やコスメの原料にマイクロプラスチックが含まれていることが指摘されています。また、人体への安全性を確かめるため動物実験を行っている場合もあります。これらのことを配慮した、オーガニック化粧品などの環境に配慮されたスキンケアやコスメを購入することで、海洋汚染や動物虐待を防ぐことができます。
ごみと資源の分別をする
リサイクルや燃焼時のエネルギー使用の観点から、資源をごみに混ぜないことはとても重要。素材ごとに分別したり、生ごみの水をしっかり切ったりするなど、ごみの出し方を見直してみましょう。
自家用車ではなく自転車や公共交通機関を利用する
近くのコンビニに行くだけでもついつい使ってしまう自家用車。距離によっては自転車や徒歩にすることで、環境にも優しく自分の健康にも繋がります。バスや鉄道などの公共交通機関は一人当たりの二酸化炭素排出量が自家用車と比べて少なくなります。交通の便が悪く車を使わざるを得ない時は、乗り換えのタイミングで燃費の良い車を選んだり、穏やかにアクセルを踏んで発進したりするなど、省エネドライブができるように心がけてみましょう。
マイボトルを持ち歩く
リユースできる容器で飲み物を飲むことで、ペットボトルの使用量を削減することができます。最近では、街中やお店などで自由に給水できるスポットや、容器持参で割引されるカフェも増えていて、お財布にも優しい取り組みになります。
量り売りで必要な量だけ買う
使いきれずに捨ててしまうことがないように、必要な分だけ購入することができる量り売りができるお店も増えています。フードロス対策や脱プラスチックになる量り売りでは、お米や野菜、ドライフルーツやナッツなどの食品だけでなく、石鹸やシャンプー、洗剤などの日用品などが購入できるお店も。
旬・地元の食材を使う
食材の選び方には、値段や美味しさだけでなく、食品が及ぼす地球環境への負担度を表す「フード・マイレージ」を意識した選び方があります。旬の食材や近くで採れた食材を使うことは、生産や運搬にかかるエネルギーを減らすことに繋がります。
買い物では環境に優しい素材やお店を選ぶ
身の回りのものを少しずつ環境に優しいものにシフトするために、素材や購入するお店にこだわってみるのもおすすめです。例えば、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さによる環境負荷が指摘されている衣類には、古着や長く着ることのできる服という選択肢があります。また、パッケージをプラスチックから紙に変える企業も増えており、環境に配慮された商品を選ぶことで企業の取り組みを応援することができます。
続けてお風呂に入る
お風呂の追い焚き機能は便利ですが、それだけエネルギーを使っていることにもなります。家族と一緒に住んでいる人は、時間を空けずに入浴することで、省エネに繋がります。
日々の取り組みにプラスしてできること
情報を集める
メディアでも取り上げられることが増えた環境問題ですが、意識的に情報を収集することも大切です。ネットで検索したり、SNSの発信をチェックしたり、本を読んだり、環境問題に関する情報を楽しみながら集めることで、次のアクションに繋がるヒントを得ることができるはず。
実際に現状を見てみる
危険な暑さや大雨の被害を目の当たりにすることで、環境問題が身近になったことを感じた人も多いのではないでしょうか?実際にどのくらい街や海が汚れているのか、自分の目で見ることで環境問題の見方が変わることも。普段通っている道でも、視点を変えるだけでゴミがたくさん落ちていることに気が付くかもしれません。
環境問題解決をテーマにしたイベントに参加する
日々の取り組みも大切ですが、行き詰まった時や個人でなかなか行動できない人におすすめなのが、サステナブルをテーマにしたイベントに参加すること。お買い物が好きな人なら、環境に配慮された商品を集めたポップアップショップ、体を動かしたい人なら、ランニングしながらゴミを拾うプロギングなど、自分が楽しめるイベントを探してみましょう!
アップサイクルに挑戦する
もの作りが好きな人や子供におすすめなのが、アップサイクル。本来は捨てられるはずの廃棄物を、元の状態よりも価値の高いものに生まれ変わらせるアップサイクルは、ものの寿命を伸ばすサステナブルな取り組みです。紙袋でブックカバーを作ってみたり、使い古した洋服でバッグを作ってみたり、アイデア次第でごみが使えるアイテムに生まれ変わります。
環境問題への取り組みの事例
知るだけで面白い、環境問題に取り組む企業や人の情報をご紹介。それぞれのインタビュー記事を掲載しているので、気になる人や取り組みがあればチェックしてみて!
