私たちの生活や、企業の事業活動に必要不可欠な「エネルギー」。今、環境問題の一つとして、このエネルギーに関わる問題が注目されています。
この記事を読まれている方の中には
「地球のエネルギー事情について知りたい。」
「日本はどんなエネルギー問題を抱えているのか知りたい。」
「再生可能エネルギーに関する情報や、エネルギー問題はどうやって解決するのか知りたい。」
このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか?
当記事を最後まで読んでいただければ、上記のような悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは解説していきます!
目次
そもそもエネルギーって何?
物を動かす、モーターを回す、光を出す、音を出す、など様々なことに対して働く力をエネルギーといいます。私たち人間が活動する上でこのエネルギーは、電化製品を動かして生活を便利にしてくれたり、運送業や工場などの事業活動の根幹となっていたりするほか、植物を成長させたり、森や川を形成したりと、地球の生態系がうまく循環するためにも作用しています。この人間だけでなく地球上のすべての生物に関わるエネルギーを安全・安定してコントロールするための課題となっているのが 「エネルギー問題」です。
地球のエネルギー事情
地球における エネルギー消費量は増加し続けており、国際エネルギー機関は、2040年におけるエネルギー消費量は、2014年と比較し約1.3倍に増え、多くの消費量をインドや中国といったアジアの新興国が占めると予測しています。また、近年大きく経済発展している新興国では、今後さらに成長が加速すると見込まれ、それに伴い経済を支えている石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料に対する需要も増えていくことが見込まれています。
このような経済成長や、地球の人口が増えることで、今後も地球全体におけるエネルギー消費量は大きく増えていくでしょう。つまり、私たちの生活を支えている電気やガスなどのエネルギー供給を絶やさないためにも、人間は 安定的にエネルギー資源を確保することが必要不可欠なのです。
また、地球のエネルギー事情の1つとして、地球温暖化の主な原因とされている 二酸化炭素の排出量を減らすことも大きな課題となっています。化石燃料を多く利用する現代までの経済活動により、地球における二酸化炭素の排出量は大きく増加し続けている現状です。今後も新興国によるエネルギー需要が増えることで化石燃料の消費量が大きく増加されることが見込まれていますが、それに対抗してエネルギー創出における二酸化炭素の排出量を減らし、 「脱炭素社会」を実現することが今、地球規模で取り組むべき急務とされています。
日本が抱えるエネルギー問題への課題とは?
電気やガスなどのエネルギーが使用できる生活は非常に便利で快適なものです。しかし、今後もこのようなエネルギーを使用し続けるには、絶対に解決しなければならない問題が存在します。それは、 日本のエネルギー自給率です。なんと現在、日本におけるエネルギー自給率は、 たったの12%程度しかなく、エネルギー資源のほとんどの部分を外国から輸入している状態なのです。さらに、日本で使用が最も多い石油に関してはこのまま使用し続けた場合、将来 枯渇して輸入もできなくなり、いずれ使えなくなってしまう可能性が懸念されています。
2021年度では日本で使用されているエネルギー資源の約8割が化石燃料になっています。化石燃料は現代社会の多くの場面に浸透しており、例えば石油は、灯油やガソリンなど自動車の動力源や電気の発電を含む様々な分野で使われている燃料であり、また、 プラスチックの原料としても使われています。このようにさまざまな場面で使われているエネルギー資源である石油に代わって、すぐに利用できるエネルギー資源を用意するのは困難です。
また、インフラを転換するのにコストや時間がかかってしまうことも依存が引き起こした問題の一つです。産業革命以降、多くの化石燃料が使用されるようになり、人類は 約200年間化石燃料を利用し社会を創り上げてきました。ガスや電気などの供給網や、末端で使用される製品といった、ほとんどのものが 化石燃料を使うことを前提につくられた社会インフラの中で、問題なく成立するような新しいエネルギー資源への転換は膨大なコストと時間がかかります。
エネルギー問題が引き起こす事業活動への影響
多くの事業活動において、 電力は必要不可欠の存在です。エネルギー問題の先には、電力需給の逼迫などが見込まれ、事業活動にも影響を及ぼします。そのため、省エネ対策を抽出し個人や企業で事業への取り組み方を決めたり、電力が不足してしまったりした際にも対応できるようにしておく必要があります。
また、環境問題を解決するための手段として注目されている再生可能エネルギー事業に関しては、 プロジェクトが大きければ大きいほど設置地域に対しての 環境負荷が見込まれ、地域住民の方々との合意形成も課題になってきます。一部の地域ではメガソーラーの導入が反対されたり、温泉事業者から地熱発電プロジェクトが反対されたりした実例もあり、再生可能エネルギーの導入には、地元の合意を得ることが必要不可欠です。
