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海面上昇による地球への影響とは?|地球温暖化との関係や原因を解説

海面上昇による地球への影響とは?|地球温暖化との関係や原因を解説

「地球温暖化で北極の氷が解けて海面が上昇する?」

「海面上昇で水没する場所が日本にもあるの?」

 

地球温暖化による異常気象や自然災害が世界中で問題となっている昨今、海に囲まれた日本にとって海面上昇は気になる問題です。

 

この記事では、海面上昇の現状と原因、予想される影響や対策について解説していきます。

海面上昇とは?

海面上昇とは?

 

海面上昇とは、地球上の海水面が長期間にわたって上昇する現象のことです。

 

気候変動に関する科学的知見を評価・提供しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、海面上昇について次のように解説しています。

 

  • 世界の平均海水面は、1901〜2018年に約20cm上昇した
  • 海面水位の上昇率は、1901~71年では平均で1年あたり約1.3mm、1971~2006 年では約1.9mm、2006~18年では約3.7㎜と加速している
  • 大気や海洋、陸域の温度が上昇している要因が、人間活動であることは疑う余地がない
  • 少なくとも1971年以降に観測された世界平均海面の上昇の主要因は、人間の影響であった可能性が非常に高い

 

海面上昇が世界の海で生じていることは、観測データからも明らかになっており、人間活動の影響によって今後も上昇が続くと予測されているのです。

海面上昇の原因は地球温暖化?

海面上昇の原因は地球温暖化?

 

海面上昇の原因として、温暖化によって北極や南極の氷が融けて海水が増えることが想像されますが、実際に問題となるのは海ではなく陸上の氷です。

 

北極海の氷の面積が縮小していることは事実ですが、北極海の氷は海水が凍って浮かんでいるものなので、融けても海水面はほとんど上昇しません。これは、コップの水に浮かんだ氷のかけらが融けても水位に変化が起きないことと同じ原理です。

 

問題となるのは陸上に存在する多様な規模の氷河・氷床で、これら淡水の氷が温暖化によって融解し海に流れ込むと、海洋の水が増加し海面が上昇します。

そもそも地球温暖化とは?

地球温暖化とは、地球の平均気温が長期的に上昇する現象です。地球温暖化の原因であるCO₂などの温室効果ガスは、もともと地球の大気に存在し、太陽からの熱を取り込んで地球を適度な温度に保つ役割を果たしています。

 

しかし、産業革命前に比べてCO₂は40%増加し、地球の平均気温は徐々に上昇を続け、2011〜20年は観測史上最も気温が高い10年間となりました。地球温暖化によって、海面上昇や異常気象の頻発、干ばつによる砂漠化の拡大、生態系の劣化などが起こると懸念されています。

 

海面上昇は地球温暖化による影響の一つ

1971年以降に観測された世界平均海面の上昇の主要因は、主に2つであることが判明しています。

 

1つ目は、前段で触れている氷河や氷床の融解です。氷河や氷床に蓄積された淡水氷が温暖化によって溶け、海に流れ込むことで海水量が増えます。2つ目は、海洋の熱膨張です。20℃の海水が1℃上昇するたびに、体積は約0.025%膨張することが分かっています。

 

いずれも地球温暖化が原因であり、海面上昇は人間の影響である可能性が非常に高いということがIPCCの第6次評価報告書でも述べられています。また、同報告書では地球温暖化のいくつかのシナリオごとに、今世紀末までの海面上昇について予測しています。

 

世界全体のCO₂排出量が非常に少ないシナリオの場合でも、海面上昇は約50cm、CO₂排出量が非常に多いシナリオの場合では、最悪1mも上昇するとのことです。さらに、南極の氷床が不安定化して崩壊が始まると、1.5m以上海面が上昇することもあり得るとしています。

 

将来的に地球温暖化が食い止められ気候を安定化できたとしても、それ以前の影響により、海面上昇はすぐには止まりません。一刻も早く気温の上昇を止めるため、世界が協力してCO₂排出を削減することが求められています。

日本や世界で起こっている海面上昇による影響

日本や世界で起こっている海面上昇による影響

 

