「環境問題を学んでみたいが、難しくてわからない」
「未来の地球環境なんて規模が大きすぎて想像ができない」
ニュースでも多く取り上げられるようになった「環境問題」ですが、日頃の便利な生活の中では、影響を感じにくく、目を背けてしまうこともあるかもしれません。実際に人々の関心や意識もまだそこまで大きくないのが現状。しかし、確実に地球に変化は起こり始めています。
そんな変化を映像とともにリアルに知ることができるのが、ドキュメンタリー映画。舞台は日本だけでなく、世界中。旅行でも訪れないような場所の美しい景色、また一方で汚染されてしまっている衝撃的な景色。様々な地球の姿を映像を通して観ることができます。
この記事では、カンキョーダイナリースタッフがおすすめする環境問題に関するドキュメンタリー映画作品に注目して紹介していきたいと思います。環境問題に関する情報を知りたいと思うきっかけになると嬉しいです。ぜひご覧ください。
目次
01. 『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』
「あなたは服の本当のコスト 知っていますか?」
2013年4月24日、バングラデシュの縫製工場が入るビル「ラナプラザ」が崩壊し、従業員1,136人が亡くなる事故が発生しました。ラナプラザは、縫製工場などが入居する8階建の商業ビルでしたが、違法な増築や、亀裂の発見による使用中止警告をオーナーが無視するなど、労働者の安全が守られているとは言えない労働環境でした。実は、この事故の背景には「ファストファッション」がありました。
短いサイクルで大量に製造し、安く売られる衣類「ファストファッション」は、2000年代以降に流行するようになりました。すぐに変わるトレンドに遅れることなく、新しいファッションを手頃な価格で購入できるため、ファストファッションのブランドは多くの人に支持されました。
しかし、本来、服を作るためには多くの時間やお金がかかります。それを無理に削ろうとした場合に影響を受けるのは誰でしょうか?『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』では、このような一見煌びやかに見えるファッション業界の闇に焦点を当てたドキュメンタリー映画です。ファッションを楽しむ先進国の一人として、知っておくべき現実が描かれています。
【映画詳細】
監督:アンドリュー・モーガン プロデューサー:マイケル・ロス
製作総指揮:リヴィア・ファース、ルーシー・シーゲル
出演:サフィア・ミニー、ヴァンダナ・シヴァ、ステラ・マッカートニー、ティム・キャッサー、リック・リッジウェイ ほか
配給:ユナイテッドピープル
特別協力:ピープルツリー
協力:Dr.Franken
2015年/アメリカ/93分/カラー
https://unitedpeople.jp/truecost/
02. 『不都合な真実』
数年前からテレビなどのメディアでも取り上げられ、身近な環境問題となっている地球温暖化。太古より一定の量で保たれていた大気中の二酸化炭素が、人類の豊かな生活に伴い増加し続けています。この二酸化炭素を含む温室効果ガスの濃度が高まり、太陽から降り注ぐ熱が地球から放出できにくく、大気中に溜まってしまうことが原因で発生しているとも言われています。
地球温暖化が引き起こす地球への影響は、海面上昇、異常気象、干ばつ、生態系の変化などがあります。この地球温暖化の恐怖を伝えるために、アメリカ元副大統領のアル・ゴアが作った『不都合な真実』は、世界中に衝撃を与えました。
2007年に公開後、大ヒットを記録し、第79回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞と主題歌賞の2部門を受賞しています。さらに、同年にはノーベル平和賞を受賞するなど大変話題になりました。
公開から10年が経った2017年には、続編となる『不都合な真実2:放置された地球』を公開しており、悪化し続ける地球環境を描いています。私たちが未来のために今やらなければいけないことは何か、強く考えさせられる作品となっています。
【映画詳細】
監督:デイビス・グッゲンハイム
主演:アル・ゴア
製作:ローリー・デビッド、ローレンス・ベンダー、スコット・Z・バーンズ
製作総指揮:ジェフ・スコール、デイビス・グッゲンハイム、ダイアン・ワイアーマン、リッキー・ストラウス、ジェフ・アイバース
編集:ジェイ・キャシディ、ダン・スウィエトリク
音楽:マイケル・ブルック テーマソング:メリッサ・エザーリッジ
2006年製作/96分/アメリカ/原題:An Inconvenient Truth/配給:UIP
