環境問題という言葉は、すでに私たちの日常に深く浸透しています。しかし、環境問題を身近に感じて、現状をしっかりと理解している人はもしかしたら少ないかもしれません。あなたの正しい選択のためのヒントとなる、日本の環境問題の課題や歴史、環境問題解決のための日本と世界の革新的な取り組みを紹介します。
地球の環境問題はなぜ起こっているのか?
美しい青空、透き通った海、緑豊かな森…
地球の生命力に満ちた自然は、私たちに心の安らぎを与えるだけでなく、私たちが生きていく上で欠かせないものです。
しかし、近年、地球はかつてないほどの環境の危機に直面しています。なぜ、このような状況が起こってしまったのでしょうか? 環境問題の根源は、私たち人間の「利己的な考え方」と「行動」にあると言われています。その理由や過程を見ていきましょう。
環境問題とは何か
環境問題とは、私たちの生活や経済活動が地球環境に与える、主に悪影響のことを指します。例えば地球温暖化、大気汚染、水質汚染、土壌汚染などの問題や、森林伐採、生物多様性の喪失などが挙げられます。
これらの問題は、私たちの活動が原因にもかかわらず、私たちの健康や生活、そして未来の世代にも深刻な影響を与えています。限りある資源を浪費し、環境負荷を顧みずに経済成長を追求してきた結果、私たちは地球環境を破壊し、自らの生存基盤を脅かしているのです。
出典:環境省『令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向』(2023年6月)
上の図は環境省が発表した地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)と現状です。ほとんどの項目が、地球の限界を超過していることがわかります。
しかし、公害が深刻化して以降、特に近年では急速に環境問題への意識が高まり、世界中で解決に向けたさまざまな取り組みが推進されています。
環境問題はいつから始まったのか
環境問題は、決して突然現れたものではありません。人間の産業の発展の中で、長い時間をかけて徐々に進行してきたのです。
環境問題の根源と言われる産業革命から、順を追って確認していきましょう。
産業革命:便利さの代償
18世紀後半に起こった産業革命は、人類に劇的な変化をもたらしました。大量生産、効率化、そして経済発展。しかし、その便利さの代償として、大量の化石燃料が燃焼され、大気中に排出される温室効果ガスの量が急増しました。
産業の機械化は経済発展と社会変革をもたらした一方で、 経済格差の拡大、労働環境の悪化、都市化による環境問題など、化石燃料の利用増加の他にもさまざまな問題を引き起こしました。現代社会が抱える多くの課題は、産業革命に端を発していると言われています。
経済発展と企業活動:豊かさの裏側
高度経済成長期(1955年〜1973年)は、日本の経済が飛躍的に発展した時期です。この経済発展は、社会に大きな変化をもたらし、同時に環境問題の深刻化という負の影響も生み出しました。
高度経済成長期の工業化、自動車の普及、エネルギー消費量の増加によって、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などの公害問題が深刻化しました。さらにこの時期は、都市開発や工場建設、道路建設などによって、自然破壊が進んだ時期でもあります。例えばこの時期には、全国の干潟が「役に立たない土地」として埋め立てられたり、水路や河川の周りがコンクリートで覆われたりなど、自然の地形の役割や生物多様性の大切さへの知識に欠けた開発が日本全国で進められています。
しかし、公害問題の深刻化を受け、環境問題が社会問題として大きく取り上げられるようになりました。それにともない、1971年には環境庁が設置され、法整備や技術革新が進み、公害問題は改善に向かいました。
地球温暖化と海洋汚染:地球規模の危機
現代社会では、公害問題とは少し異なる新たな環境問題が深刻化しています。環境問題は、地球規模で起こる問題であり、一国や一地域だけでは解決が難しいと一般的に考えられています。
公害と現代の環境問題は、どちらも人間の活動によって引き起こされた環境問題であり、私たちの生活や健康に深刻な影響を与えるという共通点があります。しかし、高度経済成長期の公害問題は、特定の地域や産業による汚染が直接的な健康被害をもたらすという点で、その影響は比較的局所的でした。それに対し現代の環境問題は、地球温暖化や生物多様性の喪失といった、地球規模での影響を及ぼす問題が中心です。
