高校入試や大学入試の小論文では、環境問題のテーマが出題されることもあります。
世界的に問題となっている環境問題は多種多様であり、何から対策すべきか混乱してしまいがちです。小論文対策に必要な環境問題の基礎知識を網羅的に学びたい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、環境問題の小論文対策に必要な基礎知識を徹底解説します。書き方やテーマの代表例に触れているので、環境問題の小論文対策をするときの参考にしてみてください。
目次
環境問題の小論文対策に必要な事前知識
環境問題の小論文対策をするには、小論文に対する理解を深める必要があります。まずは小論文対策に必要な事前知識として、小論文の概要や作文との違い、高校・大学入試における出題傾向などを解説します。
小論文とは
小論文とは、比較的短い文章で自分の考えを主張する論文です。
800文字や1000文字のように文字数が指定されます。高校や大学の推薦入試で出題されることが多いです。
入試では、関連するテーマの題材(言葉や文例など)が与えられ、「~についてはどう考えますか?」「問題点を述べてください」「自由に論述してください」といったように文章の作成を求められます。
出題文をよく読んでルールに沿った文章を書くことが基本です。
小論文と作文、感想文の違い
小論文とは異なり、作文は単に文章を書くことを意味し、必ずしも自分の考えを主張する必要はありません。たとえば、単に感想を述べた感想文も作文の種類に含まれますが、感想文は読者を納得させるために書くわけではありません。
また、小論文は客観的で論理的な文章構成が重視される一方、作文や感想文は主観的で表現力のある文章内容が求められ、書き方の型を意識する必要はありません。
高校入試の小論文の出題傾向
高校入試の小論文では、身近な社会問題がテーマとして出題される傾向があります。
たとえば、環境問題については地球温暖化対策の中で生じる課題を論述する問題が出題されています。
ほかのジャンルでは、安全に配慮したロケットの打ち上げに最適な場所、地方が抱えている課題の解消方法、高齢者が安心して暮らせる社会の実現に必要なことなども論点とされていました。
日頃からニュースに関心を持って自分なりの課題解決策を描いておくことが重要です。
[参考]
東京都教育委員会|令和5年度東京都立高等学校入学者選抜における推薦に基づく選抜で実施した小論文・作文、実技検査のテーマ等一覧
東京都文、実技検査のテーマ等一覧教育委員会|令和4年度東京都立高等学校入学者選抜における推薦に基づく選抜で実施した小論文・作文、実技検査のテーマ等一覧
大学入試の小論文の出題傾向
大学入試の小論文は、著作物の長文を読んだうえで論述する出題が見受けられます。
たとえば、環境学部の小論文では気候変動に関する長文が用意されることがあります。長文中の1文に下線が引かれ、該当箇所に関連して気候変動対策に関する自分のアイデアや利点を論述するパターンがありました。
高校生のうちから環境問題に関する著作物を日常的に読み、心の中で著者に自分の考えを主張する習慣をつければ、長文読解の論述にも恐れず対処できるのではないでしょうか。
[参考]
\高校受験を控えた中学生に学んでほしい環境問題とは!?/
環境問題に関する小論文の書き方
環境問題の小論文で高校・大学に合格するには、小論文の書き方を押さえておくことも重要です。小論文の準備や構成についておさらいしつつ書き方を解説します。
小論文の準備
考えなしで書き始めると、途中で修正するのに大量の時間を浪費します。
文章の構成要素(後述)ごとに書く情報をメモしましょう。
読解時間・構成作成時間・清書時間・見直しなどまで時間配分しておくと、焦らず執筆できるでしょう。
小論文の構成
小論文の構成は、基本的に序論・本論・結論の要素に分けて書きます。
3つに分けることで読者が主張の論理展開を想像しやすくなるほか、伝えたい部分が明確になって安心して読めます。
引き続きそれぞれの書き方について解説します。
序論の書き方
序論は文章の導入部分です。文章の地図のような役割を果たします。本論で何を論じようとしているのかがわかるように書きます。
「近年、~の環境問題が生じており、~のリスクも高まっている。一般的には~や~といった解決策がある。ほかの解決策をふまえて、私が最も効果的だと考える解決策を提案していく」といった例文が挙げられるでしょう。
次に説明されることがわかり、自然と本論を読み進めてもらえるはずです。
本論の書き方
本論では、説得力を高めるために客観的なデータを提示したうえで主張を書くのが基本です。
「~団体の調査では、~の取り組みによって〇%のごみが減ったとのことだ。したがって、私は~の取り組みが解決策として有効だと考える」といった例文が挙げられます。
臨機応変にデータを提示できるよう、日頃から環境問題のニュースに注目し、使えそうな情報を整理しておくとよいでしょう。
結論の書き方
結論は、まとめ部分にあたる構成要素であり、本論で伝えた最も重要な部分を書きます。
「~という根拠から環境問題に対して~の解決策が有効だ。この解決策を広めるために、入学後は~という活動に力を入れていきたい」といった例文が挙げられます。
出題意図を理解して結論を広げれば合格の可能性を高められるでしょう。
一般的な小論文の頻出テーマ5選