海抜が低い地域や沿岸部は、海面上昇によって洪水や浸水の可能性が高まります。また、飲料水や農業への悪影響、土地の浸食も不安要素です。安心して暮らせなくなれば、住民が転居を余儀なくされることも起こるでしょう。

 

また、海面上昇は海洋生物や沿岸の生態系にも影響を与えます。砂浜や干潟の環境が変化すれば、そこに生息する生物は存続できなくなるかもしれません。

 

ここでは、日本や世界で現在起きている影響や、予想されるリスクについて解説していきます。

日本で起こっている影響

日本で海面上昇が起こると、沿岸の防災施設の機能が低下して安全安心な暮らしが脅かされるほか、砂浜や干潟の減少により生物多様性にも影響が生じる可能性があります。日本では、海に面する市町村に人口の46%、工業出荷額の47%、商業販売額の77%が集中しており、海岸域は社会・経済活動にとっても重要な地域です。

 

一方、沿岸地域は高潮や侵食などを受けやすいため、海岸堤防や護岸などの海岸構造物による防災対策が欠かせません。東京、大阪、名古屋などの大都市圏には広い海抜ゼロメートル地帯があり、人口と資産が集中していますが、堤防や防潮水門などの施設で守られています。

 

しかし、海面が1m上昇する場合、護岸の安全性を現状と同じレベルに維持するには、外洋に面した堤防では2.8m、内湾の岸壁では3.5mのかさ上げが必要です。さらに、海面上昇は地盤の支持力を弱めるため、地震による液状化も懸念されています。

 

また、砂の供給が減ったことなどにより、現時点でも砂浜海岸の減少が問題となっていますが、海面上昇によって砂浜の浸食がさらに加速するとの予測です。海面が1m上昇した場合、日本全国の砂浜海岸の90.3%が浸食され、そこに暮らす海洋生物や海浜植物の生息域にも多大な影響を与えるとされています。

 

生物多様性の宝庫である干潟も例外ではありません。干潟の陸側は堤防などで遮断されていることが多く、海面が上昇しても後退するのは不可能です。干潟は非常に勾配が緩やかなので、1/300の勾配であれば、50cmの海面上昇で奥行約150mの面積が消失してしまいます。

 

干潟の消失が進めば、干潟にすむ生物の産卵や子育てだけでなく、餌場として利用するシギチドリなどの渡り鳥にも大きな影響が及ぶでしょう。

 

このように、国内では海面上昇により大面積が水没するような可能性は低いとしても、自然災害のリスクの増大や、生物多様性の損失は十分に起こり得ると考えられます。

世界で起こっている影響

太平洋、カリブ、アフリカ地域の海抜が低い島国では、海面上昇の影響と考えられる環境の変化が生じています。例えば、海岸線の後退、農地や水資源への影響、高潮被害の増大などです。これらの国々は国土が小さい開発途上国なので、排出するCO₂は世界全体のわずか1%にすぎません。しかしながら、先進国が排出する温室効果ガスによる地球温暖化の影響を最も深刻に受けています。

 

持続可能な発展が危ぶまれる島国が、気候変動枠組条約の国際交渉において連携・協力するために設立されたのが、小島嶼国連合(AOSIS: Alliance of Small Island States)です。2023年12月の気候変動枠組条約COP28において、小島嶼国連合の代表団は、気候関連交渉の結果がわずかな進展にとどまったことに大きな落胆を示していました。

 

以下は、既に島国で問題となっている事例の一部です。

 

  • フィジー諸島共和国
    以前は干潮時に歩いてサンゴ礁まで魚を捕りに行けたのが、60mほども海岸線が後退した場所もあり、今も浸食が続いています。また、満潮時に海水が川を逆流するようになり、川の周辺にある農地が塩化しました。塩化した土壌では、米やサトウキビなど塩水に耐性をもたない作物は育ちません。限られた農地で収量をあげるため、農薬に頼ったり焼き畑で農地を増やしたりするなど、二次的な悪影響も生じています。

 