環境問題に対する取り組みの変遷
出典:環境省『平成28年版 環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書』 第一章 地球温暖化に係る新たな国際的枠組みp11(2005年)
環境問題への取り組みは、時代と共にその形を変え、発展してきました。歴史を振り返ることで、私たちはこれまでの努力を理解し、未来への行動のヒントを見出すことができます。
ここでは、環境問題に対する国際的な取り組みの変遷を、重要な会議や協定を中心に紹介します。これらの取り組みが、これからの地球環境を守るための行動にどのように影響を与えてきたのか、一緒に考えていきましょう。
国連人間環境会議(ストックホルム会議)|1972年
1972年にスウェーデンで開催されたストックホルム会議は、環境問題を国際的な議題として取り上げた最初の会議です。この会議を通じて、環境保護の重要性が世界中に認識され、多くの国で環境政策が策定されるきっかけとなりました。
また、この会議を機に、国連環境計画(UNEP)(※1)が設立され、以降の国際的な環境保護活動の中心的役割を果たしています。
(※1)国連環境計画(UNEP)
環境問題に関する国際的な協力を促進し、持続可能な開発を推進することを目的とした、国際連合の機関の1つ。環境保護や気候変動、生物多様性の維持など、さまざまな環境問題に取り組んでいます。
国連環境開発会議(地球サミット)|1992年
1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットは、持続可能な開発を目指す重要な会議でした。ここで採択された「アジェンダ21」(※2)は、環境と開発の調和を目指す行動計画として、今日でも多くの国や地域で参照されています。また、生物多様性条約や気候変動枠組条約など、重要な環境関連の国際条約がこの会議を通じて生まれました。
(※2)アジェンダ21
持続可能な開発のための包括的な行動計画として知られており、環境、経済、社会の3つの側面をバランスよく考慮した開発を目指しています。地球環境の保護と経済成長の両立を目指し、持続可能な開発のための具体的な施策や原則を提供しています。
京都議定書の採択|1997年
1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットは、持続可能な開発を目指す重要な会議でした。ここで採択された「アジェンダ21」(※2)は、環境と開発の調和を目指す行動計画として、今日でも多くの国や地域で参照されています。また、生物多様性条約や気候変動枠組条約など、重要な環境関連の国際条約がこの会議を通じて生まれました。
(※3)COP
Conference of the Partiesの略称で、気候変動枠組条約締約国会議のこと。COPは、1995年から毎年開催されており、世界各国が温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みについて議論しています。
【わが国の温室効果ガス排出量と京都議定書の達成状況(2012年まで)】
出典:国立環境研究所『京都議定書第一約束期間終了〜基準年比6%削減の目標は達成の見込み〜』(2014年1月)
MDGs(ミレニアム開発目標)|2000年
2000年9月にアメリカ合衆国ニューヨークで開催された国連ミレニアムサミットで、SDGsの前身となる、MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)が採択されました。このサミットでは、世界各国の首脳が集まり、これからの新しい千年に向けての国際的な開発目標を定め、それらを「ミレニアム宣言」として発表しました。
【MDGs8つの目標】
- 目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
- 目標2:初等教育の完全普及の達成
- 目標3:ジェンダーの平等推進と女性の地位向上
- 目標4:乳幼児死亡率の削減
- 目標5:妊産婦の健康の改善滅 目標
- 目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他疾病の蔓延の防止
- 目標7:環境の持続可能性確保