一般的な小論文の頻出テーマについて簡単にご紹介します。各テーマに関する課題に触れるので、自分なりの解決策を考えてみてください。
環境問題
環境問題とは、海や川、大気などが異常な状態に変化し、人々に悪影響を与えている問題です。主に気候変動や海洋汚染、大気汚染、水質汚濁などの課題があります。気象災害の増加や人体への有害物質の流入などが危険視されています。
少子高齢化
少子高齢化とは、生まれてくる子どもの数が減少して、高齢者の割合が増加することです。少子高齢化が進行すると、年金や介護に必要なお金が増えるほか、日本を支える働き手が将来的に不足していきます。
教育格差
教育格差とは、育った環境によって受けられる教育に差が生じることです。所得が低ければ子どもに買い与えられる教材も少なくなり、塾に通わせるのも難しくなります。
経済格差
経済格差とは、人と人との間や、国と国の間で生じる貧富の差です。一部の人や国が富む一方で、劣悪な環境を強いられる人や国が存在します。貧しいと学習の機会に恵まれず、社会で優秀な人材も輩出されにくくなります。
グローバル化
グローバル化とは、資本や労働力の国境を越えた移動、貿易取引、海外への投資が活発化することです。一見世界的にメリットがあるように見えますが、国家間の格差や国内産業の衰退などの課題も想定されます。
[参考]
参照:内閣府|1 グローバル化の意味
環境問題の小論文で出題される主要テーマ
続いては、小論文で出題される環境問題の主要テーマをご紹介します。ここまで挙げたテーマと同様に課題についても触れているので、自分なりの解決策について思案してみてください。
気候変動
気候変動とは、長期的に落ち着いた大気の状態が大きく変化することを意味します。具体的には、大気の温度が上昇して氷が溶けたり、風や海水の流れ、雨の降り方が変わったりします。
海水の温度が高まると、海の表面から水が蒸発しやすくなり、雲が発生しやすくなります。積乱雲による大雨や強い台風の上陸などについては日本でも警戒が必要です。小論文の対策として、具体的な被害事例をストックしておけば、文章の説得力を高めるのに役立てられるでしょう。
[参考]
海洋汚染
海洋汚染とは、海洋ごみが海を汚染することです。ごみの種類としては、水面に浮遊する漂流ごみ、海岸にたまった漂着ごみ、海底に沈んだ海底ごみなどに分けられます。
海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響などさまざまな課題をもたらす恐れがあります。小論文の対策として、日ごろから海洋ごみを減らす方法について考えておくとよいでしょう。
[参考]
大気汚染
大気汚染は、自然あるいは人工的に生じた有害物質により大気が汚染される現象です。窒素酸化物や硫黄酸化物などは酸性雨の原因となっています。
大気汚染物質の種類はさまざまです。小論文の対策としては、各発生源を把握するとともに、排出を減らす方法を考えておくことが重要でしょう。
[参考]
水質汚濁
水質汚濁は、川や海が自然の浄化能力を失うくらいまで汚れてしまう現象です。水産物の汚染にもつながり、健康問題にも関連します。
水質汚濁の原因としては主に生活排水が挙げられます。小論文の対策として生活排水の汚れを減らすアイデアなども考えておくとよいでしょう。
[参考]
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環境問題の小論文を書くときの知識【気候変動編】
小論文を書くときには、説得力を高めるために専門知識や関連情報を駆使する必要があります。ここでは環境問題の小論文対策のイメージをつかめるよう、気候変動のテーマを例に押さえておきたい知識をまとめてみます。
地球温暖化の原因
気候変動として見過ごせない地球温暖化は、温室効果ガスの濃度が高まり地球の表面に熱を蓄積することが原因だといわれています。
温室効果ガスの種類は二酸化炭素やメタンなどです。石油や石炭、天然ガスなどを燃焼して電気を生成したり、自動車や飛行機などの乗り物を動かしたりすると増えます。
原因となる気体の種類はそのほかに一酸化二窒素やフロン類などもあります。それぞれの排出源を明確にして対策を押さえておくことが、環境問題の小論文を書くときの基本となるでしょう。
[参考]
二酸化炭素を減らす方法
温室効果ガスとして代表的な気体が二酸化炭素です。環境問題の小論文を書くときに備えて、二酸化炭素を減らす方法を把握しておきましょう。
具体的な対策としては、太陽光発電による再生可能エネルギーを増やして化石燃料の使用を抑えたり、植樹によって二酸化炭素を吸収させたりする方法があります。
原子力発電も二酸化炭素を発生させずにエネルギーを生み出せます。ただ、地震や津波などによって発電所が崩壊すると、放射線事故が発生するリスクもあります。
小論文ではこのような反対意見まで想定して書くと、より説得力を高められる可能性があります。ここでは二酸化炭素削減の方法を取り上げましたが、そのほかのテーマでも解決策のデメリットまで考えておくとよいのではないでしょうか。
[参考]
気候変動の動向
気候変動はSDGsの目標に含まれるほど重要な世界的課題となっています。世界に目を向けると、2020年における二酸化炭素排出量は317トンであり、2030年には362トンになると予測されています。
世界における二酸化炭素の主要排出国は中国・米国・インドなどであり、各国が削減の取り組みを進めていく流れとなりそうです。