03.『OUR PLANET 私たちの地球』
今、人間の暮らしが原因で生物多様性が失われていることが問題視されています。人間がもたらす生物多様性の危機の中には、「化学物質やプラスチックごみなどの持ち込みによる生態系のかく乱」や「温暖化などの地球環境の変化による生息環境の悪化」などがあり、現在では100年前より4万倍も早い、1日100種のペースで生物が犠牲を受け、絶滅しています。
海を汚しているものには、河川に流れ込む工場や家庭からの汚染物、船舶の運行で排出される油、地上や海上で投棄されるごみなどが考えられます。海洋に流れ込むごみの中で最も注目されているものが、海洋プラスチックごみで、主な被害者は海で暮らす生き物たちです。また、環境問題の中心になっているとも言える地球温暖化の影響を受ける絶滅危惧種の種数は4,000種以上と発表されています。
このような生態系の実態を魅力的な美しい映像を通して伝えてくれるのが『OUR PLANET 私たちの地球』です。netflixオリジナル作品で、2023年には続編である『OUR PLANET 私たちの地球Ⅱ』も配信されています。
強靭で豊かな自然。その美しさが、このままの姿で続くことが保証されないということを、映像を通して思い知らされます。北極や砂漠、はるか彼方の遠洋にジャングル。一見、別の世界のように見えますが、私たちと同じように生活し同じ地球で暮らす動物たち。人類と自然が共に繁栄していくために守らないといけないものを、改めて考えさせられます。
【映画詳細】
出演:デヴィッド・アッテンボロー
https://www.netflix.com/jp/title/80049832
04.『プラスチックの海』
環境省が「漂流ごみ」を調べたデータによれば、ごみ全体のうち、プラスチックごみの占める割合が最も高く、地上で出たペットボトルやビニール袋などプラスチックを主としたごみが海に流れ込み、海を汚染する主な要因となっています。
既に1億5,000万トンものプラスチックごみが世界の海に存在していると言われており、そこへ少なくとも800万トンに及ぶプラスチックごみが、毎年新たに海に流出していると推定されています。2050年にはプラスチック生産量はさらに増え続け、海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回るというショッキングな予測もされています。
『プラスチックの海』の監督であるクレイグ・リーソンは、シロナガスクジラに魅せられ、幼い頃から追い続けていました。そんな彼がプラスチックごみ問題を知り、海洋学者、環境活動家やジャーナリスト達と共に、世界の海で何が起きているのかを調査した様子を追ったドキュメンタリー映画です。私たち人間の豊かで便利な生活が引き起こしている問題が描かれています。
消費者教育教材資料表彰2022 優秀賞を受賞している作品でもあり、学校教育にもおすすめの映画です。
【映画詳細】
監督:クレイグ・リーソン
プロデューサー:ジョー・ラクストン、アダム・ライプジグ
製作総指揮:ソンジア・ノーマン、ダニエル・アウエルバッハ、クレイグ・リーソン
脚本:クレイグ・リーソン、ミンディー・エリオット
出演:クレイグ・リーソン、デイビッド・アッテンボロー、バラク・オバマ、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、リンジー・ポルター、ジョー・ラクストン、ダグ・アラン、ベン・フォーグル、マイケル・ゴンジオール他
撮影:マイケル・ピッツ
編集:ミンディー・エリオット
音楽:ミリアム・カトラー、ローレンス・シュワルツ
配給:ユナイテッドピープル
宣伝:スリーピン
原題:A PLASTIC OCEAN
100分/2016年/イギリス・香港
https://unitedpeople.jp/plasticocean/
05.『グレタ ひとりぼっちの挑戦』
近年、猛暑日や大雨の日数が増加傾向にあります。今後もさらに変化が大きくなると予想され、それに伴い、災害リスクや熱中症患者数の増加、農業や水産業といった産業への影響を及ぼすとされています。
このような気候変動の原因は、海洋の変動などといった自然の要因もありますが、人間活動に伴う二酸化炭素などの温室効果気体の増加や森林破壊などの人為的な要因もあるとされています。
この深刻な気候変動の問題に目を向け、アクションを起こしたのが、『グレタ ひとりぼっちの挑戦』の主人公であるスウェーデンに住む15歳のグレタ・トゥーンベリです。2018年、彼女は毎週金曜日に学校をストライキして、国に気候変動対策を訴えるためにスウェーデン議会前に座り込みました。