- 目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
出典:外務省『ミレニアム開発目標(MDGs)』(2019年7月)
SDGs(持続可能な開発目標)|2015年
2015年に国連総会で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年までに達成を目指す17の目標を含んでいます。貧困の撲滅、品質の高い教育の提供、気候変動への対策など、環境だけでなく社会全体の持続可能性に関する幅広い目標が設定されています。
現在では、企業や地方自治体、個人に至るまで、多くの団体や人々がSDGsの達成に向けて取り組んでいます。
出典:国際連合広報センター SDGsポスター(17のアイコン 日本語版)
パリ協定の発効|2020年
パリ協定は、地球温暖化対策の新たな国際的枠組みとして、2015年のCOP21で採択され、2020年に正式に発効しました。この協定の目標は、地球の平均気温上昇を産業革命前比で2度未満に抑え、できれば1.5度未満にすることです。
パリ協定は、すべての国が地球温暖化対策に取り組むことを義務付けており、各国が自主的に設定した目標(NDCs)(※4)に基づいて行動することを求めています。
(※4)NDCs:各国の自主的な目標
NDCsは、Nationally Determined Contributionsの略語で、パリ協定に基づき、各国の自主的に設定した温室効果ガス排出削減目標のこと。5年ごとに更新されます。
日本で起きている環境問題の種類
日本は四季の変化が豊かで、美しい自然に恵まれています。しかし、同時に多くの複雑で深刻な環境問題に直面しています。日本では高度経済成長期の影響、山間部が多い地形、高齢化社会による社会機能の低下など、環境問題への取り組みにも様々な影響を与えています。
ここでは、日本独自の環境問題の現状と、それぞれの問題に対する取り組みについて、最新のデータを交えながらご紹介します。
地球温暖化・気候変動
気候変動は、自然と人為の両方の要因によって引き起こされます。
近年は、大量の石油や石炭などの化石燃料の消費により、大気中の二酸化炭素濃度が増加しています。それにより地球温暖化に対する懸念が強まり、人為的な要因による気候変動に対する関心が強まっています。
気象庁によると、2023年の日本の平均気温は、基準値(1991~2020年の30年平均値)から+1.29℃と、1898年の統計開始以降、2020年を上回り最も高い値となりました。さらに長期的に見ると、日本の年平均気温は100年あたり1.35℃の割合で上昇しています。 この結果として、夏の猛暑や豪雨の頻度が増加し、農作物への影響や水資源の問題が深刻になっています。
【日本の年平均気温の推移】
出典:気象庁『日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2023年)』(2024年2月更新)
海洋汚染
美しい海に囲まれた日本では、海洋汚染が深刻な問題となっており、特に、プラスチックごみによる汚染が顕著です。生態系を含めた海洋環境への影響や、船舶航行への障害、観光・漁業への影響、沿岸域居住環境への影響など様々な影響が懸念されています。
【日本の漂着ごみ調査結果(種類別割合)】
出典:環境省『海洋ごみをめぐる最近の動向』p4(2018年9月)
水質汚濁
工業化の進展とともに、日本の河川や湖沼の水質汚濁が問題となっています。国土交通省は、水質保全のための基準を設け、工場や事業所からの排水管理を徹底しています。さらに、生活排水の浄化システムの普及や、自然浄化能力を活かした湿地の保全にも注力しています。
しかし、下水道普及率は向上しているものの、生活排水による水質汚濁は依然として大きな課題です。
また、湖沼や内湾・内海などの閉鎖性水域では、富栄養化や赤潮(※5)などの問題が発生しています。
(※5)赤潮
農業排水や生活排水などが原因で海中の栄養塩が増加することによって、海中のプランクトンが異常繁殖し、海面が赤く染まる現象。
大気汚染
日本では、自動車や工場からの排出物による大気汚染が問題となっています。環境省は大気汚染物質の排出基準を設け、厳しい規制を行っています。また、公共交通機関の利用促進や、電気自動車などのクリーンエネルギー車への移行を支援しています。
その他、大気汚染の原因は中国大陸から飛来する黄砂や火山活動による噴火が、PM2.5(※6)の原因となっています。