さらに、近年では環境問題に対し高い意識を持った消費者も増加しているため、個人や企業の経営者には、環境に負荷をかけない商品や製品の開発など、 環境に配慮した事業活動の取り組みが求められています。
再生可能エネルギーについて
「エネルギー問題の解決」と、二酸化炭素排出量ゼロを目指す 「脱炭素社会の実現」には再生可能エネルギーの実用化が最も有効な施策として期待されています。ここでは現代で実用化されている再生可能エネルギーと未だ実用化に至っていない新エネルギーについてご紹介します。
実用化されている再生可能エネルギー
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱、バイオマス、水力といった、 枯渇することなく繰り返し永続的に使えるエネルギーです。対義語として、 枯渇性エネルギーがあり、これには石油や石炭、天然ガスなどの枯渇性資源に頼った原子力発電や火力発電が該当します。近年では、改めて再生可能エネルギーが注目されており、発電する際に ほとんど温室効果ガスを排出しないため、 地球温暖化対策としても期待されています。
また、前述したように再生可能エネルギーには、枯渇しないメリットもあります。火力発電で燃料として使われている石炭や石油、天然ガスは採掘し使用し続けた場合、いずれ枯渇し使用できなくなることが予想されていますが、再生可能エネルギーであれば枯渇の心配が不要であり、半永久的に使い続けることができると考えられています。
再生可能エネルギーに日本が注力している理由は、温室効果ガスの発生を減らしたり、カーボンニュートラルが達成できたりするからというだけではありません。 再生可能エネルギーを積極的に導入すれば、日本の課題である エネルギー自給率の上昇にもつながり、エネルギー安全保障においても重要度が非常に高いのです。なお、エネルギー源すべてを再生可能エネルギーに変えるのは現実的に困難なため、複数のエネルギー源を合わせて使う 「エネルギーミックス」戦略が行われています。この方針の目的は化石燃料に依存するというリスク回避と、1つのエネルギー源に頼りすぎて不測の事態に対応できないという状況の回避にあります。エネルギーミックス戦略がうまく運用され、複数のエネルギー源から電力を生み出すことができていれば、不測の事態が起きた際も、電力を需要に応じて安定的に供給することができるでしょう。
未だ実用化に至っていない新エネルギー
新エネルギーは世界共通の概念ではなく、 日本独自のものであり、数ある再生可能エネルギーの中から、より条件を絞り込み選ばれたエネルギーです。環境保全の目的から、日本政府は新エネルギーを設定し、積極的に導入するよう促しています。簡単にいうと、再生可能エネルギーの中で規模が大きな水力発電、および海洋エネルギーを除外したものが新エネルギーであり、新エネルギー法では以下10種類が設定されています。
- 太陽光発電
- バイオマス発電
- 太陽熱利用
- 地熱発電
- 温度差熱利用
- バイオマス燃料製造
- 雪氷熱利用
- 中小規模水力発電
- 風力発電
- バイオマス熱利用
太陽光発電やバイオマス発電など、既に実用化されているエネルギーがほとんどだと思う方もいるかと思いますが、実はその一方で、地熱発電や風力発電は日本国土が十分に活用できておらず、 大きい伸びしろのあるエネルギーなのです。新エネルギーは地球温暖化対策として効果的な 環境負荷の少ないエネルギーであることや、化石燃料を使わないため発電の際にCO2排出量が少ないメリットがあります。また、太陽光や地熱、風力など 常に自然界に存在するエネルギーのため、化石燃料を使う発電方法と比較し、 資源が枯渇してしまうリスクが低いメリットもあります。
しかし、自然の力を使った発電方法であるため風力発電のような風の力を利用する場合は、安定して強い風が吹く場所に風車を設置する必要があり、場所は限定されてしまいます。この場合、設置可能な地点が限定されてしまうことがデメリットとなります。加えて、自然由来のエネルギーを大量に集めるには、これまでの枯渇性エネルギーを使う発電所と比べて、大きな面積が必要になります。
エネルギー問題を解決するには
エネルギー問題を解決するためには、政府や企業、個人が自分にできることを理解し、積極的に取り組んでいく必要があります。それぞれに課されている課題を見ていきましょう。
政府
太陽光やバイオマス、地熱、風力などの再生可能エネルギーは、発電の際に温室効果ガスが発生せず国内で生産可能なため、 エネルギー安全保障の観点でも重要になる国産のエネルギー源となっています。国は、2030年までに 電源構成比率における22〜24%というエネルギーミックス水準を実現する目標を掲げています。今後も、国会で2018年の6月に成立された 「改正省エネ法」および支援策を実施し、省エネを徹底的に進める方針となっており、その他にもそれぞれの分野における技術革新による省エネを推進し、 脱炭素社会実現のため蓄電池や水素といった技術開発も推進していく方針です。
[エネルギー安全保障って?]