大学生がプラスチック問題を考える「プラごみ減らし隊」
東京農工大学では、海洋プラスチック汚染に立ち向かうために「農工大プラスチック削減5Rキャンパス」と「農工大プラごみ減らし隊」が発足。大学・学生・企業・近隣住民が一体となってプラスチックごみを減らすための取り組みが行われています。
環境負担の少ない素材の開発「セルロースナノファイバー」
最先端のバイオマス素材として注目されている「セルロースナノファイバー(CNF)」。消費者の私たちには、まだ聞き馴染みのない名前ですが、木材などの植物の繊維を細かく解きほぐすことで生まれるこの天然素材が、持続可能な循環型社会に貢献するヒントになると期待されています。
プラスチックを紙に変えた商品開発「サステナビリTee」
ゴルフ用品メーカー ライト株式会社は、カンキョーダイナリー(環境>)を運営する大昭和紙工産業株式会社と共同で、環境にやさしい紙製ゴルフティー「サスティナビリTee(サスティナビリティー)」を開発しています。
子供に楽しく環境問題を伝える人たち
魚の「オモロい」生態や海の大切さを、イラストや歌で伝えることで子供の好奇心を育て、海の豊かな未来に向けて活動を続けるさかなのおにいさん かわちゃん。入道雲をイメージしたアフロヘアーの髪型で、難しい天気の話も、お笑いの経験や紙芝居を活かして、「ポップに楽しく語る」くぼてんきさん。各地での講演や漫画・本の出版など、ごみ問題の周知のために幅広く活躍するお笑いコンビ「マシンガンズ」滝沢秀一さんなど、環境問題を楽しく伝える活動をしている人もいます。
環境を考えた持続可能な農業に取り組む農園
北アルプス高橋農園さんは、長野県松川村で100%プラスチックフリー包装の無農薬野菜セットや固形石鹸の販売など、持続可能な世界の実現に向けて幅広く活動しています。また、鴨志田農園の6代目の鴨志田純さんは、堆肥づくりに徹底的にこだわり、畑と食卓の繋がりを感じることのできる野菜を生産しています。
家族で楽しく環境を学べる施設
品川区立の環境学習交流施設としてオープンした「エコルとごし」は、区民の憩いと交流の場として利用できる他、体感を重視した展示やエコが満載なイベントを通じて、楽しみながら環境について考えることができる、学習と交流のための施設です。
アップサイクルで環境問題への入り口を広げる創作
「おしゃれ」「かわいい」を入り口にすることで、環境問題へのハードルを下げることができます。Carton Pickerの島津冬樹さんは、世界中で拾い集めた段ボールを、おしゃれで使いやすい財布やコインケースにアップサイクル。また、包装作家®️の正林恵理子さんは、身の回りにある素材にひと手間加えるだけで、贈ってももらっても嬉しいエコな包み方を提案しています。
環境問題解決のためにできることのまとめ
環境問題は日本だけでなく地球レベルの大きな問題ではありますが、原因の一つは私たち一人ひとり暮らしです。視点を変えれば、私たちが環境を守る行動を選ぶことで、環境問題への対策になることもあります。この記事で紹介した、日常で取り組めること・一歩進んだアクション・実際に取り組んでいる人の例など、さまざまな情報を参考にして環境問題解決に向けて行動してみてはいかがでしょうか?
(参考1)環境省「地球温暖化の現状と原因、環境への影響 - Cool Choice」
(参考2)文部科学省・気象庁「日本の気候変動2020」
(参考3)一般財団法人 環境イノベーション情報機構「海洋汚染のメカニズム」
(参考4)京都市情報館「京朝スタイル」
(参考5)水資源機構「家庭でできる節水の方法」
(参考6)環境省「洗顔料や歯磨きに含まれる マイクロプラスチック問題」
(参考7)東京都環境局「交通機関の種類とCO2排出量」
(参考8)環境省「サステナブルファッション」