(※6)PM2.5
直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質の総称。髪の毛の太さの約30分の1の大きさで、目に見えません。しかし、呼吸器疾患、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんやその他の癌を引き起こす可能性があり、心疾患や脳卒中などのリスクも高めるとも言われています。
【日中韓の PM2.5 濃度の年平均値の推移】
出典:環境省『令和3年度大気汚染物質(有害大気汚染物質等を除く)に係る常時監視測定結果』p8
森林管理者の減少
日本の豊かな森林は、生物多様性の宝庫であり、気候変動に対抗する上で重要な役割を果たしています。しかし、森林管理者の高齢化と後継者不足が問題となっています。
2020年のデータによると、1980年には約14万6千人だった林業従事者は約4万4千人に減少しています。この長期的な減少傾向は、森林管理の質の低下や森林管理の技術と知識の伝承に影響が出たり、土砂災害や洪水のリスクを高めるなどの影響があります。
また、侵入種の増加や特定の種の過剰な増加による生物多様性が脅かされるリスク、木材を輸入に依存することになり、国内林業の持続可能性に影響が出るなどの問題も発生しています。
【林業従事者数の推移】
出典:林野庁『林業労働力の動向』
日本の環境問題対策と課題
美しい四季、風光明媚な自然、そして先進技術の融合。 これらは私たちが誇る日本の特徴であり、同時に私たちが守らなければならない貴重な資産でもあります。環境問題は、私たちの未来を形作る重要なテーマです。日本で推進されている環境問題解決に向けた取り組みをいくつか紹介します。
【GX】化石燃料からの脱却
日本は、通称「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」で、化石燃料をできるだけ使用せず、太陽光や風力などのクリーンなエネルギーを活用する経済や社会システムへの大幅な変革を目指しています。特にGX戦略の中では、水素とアンモニアが脱炭素社会実現に欠かせない新たなエネルギー源として重視されています。
これらの燃料は燃焼時にCO2を排出しないため、発電用燃料、鉄鋼業界の脱炭素対策、自動車・列車などの燃料など、様々な分野への利用拡大が期待されています。
出典:資源エネルギー庁『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)』 第1節 エネルギー需給の概要 3.エネルギー供給の動向(2023年6月)
カーボンプライシング
カーボンプライシングとは、炭素排出(主にCO2排出)に対してコストを設定し、その排出を減らすことを促す政策のことです。カーボンプライシングには主に次の3つの手法があります。
1つ目は、排出量取引制度です。企業が排出するCO2の量に上限を設け、その上限内で排出権を取引できる制度です。これにより、CO2を少なく排出する企業は余った排出権を売ることができ、逆に多く排出する企業は排出権を買う必要があります。
排出量取引制度は、2026年度から本格稼働する予定です。
2つ目は、炭素税です。炭素を排出する活動に対して税金を課すことで、CO2排出を減らすインセンティブを提供します。炭素税は2028年度から導入予定です。
3つ目は、J-クレジット制度です。省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの削減・吸収量を「クレジット」として認証し、取引できるようにする制度で、経済産業省・環境省・農林水産省が運営し、2013年度より取引が開始されています。
二酸化炭素削減量や吸収量をクレジットとして売ることや、これらのクレジットを購入することで、自社の二酸化炭素排出量をカーボンオフセット(相殺)(※7)することができます。
(※7)カーボンオフセット
自分や自社の活動によって排出されるCO2量を削減することが難しい場合、他の場所でのCO2削減や吸収活動を支援することによって、自身のCO2排出量を事実上「相殺」する行為。
例えば、飛行機での移動や工場の運営などによって避けられないCO2排出がある場合、Jクレジット制度などを通じて、再生可能エネルギーの導入や森林保全プロジェクトを支援することで、その排出量と同等のCO2削減・吸収を実現し、環境への負荷を相殺します。
\再エネ由来電力でオフセット/