実際に中国は2030年にGDPあたり二酸化炭素排出量を65%以上削減する方針を表明しました。
そのほかの気候変動対策としては、米国が2030年までに洋上風力による再エネ生産量を倍増する方針を表明したり、EUが気候変動対策が不十分な国からの輸入品に対して追加費用を徴収する案を検討したりしています。
今後も各国が実施する対策を追っていけば、小論文を書くうえでほかの受験者が気づけない環境問題の論点を見つけられるかもしれません。
[参考]
私たちが今できること
プラスチックは石油由来のため、燃やしたときに二酸化炭素が発生します。
その点、植物は育成段階で二酸化炭素を吸収するため、従来のプラスチック製品を植物由来の紙製品に置き換えれば、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにできます。
気候変動に関する小論文で私たちが今できることを問われたら、紙製品を日常に取り入れることを身近な解決策として取り上げてみてはどうでしょうか。
[参考]
大昭和紙工産業|【環境対策】地球温暖化とバイオマスプラスチック
\気候変動と花粉症の意外な関係性とは!?/
環境問題の小論文を書くときの知識【海洋汚染編】
続いては、環境問題の小論文対策のイメージをつかめるように、海洋汚染のテーマを例に押さえておきたい知識をまとめてみます。
海洋プラスチックごみが増え続ける原因
海洋汚染を引き起こす主な原因となっているのが、海に流出したプラスチックごみ「海洋プラスチックごみ」です。そして、海洋プラスチックごみが増え続ける原因は、プラスチックの普及やモラル低下などが想定されるかもしれませんが、途上国のゴミ事情もからんでいます。
というのも、廃棄物の管理能力が低い途上国は、プラスチックごみを正しく処理できず、海洋に流出させやすいといわれているからです。
したがって、海洋プラスチックごみの対策として、途上国における廃棄物管理体制の改善も重要だとわかります。
海洋プラスチックごみ関連の小論文を書くときに、ほかの受験者とは違う着眼点をアピールしたいのであれば、途上国の廃棄物管理体制の話題も挙げてみてはどうでしょう。
[参考]
環境省|令和2年版環境白書 第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失
マイクロプラスチックを減らす方法
海洋プラスチックごみの中で注目されているのがマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックは、プラスチックごみが紫外線などによって5mm以下まで細かくなった物質をさします。
すでに、さらに小さなナノプラスチックが国内で人の血液から検出されたことも話題となっています。有害化学物質を体内に運び込む恐れがあり、生殖作用などへの影響も懸念されているようです。
マイクロプラスチックはレジ袋やペットボトルなどの残骸です。減らすには、買い物でレジ袋を購入しないことや、ペットボトルのポイ捨ての取締まり強化、清掃回収などの対策が有効でしょう。環境問題の小論文で取り上げる課題や対策の例として検討してみてください。
[参考]
Japan 2 Earth|国内で初めて、人の血液から「ナノプラスチック」検出 1人の臓器からは有害化学物質
海洋汚染の動向
海洋プラスチックごみによる海洋汚染は地球規模にまで拡大しています。すでに北極や南極などでもマイクロプラスチックが観測されたとのことです。
2019年開催のG20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案されました。各国が協力して海洋汚染を食い止めるために協力する段階になっています。
このような動向も小論文における論理展開で環境問題の実情を示すときに役立ちそうです。日頃から最新情報を各自でチェックしておくとよいでしょう。
[参考]
私たちが今できること
気候変動に関する二酸化炭素削減対策でも挙げたように、海洋汚染対策についても脱プラスチックを意識して紙製品を利用することが重要になります。
なぜなら紙は土壌だけでなく海洋でも分解されるからです。
万が一紙製品が海洋流出したときも海洋汚染につながるリスクが低くなるといえます。
ポリ袋や食品トレイ、包装資材など身近なプラスチック製品はとても多いです。どのようなプラスチック製品を紙製にすべきか想像しておくと、小論文で出題者の目を引くアイデアを記載できるかもしれません。
[参考]
大昭和紙工産業|【環境対策】地球温暖化とバイオマスプラスチック
大昭和紙工産業|【環境対策】海洋プラごみとマイクロプラスチック
\海洋研究開発機構|JAMSTECの中嶋博士にインタビュー!/
まとめ
環境問題の小論文対策に必要な基礎知識を解説しました。
小論文を書くときも、読者に主張を論理的に伝えやすくなるよう、基本的には序論・本論・結論の要素に分けて文章を作成します。説得力を高めるために調査結果や分析結果などのデータを含めましょう。
代表的なテーマとしては気候変動・海洋汚染・大気汚染・水質汚濁などが挙げられ、その解決策としては、脱プラスチックを意識して紙製品を日常に取り入れることなどがありました。
環境問題の解決策は今後も新たに生み出される可能性があります。説得力の高い小論文を書くために、最新動向を把握しつつ自分なりの最適解を追求しておきましょう。