  • ツバル
    満潮時に井戸の水が塩水に変わるようになり、飲料水として使えなくなった場所では、水資源を雨水に頼るしかなくなりました。大潮の時には農地に海水が流れ込むようになり、主食のタロイモが育たなくなってきました。タロイモ栽培に労力と時間がかかるようになり、生産をやめてしまう人もいます。タロイモの収量が減り魚の漁獲も減ったことで、代わりに消費が増えているのが米や小麦、缶詰、肉などです。伝統的な食生活にも、影響が生じています。

 

  • マーシャル諸島共和国
    マーシャル諸島共和国の平均海抜は、約2mです。IPCCによれば、海面が1m上昇した場合、首都があるマジュロ環礁の80%が失われるとされています。海面上昇による水資源や農地への影響、海岸浸食の加速、高潮の被害が懸念されるのは他国と同様ですが、さらに国土の大半が失われるというのは、危機的状況といえるでしょう。

海面上昇への対策

海面上昇への対策

 

将来起こり得る海面上昇の被害を最小限とするために、緩和策と適応策が求められています。

 

緩和策とは、海面上昇の原因である地球温暖化の進行を防ぐためにCO₂を削減する取り組みです。しかし、CO₂が削減できたとしても、地球温暖化や海面上昇がすぐに止まるわけではありません。将来起こり得る海面上昇の被害を受けないように、設備などのハード面、非難計画などのソフト面を整備する適応策も重要です。

 

以下に、海面上昇に関する対策について、それぞれ説明していきます。

【緩和策】地球温暖化を⾷い⽌める

海面上昇の原因の一つである地球温暖化を止めるには、温室効果ガスを削減するための具体的な取り組みが必要とされています。

 

国際的な対策として、世界の加盟国は国連気候変動枠組条約のもと、2015年12月にパリ協定を採択しました。パリ協定の目的は、21世紀後半までに世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度以下に抑え、さらに1.5度以下に抑える努力を追求することです。主に、次のような内容がもりこまれています。

 

  • 各国が自主的に温室効果ガスの排出削減目標を設定し、5年ごとに見直し、強化すること
  • 発展途上国が気候変動対策を実施するために必要な資金援助を、先進国が提供すること
  • 各国は気候変動対策の進捗状況を透明性の高い方法で報告し、国際的な評価を受けること

 

パリ協定は、世界全体で協力して温室効果ガス削減を実現するための重要な枠組みであり、持続可能な未来を築くための基盤といえます。パリ協定やその後の締約国会議での合意事項をふまえ、加盟国はCO₂削減の計画策定や具体的な施策を進めています。

【適応策】防波堤などで守る

海面上昇などによる被害を防ぐためには、災害を回避することや被害に対する耐性をつけることが重要です。護岸や下水道などの防災施設の整備、ハザードマップの公表、弱者を含めた避難経路の確立などが考えられます。

 

防潮堤の整備については、東京都が全国に先駆け、海面上昇や台風の強大化に備えてかさ上げする計画案をまとめました。防潮堤全体の半分に相当する約30kmを対象とし、最大1.4m高くする内容です。この計画では、2100年に海面が60cm上昇、台風の最低気圧が930ヘクトパスカルに低下すると想定して、浸水を防ぐために必要な防潮堤の高さを算出しています。かさ上げするのは、算出結果で高さが足りなくなることが判明した、豊洲や築地、晴海などの区域です。

 

また、神奈川県は海面上昇や台風の増大化による海岸浸食が懸念されることから、「相模湾沿岸海岸侵食対策計画」を策定し、護岸の補強や人為的な養浜などを行っています。

 

さらに、波の影響を弱める緩衝地帯となるマングローブなど湿地の保護・再生も、有効な対策の一つです。今後は、海面水位の監視を継続的に行うとともに、施設整備や適切な管理、海岸林や湿地など緩衝地の復元を進め、将来の海面上昇に備えることが重要になるでしょう。

私たちにもできる取り組み

私たちにもできる取り組み

 

海面上昇を引き起こす原因と私たちの生活は、無関係ではありません。我々が普通に暮らしているだけでも、いろいろな場面でCO₂を排出し地球温暖化に関与しているからです。

 

一人ひとりが暮らしの中で地球温暖化を意識し、小さな行動を続けることができれば、海面上昇の問題解決にもつながります。ここでご紹介するのは、個人でも実行可能な取り組みの例です。