\植林でCO2削減に寄与できるサービス/
海洋保全・水環境の改善
日本の周囲を取り巻く美しい海は、多くの生物の生息地となっていますが、プラスチック汚染や赤潮など、海洋環境は多くの脅威にさらされています。政府は、プラスチックごみの削減を目指す「プラスチック資源循環戦略」を策定し、海洋保全活動に力を入れています。
水環境の改善に向けて、河川や湖沼の水質管理にも注力していますが、地方自治体や民間企業との連携強化が今後の課題となっています。また、地域コミュニティーと連携し、ビーチクリーン活動など、市民参加型の取り組みも広がっています。
\市民が参加できる海洋保全活動/
大気汚染
日本の大気汚染状況は改善傾向にあるものの、依然として課題が残されています。大都市部や工業地帯では、交通量や工場稼働の影響で、大気の状態が比較的悪くなることがあります。
政府は、排出基準の強化、公共交通の利用促進、省エネルギー対策など、大気質の改善に向けた取り組みを進めています。世界的にも、大気汚染対策は重要な課題であり、日本は国際社会との連携を深めながら、技術開発や情報共有を進めています。
\CO2を出さずに移動するには?/
森林保全
日本の森林は、生物多様性の守り手であり、地球温暖化の緩和にも貢献しています。しかし、森林管理者の高齢化や後継者不足は深刻な問題です。
農林水産省(林野庁)は、森林管理技術の継承や、森林業への新たな人材の参入を促進するための支援策を実施
しています。また、地域住民が参加する森林保全活動も増えており、森林と人との新たな関係づくりが進んでいます。
\森林を守るための税金って?/
環境問題解決のユニークな取り組み
環境問題に立ち向かうため、世界中でさまざまなユニークな取り組みが展開されています。日本と世界の事例を通じて、環境問題に対するさまざまなアプローチや解決策を探っていきましょう。
日本の事例
日本では、環境保全と経済活動のバランスを取ることが、長年の課題とされてきました。最近では、企業や研究機関、さらには個人レベルで、環境に配慮した革新的なプロジェクトが次々と生まれています。これらの取り組みは、日本独自の技術や文化を活かしたものが多く、世界からも注目されているものも少なくありません。
ゴミ拾い促進SNS「Pirika」(株式会社ピリカ/一般社団法人ピリカ)
「Pirika(ピリカ)」は、ごみ拾いを通じて地球環境の改善を目指すSNSプラットフォームです。2011年に開発され、世界100カ国以上で利用されている、世界最大級のごみ拾いコミュニティです。利用者は、ピリカを通じてごみ拾いの活動を記録し、共有することができます。
これにより、地域社会や世界中の人々と繋がりながら、環境問題への意識を高め、実際の行動に移すことが促されます。ピリカでは個人向けサービス以外にも、企業・団体向け、自治体向け、NPO・団体向け、研究者向けなど様々なサービスを展開しています。
ごみ拾いSNS「ピリカ」:詳しくはこちら
顔の見える電力「みんな電力」(株式会社UPDATER)
「みんな電力」は、消費者が発電所を選び、自分の電気がどこから来ているのかを知ることができるサービスです。「みんな電力」では、発電所を指定した電力購入を可能にするブロックチェーン技術を活用することで、消費者は電力供給の透明性を把握できます。消費者は、自分が利用する電力がどのように発電されたのかを知ることができ、発電事業者は、消費者のニーズをより深く理解することができます。また、地域に根差した発電事業者を支援することで、地産地消の推進に貢献しています。経済活性化に何が必要かを、より具体的に考えることができます。
顔の見える電力「みんな電力」:詳しくはこちら
循環型農業・循環型林業(農林水産省)
循環型農業とは、化学肥料や農薬に頼らず、自然の力を活かした農法です。有機肥料・緑肥の利用や輪作、カバークロップなどに少しずつ移行することで、持続可能な農業を目指します。
化学肥料の使用は、その製造過程で大量の二酸化炭素を排出するほか、土壌の劣化や水質汚染などの問題をひきおこします。
また、日本では林業でも林業従事者の高齢化や減少、森林の荒廃などの深刻な問題に直面しています。これらの課題を解決するために、林業分野でも循環型林業が推進されています。循環型林業とは、伐採、植栽、育成、収穫を計画的に行い、森林資源を持続的に利用していく林業で、木材生産だけでなく、森林の多面的機能を維持・発揮していくことを目指します。