グレタさんの活動に密着したこの映画は、彼女の涙のスピーチの裏に隠された15歳の少女の葛藤が描かれています。改めて、地球のためにできることを考えるきっかけになる映画です。
【映画詳細】
主演:グレタ・トゥーンベリ、スヴァンテ・トゥーンベリ、アントニオ・グテーレス、エマニュエル・マクロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドナルド・トランプ
監督・脚本:ネイサン・グロスマン
製作:セシリア・ネッセン、フレドリク・ハイニヒ
編集:ハンナ・レヨンクヴィスト、シャーロット・ランデリウス
音楽:レベッカ・カリユード、ヨン・エクストランド
脚本:ペール・K・キルケゴー、ハンナ・レヨンクヴィスト
2020年/スウェーデン/ドキュメンタリー/101分/ビスタ/5.1ch/原題:I Am Greta 日本語字幕:石塚香
https://greta-movie.com/
06.『もったいないキッチン』
本来、食べるために生産されたのに、食べられることなく捨てられてしまう食品を「食品ロス」と呼びます。日本では、年間約523万トンの食品ロスが発生していると報告されており、これは国民1人当たりに換算すると、毎日お茶碗1杯分ほどの量になります。
日本で食品ロスが発生する原因としては、小売店での売れ残りや返品、売り物にならない規格外品などをはじめとした事業系食品ロス。もう一つが、食べ残しや過剰除去、買い置きしたものを使い切れないといった家庭での食品ロスです。
「食に対する情熱が強いのに、どうして日本では食品ロスが多いのだろう?」
そんな疑問を解決するべくオーストリアからやって来た食材救出人で映画監督のダーヴィド。日本の“もったいない精神”に魅せられた彼が、4週間で日本各地を巡り、廃棄される食材のみを使って料理をします。“もったいない”のアイデアがたくさん詰まった映画です。
【映画詳細】
監督・脚本:ダーヴィド・グロス
プロデューサー:関根 健次
編集:神保 慶政
音楽:高橋 英明
2020年/日本/日本語・英語・ドイツ語/16:9/95分
https://www.mottainai-kitchen.net/
07.『地球が壊れる前に』
環境問題を解決するためには、個人レベルでの活動も大切ですが、国が動けばさらなる大きな変化が期待できます。
例えば、アメリカカリフォルニア州では、2021年10月に、レストランで利用客が要求しない限り、使い捨てのプラスチック製ストローや食器を提供することを禁止する法案が成立しています。バイデン米政権は、今後20年以内にプラスチックの9割をバイオマス由来に切り替えるための振興策を検討していると言われていて、バイオ技術を活用した石油由来製品からの脱却が促されています。
このように政策を変え、社会に変化を起こさなければ環境破壊は止められないと訴えたのが、アカデミー賞を受賞したこともある俳優であり、国連平和大使でもあるレオナルド・ディカプリオです。この映画は、彼の2年間にわたる環境問題を見つめる旅を記録した内容となっているので、環境映画を初めてみる人にも見やすい映画かと思います。俳優ではない、地球のために邁進するレオナルド・ディカプリオを見ることが出来る作品となっています。
【映画詳細】
出演:レオナルド・ディカプリオ、バラク・オバマ、イーロン・マスク、エリック・サラ、ジョン・ケリー、スニータ・ナライン
監督:フィッシャー・スティーブンス
製作:レオナルド・ディカプリオ、フィッシャー・スティーブンス、ジェニファー・デイビソン、ブレット・ラトナー、ジェームズ・パッカー
製作総指揮:マーティン・スコセッシ、マーク・モンロー、ザラ・ダフィ
脚本:マーク・モンロー
撮影:アントニオ・ロッシ
編集:ジェフリー・リッチマン、ブレット・バンクス
音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
https://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2058
おすすめの環境問題を学べる映画を見てみよう
ここまで、環境問題を題材にしたドキュメンタリー映画7選を紹介してきました。
環境問題といっても、地球温暖化、海洋プラスチック汚染、食品ロスとさまざまな問題があります。まずは、自分が興味のあるテーマを描いた映画から観て、できることから行動してみるのがいいかもしれません。
今回厳選した作品の中には、サブスクリプションの配信サービスでも見れる作品もあるので、ぜひ鑑賞してみて下さい。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
(参考1)環境省「日本の気候変動とその影響」