- 国民の生活や社会の経済活動のために、地球環境へ与える影響を考慮しながら必要十分なエネルギー確保を行い供給すること。昨今のロシア、ウクライナ侵攻によるロシア産化石燃料に対する経済制裁などから一般家庭の電気料金が高騰したこともエネルギー安全保障に関わる問題の一つです。
企業
企業が省エネに取り組む方法は、 自社の活動のみで行えるものと、 設備導入といった投資が必要な2種類です。自社のみで行える取り組みには、こまめな消灯や照明削減、リサイクル促進、空調の見直しなどがあります。設備導入では、社用車としての電気自動車導入や再生可能エネルギーを使った事業所運営、LEDの導入などがあります。
さらに、 ISO14001を取得するのも効果的であり、軸に環境保護を設定している経営方針における規格のため、取得することで 環境に配慮して経営している組織だと社会的に認めてもらうことが可能です。ある程度取り組みが進んでいれば、 省エネ診断が受けられるため、上手く活用すれば専門家に診断してもらい、事業所におけるエネルギー利用の問題点や現状について把握し、省エネをより効率的に進められます。
ここでは、企業のエネルギー問題への具体的な取り組み事例を2つ紹介します。
[Google]
- Googleでは、データサーバーなどのインフラを提供しクラウド化させることにより、世界中の通信で発生する環境負荷を低減させました。 一度に多数の商品をサポートするクラウドで、消費者に効率的に製品を提供できるようになり、通信で発生するエネルギーを削減した事例です。
[Amazon]
- Amazonでは、2025年までに全事業で再生可能エネルギー使用率100%を目標にしています。 また、配送に使用する車両を利用した電気自動車開発にも取り組んでおり、物流業界において影響力が大きいAmazonによる省エネ活動は、企業が環境保全に取り組む上で非常に強い刺激でしょう。
個人
個人で取り組めるもので、すぐに簡単に取り組めるのが 「節電」です。節電というと幅広いですが、まずは自分で取り組める範囲での節電で問題ありません。具体的には、こまめに主電源を切る、使用していない家電の電源を抜く、必要ない電気を消す、LEDを利用するなどがあります。
家電製品の中には、待機電力などが少ないことを売りにした家電製品や、より効率的に動作してくれる機能が備わった製品などがあります。しかし、どの時点で一番電力を使い、どう動かせばエコか、などは使用している家電の形式や種類により変わるため、すべての家電を調べ対応するのは困難です。継続して節電に取り組むためにも、細かくなりすぎず 無理なく取り組むことが大切です。また、自治体によってはエコ基準をクリアすることで補助金を支給するなど、より機能性の高い製品の購入を促進している自治体もあります。洗濯機やエアコンなど、比較的高価な家電の買い替えを検討する際は、自身の住む自治体で補助金などが申請できないかチェックしてみましょう。
日常の移動手段の工夫も、環境問題への大きな意味があります。自動車で普段は移動している道のりを、公共交通機関での移動に変えたり、自動車自体を環境に配慮した自動車に買い換えたりすることも検討してみてください。自治体によってはアイドリングストップを条例で定めていることも多くあります。しかし、条例が無くてもアイドリングしないよう意識することが大切です。
また、太陽光発電を導入することも個人で取り組める事例の一つです。携帯型ソーラーパネルを日常的に使ったり、家を新築で建築する際に設置したりすることで太陽光発電を導入することができます。電気を使用する身近な製品の中には、ソーラーパネルを使った充電が不可なものも多くあるため、ソーラーパネルのある防犯用ライトや庭用ライトなど、簡単に導入できるものから使ってみるのがおすすめです。自身の環境に太陽光発電の導入が難しければ、太陽光発電などの再生可能エネルギーに関連する事業などに 投資したり、寄付したりするのも良いでしょう。 間接的に環境に配慮した事業の活動を支援することも、個人ができる大きな取り組みです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?私たちが毎日使っている電気、ガス、ガゾリン、プラスチックなど、多くのものが化石燃料から受けている恩恵であり、それらが、将来的に枯渇してしまうことが想像できたでしょうか?これからの未来でも豊かな生活を送り続けていくことができるよう、現代では化石燃料に頼りすぎないことが求められています。そのためにはまず、私たちが地球に起きている問題を十分に理解し、小さなことからはじめることが必要です。一人ひとりが意識することによって、それは企業の環境に配慮した事業活動につながり、さらには国の動きにも関わってくることでしょう。エネルギー自給率が低いとされる日本でも、これから発展が見込まれる新エネルギーの活躍によって、現在よりも豊かな生活が送れる未来が待っているかもしれません。
【参考】
エネルギー進捗報告書:持続可能なエネルギーの普及のためには格差解消が不可欠 (worldbank.org)
日本や世界が抱えるエネルギー問題とは? 国内企業が知っておきたい課題や現状 | THE OWNER (the-owner.jp)
NECが「自己託送」で挑む脱炭素社会への道 ~発電した再エネを有効利用する仕組みとは~
【2023年度版】日本の再生可能エネルギーの割合と今後の見通し (earthene.com)
再生可能エネルギーとは?再生可能エネルギーの種類やメリットを解説 | GX・脱炭素といえばエナリス (eneres.jp)
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