世界の事例
世界でも環境問題解決に向けて、さまざまな取り組みが進められています。中でもユニークなものや注目されている取り組みをいくつか紹介します。
食べられるパッケージ「Ooho」(Notpla社)
イギリスのスタートアップ企業Notpla(ノットプラ)は、海藻を原料とした食べられるパッケージを開発しました。この革新的なパッケージは、使い捨てプラスチックの代替として注目されており、スポーツイベントやフェスティバルでの使用が進んでいます。
また、ノットプラは、この海藻を使ったテクノロジーで、紙の容器をコーティングすることにより、プラスチック不使用の環境にやさしい食品容器も開発しています。このように、プラスチックを海藻由来の素材に置き換えることにより、環境中に長期間残留し、生態系に悪影響を与えるプラスチック汚染の抑制やプラスチックごみによる海洋汚染の抑制に大きな効果が期待できます。
食べられるパッケージ「Ooho」:詳しくはこちら
キャッサバでできた生分解されるレジ袋(Avani社)
インドネシアのAvani(アヴァニ)は、石油由来のプラスチックを使用せず、キャッサバ由来のデンプンを原料とした生分解性レジ袋を開発しました。このキャッサバ由来のレジ袋は、生分解性で堆肥化が可能です。
レジ袋は、海洋プラスチックごみ問題における主要な汚染源の一つであり、世界的な環境問題となっています。レジ袋は軽量で風に飛ばされやすく、回収が難しいため、海洋環境に長期間留まり、生態系に悪影響を与えます。日本でも環境への意識の高まりからマイバッグを持ち歩く人が増えましたが、場合によってはマイバッグでの対応が難しいこともあるなど、完全に世界からレジ袋をなくすことは困難です。このようなプラスチックに代わる生分解性素材の開発は、持続可能な消費と生産の実現に向けた大きな力となります。
キャッサバ製レジ袋:詳しくはこちら
アグロフォレストリー
アグロフォレストリーとは、「農業(Agriculture)」と「林業(Forestry)」を組み合わせた造語で、農地や牧草地に樹木を混植する農林業の一種です。日本語では「農林複合経営」「混農林業」「森林農業」とも呼ばれます。
アグロフォレストリーは、経済、環境、社会の3つの側面において、持続可能な社会の実現に貢献する可能性を秘めた農林業の形態です。この農法では、多様な農作物や木材を栽培し、単一栽培に比べて不作などのリスクを分散することによって、収益の安定化が期待できます。また、収穫時期が異なる作物を組み合わせることで、年間を通して収入を得ることができ、農家の生活水準向上や、農業への投資意欲向上につながり、貧困問題の解決に貢献します。経済的に安定した農家は、森林を違法伐採して収入を得る必要がなくなり、結果的に森林破壊を防ぐことができるのです。
ほかにも、生物多様性の回復、二酸化炭素の吸収といったメリットや、雇用の創出、地域の生活・教育水準の向上なども期待できます。
アグロフォレストリーを現地の農家に広げる取り組みは、主に不法伐採が問題となっているアフリカ、南米、東南アジアなど熱帯雨林が広がる地域で行われ、持続可能な農法で自然と人が共存し、人も森も守る手段として注目されています。
まとめ
近年、異常気象や自然災害の増加、生物多様性の減少など、地球環境は目に見えて悪化しています。とくに地球温暖化の影響は、熱波や干ばつ、洪水などの異常気象を引き起こし、私たちの生活や経済に深刻な影響を与えています。
このような環境問題に真摯に向き合うことは、ただ単に自然を守るためだけではありません。私たち自身の健康、幸福、そして未来の世代への責任にもつながる行動なのです。
カーボンニュートラル、循環経済、自然再興といったさまざまな目標に向かって、経済、社会、政治、技術のすべての面で変革が、私たちの目指す将来の持続可能な社会と、将来も住み続けられる豊かな地球を実現するためには不可欠です。まず、私たち一人ひとりが、環境問題解決に向けて何が正しい行動かを考え、判断するための新しい情報と知識を持つことを心がけてください。
あなたも日々の暮らしの中の選択において、環境に優しい製品を選んだり、エネルギーの使用を意識したりすることで地球環境の保護に貢献できます。そして、こうした小さな行動が集まることで大きな変化を生み出すことができるのです。
環境問題は私たちが地球に生まれ、地球で暮らしている以上、誰一人として無関係ではありません。あなたも無理なくできることから、行動を起こしましょう!