地球温暖化対策

生活の中のいつもの行動を少し工夫するだけで、CO₂排出を減らすことが可能です。

 

私たちの社会はいま、ガソリンや天然ガスなどの化石資源に大きく依存しています。化石資源は、電力を生み、自動車の動力源やプラスチックの原料になるなど、生活に欠かせない存在です。しかし、化石資源の利用は、燃焼により大気中にCO₂を放出するため、CO₂排出を削減するためには、少しでも化石資源の利用を減らす必要があります。

 

具体的には、電力やガソリンの使用をなるべく抑え、ものを大切に使うことが基本です。また、化石資源を使っていない物で代用できないか、検討することも有効でしょう。

 

身近なところからできる、具体的な行動の例をあげてみます。

 

  • ガソリン車から電気自動車やハイブリッド車に乗り換える
  • 自転車や公共の交通機関を使う
  • 再生エネルギーを扱う電気事業者を選択する
  • プラスチック製品から紙製品や木製品へ置き換える
  • 節電・節水を心がける
  • ごみを分別し、リユース・リサイクルに取り組む
  • フード・マイレージを意識して買い物をする
  • 情報を集める
  • ボランティア活動などに参加する

 

一人ひとりの行動の変化は小さくても、多くの人が継続することで必ず大きな力となるはずです。

 

保全活動に参加してみよう

当サイトを運営する大昭和紙工産業が海洋保全団体と協力して進めている「海洋プラスチックゴミゼロ活動」「ウミガメの生態調査と保護活動」にぜひご参加ください。

 

ウミガメの保全活動に参加することで、海の生態系についての理解が深まり、自分事として地球環境の保全に関わることができます。ウミガメは、陸域から海洋まで幅広い生態系を利用している海の爬虫類であり、絶滅危惧種です。ウミガメを守るための行動は、ウミガメの生息地である砂浜や海洋の環境改善につながります。

 

保全活動の場所は、アカウミガメが産卵にやってくる静岡県浜松市の遠州灘海岸です。ゴミ拾い用のグッズは現地でレンタルでき、ゴミも現地で処分します。お子様の夏休みの自由研究や家族の思い出作りにも最適です。2024年分の⼦ガメ観察会チケットは、下記ページからご購入いただけます。

 

 

まとめ

ここまで、海面上昇の現状と原因、予想される影響や対策について解説してきました。

 

日本に住む我々は、近い将来、海面上昇による直接的で甚大な被害を受ける可能性は低いかもしれませんが、海抜の低い島嶼国にとっては現在進行中の死活問題です。そして、私たちが暮らしの中で排出しているCO₂は、地球温暖化の原因となり海面上昇とつながっています。

 

世界の人々が平等に安全な暮らしが保障され海からの恩恵を受けられるよう、明るい未来を想像しながら、身近なところから行動を起こしてみませんか。


【参考】

環境省「IPCC 第 6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約

地球環境研究センター「海面上昇とゼロメートル地帯

気象庁「世界の過去および将来の海面水位変化

内閣府ホームページ「地球温暖化研究の最前線 第3章 地球温暖化の影響とリスク

全国地球温暖化防止活動推進センター「海面上昇の影響について

国際連合広報センター「COP28、化石燃料からの「脱却」を呼びかけて閉幕:「段階的廃止は不可避」とグテーレス事務総長(UN News 記事・日本語訳)

国際環境NGO FoE Japan「フィジー諸島共和国

国際環境NGO FoE Japan「海面上昇で、行き場を失う島民

国際環境NGO FoE Japan「マーシャル諸島と地球温暖化の影響

環境省「おしえて!地球温暖化

外務省「2020年以降の枠組み:パリ協定

日本経済新聞「東京都、防潮堤かさ上げへ 温暖化で海面上昇想定

神奈川県「相模湾沿岸海岸侵食対策計画を改定しました

ライター

曽我部倫子(そがべともこ)

WebライターとしてSDGsや環境問題をテーマに執筆しています。また、保育士と1級子ども環境管理士の資格をもち、子どもや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を通した環境教育を20年ほど継続中です。
https://hadukiaoi.edire.co

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