参考・引用文献
【地球の環境問題はなぜ起こっているのか?】
環境省『令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向』(2023年6月)
環境省『地球環境の現状と課題』
総務省『「公害」とは?』
総務省『環境省五十年史(令和3年12月、補遺版 令和5年7月)』(2023年7月)
【環境問題に対する取り組みの変遷】
環境省『国連人間環境会議(ストックホルム会議:1972年) 人間環境宣言』
環境省『平成3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第2章 第2節 1 1972年国連人間環境会議』
環境省『国連環境開発会議(地球サミット:1992年、リオ・デ・ジャネイロ) 環境と開発に関するリオ宣言』
国立環境研究所『京都議定書第一約束期間終了〜基準年比6%削減の目標は達成の見込み〜』(2014年1月)
外務省『COP3』
京都府『「京都議定書」とは』
環境省『気候変動枠組条約 COP3 と京都議定書の採択(1997年)』
国際連合広報センター『ミレニアム開発目標(MDGs)の目標とターゲット』
環境省『持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDGs』
外務省『JAPAN SDGs Action Platform』
環境省『平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1章 地球温暖化に係る新たな国際的枠組み』(2017年6月)
環境省『パリ協定の概要』
【日本で起きている環境問題の種類】
国際連合広報センター『気候変動の原因』
海上保安庁『令和5年の海洋汚染の現状(確定値) 』(2024年2月)
環境省『水質汚濁対策』
環境展望台『VENUS 環境の状況 PM2.5』
アジア大気汚染研究センター『大気汚染』
林野庁『林業労働力の動向』
【日本の環境問題対策と課題】
METI Journal『「GX」 カーボンニュートラルに向けた新たな巨大市場』(2023年4月)
経済産業省『水素基本戦略』(2023年6月)
資源エネルギー庁『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)第2節 GXの実現に向けた日本の対応』
環境省『J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて』
国土交通省『国土交通白書 2020 第八章 第4節 健全な水循環の維持又は回復』
環境省『「水環境保全に関する取組」に係る報告 健全な水循環構築のための取組』
【環境問題解決のユニークな取り組み】
株式会社ピリカごみ拾い促進プラットフォーム「Pirika」
株式会社UPDATER「みんな電力」
農林水産省『環境保全型農業の推進について』(2016年4月)
METI Journal「経済」×「環境」の好循環
Notpla「Ooho the edible bubble made from seaweed」
日本経済新聞『[FT]脱石油プラスチックへ 投資家、海藻に注目』(2024年2月)
Avani「Are you ready to take your brand to the next level?」
農林水産業研究センター『パラグアイにおけるクリーン開発メカニズムの仕組みを活用した農村開発手法の開発 アグロフォレストリーマニュアル』(2010年)
FRUTA FRUTA『アグロフォレストリー』